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Multiplanetary Spiecies 複数の惑星に生きる未来を現実的に考える意味 火星へ行くことは”富豪の無知で傲慢な野望”ではない理由

個人的に大好きな番組に、落合陽一さんのNews Picksでのコーナー
ウィークリー落合がある。

あの番組の中で、毎回素晴らしいゲストたちが登場するのだが
その中のご高齢のおじさまがこんな風に語っていた。
「火星だかなんだか知らないけど、その前に地球もちゃんとできないで火星に逃げようなんて、無責任で無謀な話だ」と。
その当時はわたしは、イーロン氏についてまったく自身で調べたことがなかったので「全くその通り、人間はどんどん傲慢になっている」と思っていた。

その当時は欧米の起業家は、何かとてつもなくクールなことをして巨大な企業を創り成果を上げ続けることに価値を置き、そのためなら、何か問題を意図的に作って、その解決策を売ったり、意図して耐久性を低く商品を作って、消費者がその商品を繰り返し購入するようにしたり、とにかく手段はいとわないというイメージしかなかった。
でも結局デザインはクールだし、買うよね。といったところ。

その手法の道徳的な良し悪しはさておき、どうにかこうにかして、人類は資本主義的に発展して文明を進化させている。
だから「火星に行こうとしてるらしいよ」と聞けば、また欧米は手段をえらばずやりたい放題している、どうせ、地球がめちゃめちゃになるので、選民思想的に、”選ばれた人だけ”が火星に行くのだろうと、被害妄想を人々が抱いてしまうのも無理はないのかもしれない。

だが、イーロン氏の話を、日本語で作られた動画やニュース記事からでなく、本人のインタビュー動画を英語で直接探すと、全く逆の真実が見えてくる。

なぜならイーロン氏やスペースXの人々意図は「宇宙に行きたい人はほとんど全員行けるように宇宙産業の力になりたい」というものだったからだ。
最初は大多数疑われ、笑われながら、発明された飛行機や、最初はとても高額で、一部の人しかもっていなかったパソコンやケータイが、もはや誰でも欲しい人はほとんど全員使える状態になったように
宇宙に行きたい人はほとんど全員が宇宙に行けるような未来を作りたいと、日本ではとても見つからないほどの知性を持ったチームがとてつもなくハードワークをこなしているのだ。

"I don't raise hope unreasonably." これはイーロン氏がインタビューの中で言っている言葉だがまさにその通りで、彼は根拠なく情熱だけで、みんなに夢を!などと言ってスペースXを始めたわけではないのだ。宇宙工学の学位をとったわけではない彼だったが、幼少期からの膨大な読書で身に着けた知識と、学位を取得した物理学の知識と、さまざまな優秀なひとたちのアドバイスや話を聞いて、スペースXを立ち上げた当時の成功の見込みは、それでも10パーセントだったそうだ。
さらにスペースXの立ち上げにはとてつもない資金が必要で、当時PayPalを売却して得た現金の全てを投じて、家賃を払えなくなったので、友人に頼んで借金をしているイーロン氏。
”富豪が調子に乗って、お金の使い道がなくなったので、じゃあ宇宙でも目指してみようと奇抜なことをしている”と、イメージしている日本人が多いかもしれないが(わたしもそういう意見を聞いてそうだと信じ込んでいた)、真実は全く違うものだった。

そして冒頭のおじさまの火星なんて言ってないでまず地球だ!のご指摘に戻ると、もちろんその議論はとっくに10年以上前のインタビューでなされていて、イーロン氏はそれに対し、地球での生活を持続可能なものに切り替えることは急務だとし、だからこそ、彼は同時に、電気自動車のテスラに参画し、ソーラーシティ、ボーリングカンパニーなどを経営していると同時に、「地球のGDPの1%くらいなら宇宙産業に費やしてもある程度理性的だと思う」とし、「地球環境への取り組みがヘルスケア費用とすると、宇宙産業は口紅代」、くらいのイメージだとも例えている。つまりわたしたちのレベルが心配するようなことはすべてすでに考慮されているということだ。

実際にロケットの発射の失敗が続き傾きかけてもう先がないというところでNASAが彼らのクライアントになったことで、スペースXは生きのびた。
それくらいギリギリの中で、とてつもないストレスとハードワークをこなしてきた彼がそれでも大切だと信じることは「人々にとって役立つこと」

まだ私が無知なだけなのだが、起業家で、事業をスケールさせ大きく社会に貢献している人物の中で、本音で、こういうことを熱く語る人を、ソフトバンクの孫氏以外まだ知らない。
会社の理念として ”人々の幸せのために”とか”人々の安全な未来を”という文言は頻繁に目にするが、それは嘘だと言うわけでは決してなく、ただ、それは あくまで ”会社の理念” という暗黙の了解があって、”それは大切だけど、とは言えってのが現実だよね”、というのがこの世界だと認識していた。

