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名車解説: ランドローバー・レンジローバー

ここ数年、自動車業界ではあるブームが起こった。例えばランボルギーニ・ウルス、ベントレー・ベンテイガ、マセラティ・レヴァンテ、さらにはロールスロイス・カリナンまで。

これらの共通点はそう、高級SUV。その元祖ともいえるのがこのレンジローバーだ。ただ豪華なだけじゃない、イギリスが生んだホンモノの4駆を今回は紹介しよう。

ランドローバーorレンジローバー?

今回紹介するのはタイトルにもある通り、ランドローバー社が製造するレンジローバーという車だ。

社名とモデル名が似てるからごっちゃになりやすい。しかも専門誌などではレンジローバーを"レンジ"と略すこともあるから気をつけて。

ランドローバー社とは?

日本でのランドローバーのイメージといえばスタイリッシュなSUV専売の高級ブランド、といった感じだろうか?
ところが昔はもっと田舎が似合う車ばかり作っていた。

上はシリーズ3、下はシリーズ1。

ランドローバーはもともとローバー社のオフロード部門として戦後に作られたんだ。
例えばレクサスはトヨタの高級ブランドとして存在してるけど同じトヨタグループにいる。

1940年代〜60年代に作られたのが上の車達。シリーズ1〜3というとてもテキトーな名前。

ただめちゃくちゃに頑丈で悪路走行性が高いので農場等で大活躍。さらには消防車、イギリス軍の車両などとしても採用された。

そして方針転換。今回話すレンジローバー、さらにはディフェンダーというヒットモデルを生み出す。

ところが80年代〜00年代はランドローバーにとって激動の時代だった。86年には親会社がブリティッシュエアロスペースになり、94年にはBMWに変わる。

そして2000年にBMWはフォードに会社を売却。さらに2007年にフォードは、ランドローバーと(当時持っていた)ジャガーをインドのタタモータースに売却。タタモータースの傘下で今のランドローバーがある。

いや親会社変わりすぎ。車作りは上手いのに経営下手すぎじゃないか??

親会社が分かると、時代によって大人の事情でランドローバーなのにBMWのエンジンが載ってたり、ジャガーとプラットフォームを共有させられてることに同情できるようになるよ。

レンジローバーの誕生

さて、60年代までゴリゴリの4駆ばかり作ってたランドローバーは次の一手としてラクシュリー/エステート/パフォーマンス/クロスカントリーの4つを兼ね備えた車を作ろうとする。

そして1970年に発表されたのがこのレンジローバー。さっきの4本の矢(?)に沿って、この車のポイントを解説するよ。

ラクシュリー

まあ70年代の車だからさ、ベンツの64色に光るアンビエントライトとかテスラの17インチのタブレットとかは無理にしても元祖高級SUVなんだからそこそこ豪華だろうな、って思うじゃん?

これが内装。うーん。レザーシートでもないしヘッドレストもないし、しかもオートマ設定が無かったんだ。その上窓も手動。ただシリーズ1〜3に比べればこれでも豪華ではあるんだけどね。

エステート

エステートっていうのはワゴン車、という意味。
シリーズ1〜3はワゴンもあるけど幌を使ったオープンタイプがメインだったんだよね。安く済むから。

ただほぼ雨のイギリスでそれは辛いってことでワゴン専用ボディが開発されたんだ。

パフォーマンス

これはもう凄い。長年4駆しか作ってないランドローバーの本気が見える。

上に置いた平常時の写真と見比べて欲しい。もうね、足(タイヤと車軸)がグニョングニョン。サスペンションが柔らかくて柔軟だと、どんなにガタガタな岩場でも4輪が地面にくっつくから安定するし乗り越えられるんだ。

あとあまり知られてないけど、エンジンもかなり良い。ビュイック(アメリカの高級ブランド)から提供して貰ったV8エンジンを使ったから走りが今までのランドローバーとは雲泥の差だったんだ。

クロスカントリー

クロスカントリーだから悪路走行性だね。上のパフォーマンスで書いた通りだけど、特にイギリスの地方では雨のせいでぬかるんだ地面が多くて。そんな状況でも遺憾無く性能を発揮された。

高級SUVへの道

発表されたレンジローバーは上で書いた通りの高性能だから各地で絶賛されたよ。

ただここまで読んでくれた方はきっと"ラクシュリー"に疑問を持つはず、持ったよね?

この車、どんな人が買っただろう? もちろん今までの農家の人も買ったし、イギリス政府でも重宝されたよ。でも正解はイギリスの富裕層なんだ。

当時のイギリス王室の1人がレンジローバーのリアゲートの上に立っている写真が公開されて、富裕層の間で人気に火がついた。

(ランドローバー社の特徴でもあるこのリアゲートは椅子として使ってピクニックも出来る。優雅だねぇ)

70年代、イギリスの富裕層が休日にすることと言えば狩り。しかも狩りをした後には舞踏会にもその車で乗り付けたい。

そんな需要に対して悪路走行性も高く、王室にも納車されたこの車はまさにうってつけ、というわけ。

この需要を察したランドローバーはどんどん高級路線に振っていくよ。80年代には4ドアモデルを作りオートマにも対応、ヴォーグというグレードにはウッドトリムが使われいい感じのカーペットが敷かれた。
さらにエアサスペンションを使って乗り心地が向上。この頃から"砂漠のロールスロイス"という愛称もついた。

これは80年代後半のレンジローバー ヴォーグの写真。確かに高級SUVと名乗っても良さそうだ。

SUVの金字塔

24年も生産され続けた初代レンジローバーだが、1994年にモデルチェンジ。2001年に3代目を経て2012年には上の写真の4代目にモデルチェンジ。

その間にもトヨタ・ハリヤー、BMW・X5、ポルシェ・カイエン、ベントレー・ベンテイガなど多くのヒットモデルが生まれた。

レンジローバーは自動車として初めてルーブル美術館に展示され、ランドローバー社は自動車メーカーとして唯一、3つのロイヤルワラント(英国御用達を証明する称号)という功績を持つ。

どんなSUVが生まれようとも変わらないもの、それを持ってレンジローバーは今日も走り続ける。

参考文献

・「カーグラフィック 2017年8月号」カーグラフィック株式会社
・「名車の殿堂 ザ・クラシックカーSHOW #4」ヒストリーチャンネル

写真は全て「Land Rover Media」より

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