たとえば宗教的な人は、「神は地球上に人間を作ったのに、火星に行こうなんて、傲慢で、神への冒涜だ」と言うだろうか。
だが、現実的に、過去に様々な生き物が地球上で絶滅を繰り返してきたように遅かれ早かれ、その一途をたどることになることが予想される。その上、気候変動だけでなく、人為的な世界大戦などのケースも考えれば、地球上でその運命を受け入れるか、他の惑星で文明を築くことで命を繋ぐか。
もちろん人類は様々な失敗も繰り返したけれど、それでも先人たちは本能的にも理性的にも命を繋いできた。その命を、人間は地球にいて絶滅する時は運命を受け入れるべきだと考えるか、方法があるならその命を未来につなぎたいと考えるか。

ヒトは新しいものやことに対して恐怖を感じ、攻撃したくなる習性があるそうなので、自然といえば自然なのだか、
新しいアイディアを、短絡的に「バカだ」と決めつけてしまうのか、詳しく知った上で、「やはり単なるマーケティング的なものだ」と判断するか、「これは人類にとって前向きな効果をもたらしうるものだ」と判断するか。
自分の目と耳と脳で調べて考えることが、ガラパゴス諸島の日本ではかなり必須のことと言わざるを得ないと、このイーロン氏の例をとってみても思う。

(ある男性がYouTubeで、”あの男の頭にあるのはね、もうハッキリ言いますよ!地位と金と名声これですよ!欲しかないんですよ!”と怒っていた。
それを聞いて、なるほどそうかと納得する日本人もきっと多いだろうと思うと、なかなか残念に思う)

個人的に猫や動物がだいすきで、人間より、彼らと一緒にいることの方が好きなので(笑)
彼らも火星に一緒に連れていくことができて、彼らの「種の保存」の可能性が上がると思うと感情的には嬉しいと感じる笑
(実際にイーロン氏も、この例えは短絡的で危険だが、ある意味ノアの箱舟のようなものだ、有事の時には、動物たちをつがいで一緒に連れて行くことができる、と語っている)

そしてあくまで強調したいのは、イーロン氏は、人類は皆火星へ行くべきだ!と視野の狭いことを言っているわけではない。あくまで、オプショナルだとしている。
Multiplanetary Spieciesに、つまり、複数の惑星で生きる種になることを想定している。地球での問題も解決した上で、地球以外での惑星でも暮らせるようにということだ。ちなみに、火星ではどんな文明がつくられるかというディスカッションでは、ビットコインはたぶん使えないだろうとか、全く新しい政治をできるかもしれないといったことが話されている。

そしてイーロン氏は数年前に、所有していた多くの家を売却し、多くの所有物を手放している。ポッドキャストで、正直少し悲しいんだよねと語っているが、じゃどうしてそんなことをしたの?という質問に対して、
所有は人の重荷になるからかな、と答えている。

他のインタビューでは、
ペイパルを売却したのに、その全財産を投じて次の起業へ向かったときについて
トロピカルな島で、コロナビールを飲んで、モデルたちとたわむれることもできたし、その選択をしている人もたくさんいる
あれ、今まで自分は何をしてきたんだ!?週に90時間もハードワーク?!とふざけておどけて見せたが、彼にとって前者はとても退屈で耐えられたものじゃないと、そしてこうも言っている、「人々の役に立てた人生は、いい人生だと思う」と。
レガシーメディア(もういまや古くなってしまった伝統的なメディア)にたびたび噛みついて物議をかもしたりする彼だが、
Tシャツ姿で、今は、500万円のミニマルな家をスペースX近くに借りて、なりふり構わず一生懸命ハードワークを続けているのが、イーロン氏の実態だと知ったら、資本主義に不満を抱いていた人に響くものがあるかもしれない。
彼の一生懸命ぶりに、方向は全く違うが、ムスカ大統領を思い出した。

私も資本主義を悪としか今までは思えなかった。でもAppleや各スマートフォンを開発する会社のハードワークの結果、沢山の人がその彼らのハードワークの結晶を、お金を払うだけで享受できるという事実に気づけば、金銭は彼らに集中するが、同時に世界中のさまざまな人々のハードワークの結晶を毎日たくさん使っている私たちにもそのハードワークの結晶が集中している。その資本を使って、彼らはまた新しい良いサービスや技術を磨いていくという循環が起こっている。
そして、より多くの人が宇宙へ行ける未来が来たら、たとえばイーロン氏は最終的に1000万円くらいで月に行けるくらいにしたいと言っているが、私たちは私たちの人生を楽しんでいるうちに、イーロン氏がロケットの発射時に何度も嘔吐するほど精神的に追い詰められたり、休日を返上して昼夜関係なく猛烈に働いた彼らのそれらの結晶を、1000万円で私たちは享受できるのだとしたら、少なくとも、バカな戯言と、視野を狭めて罵ったままの状況は賢明な行動ではないように思える。

資本主義でありながらみんなで生きている、日本語にあるように、お互いお世話になり合いながら。スペースXのような会社を創業できなくとも、少しでも多くの知識をつけて、人類の役に立てるようにという気持ちになれたのなら。

夢を諦めるなとか、こんなに会社を大きくできたのは社員とお客様のお陰と、小さな視野をもとにした教えや考え方に今までたくさん触れてきたが、人類に利益のあることをと大きな視野を持つことは決して”野望”ではないということが、知性をフル回転させながらもエンジニアとして体を動かして尽力するイーロン氏を見ていると分かって来るかもしれない。









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