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名車解説: レクサス・LS (セルシオ)

今回の車はレクサス・LS、日本ではトヨタ・セルシオという名前で売られていた車だ。

パッと見ただのセダンなのになぜ紹介するのか?
それは大袈裟に言うと、この車が日本の技術力・日本車への高評価を作り上げたからだ。

レクサスとトヨタの違いって何?

トヨタもレクサスもトヨタ自動車の中のブランドの1つだよ。だから製造も開発もトヨタで行われるし共有されるパーツも多いけれど、価格帯の違う別のブランドにすることでより多くの顧客にアピールできるよね。

90年代のマツダもブランドを分けてて、マツダ・ロードスターではなくユーノス・ロードスターと言われていたのを知ってる方がいるかも?

今回のレクサス・LSの場合は日本のトヨタ・セルシオが海外に輸出される際にレクサスブランドのLSとして売られていたよ。

LSの何がすごいのか?

LSが開発された際の目標は「アウトバーンを200km/hで難なく巡行できて、メルセデスやBMWよりも圧倒的に快適」というものだ。当時から世界的に日本車の評価は高かったけどそれは安くて壊れないからであって、1000万クラスのメルセデスベンツやBMWとは同じ土俵にすらいなかった。

エンジン

クラウンに搭載された4LのV8エンジンが搭載されたけど、一緒に搭載するオートマトランスミッションに合わせて変速の時にエンジンのパワーを下げる仕組みを追加してシフトショックを軽減させるようにしていたんだ。

シフトショック・・車はギアを変えるために一瞬だけエンジンとトランスミッションを切り離すんだけど、その時に車がガクンと振動することがあるんだ。

インテリア

多くが電動化され様々なギミックが搭載されたことが特にアメリカ市場でウケたよ。
一部を紹介するね。

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自発光式メーターパネル‥今までの車は光らないメーターを電気で照らしていたけど、メーターの目盛り本体が光ることで視認性が上がるんだ。

電動式テレスコピック&チルトステアリング‥エンジンを切ると同時にステアリングが自動で上まで上がることで乗り降りがしやすくなったよ。

静寂性&快適性

上記のエンジンをはじめ徹底して振動の防止に努めた結果、静かすぎるためエンジンをかけたことを忘れてもう一度エンジンをかけようとしたオーナーがいたらしい。(ホントか?と思うけどこれはネットの情報ではなく書籍の情報だ)

また振動のないことをアピールするために、ボンネットのうえにシャンパンタワーを作りシャシーダイナモ(ランニングマシーンの車版)の上を高速で走るというCMが放映され、これは現在でも語り草になるほど有名なので是非Youtubeで見るべき。

ドイツ勢を震撼させる大ヒットモデルへ

LSが発売されたのは1989年、当時の高級セダンの代表でありライバルはメルセデスベンツ・SクラスとBMW・7シリーズ。ベンツはW126世代、バブル期に日本にいっぱい輸入されてたモデルだね。

(↓W126のSクラス)

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さあ1990年、この3台の高級車は何台売れたか? 
こういった車の主要マーケットである北米での結果はこうだっっ!

LS: 約4万3000台
Sクラス: 約2万6000台
7シリーズ: 約1万台

LSの圧勝。さらに1991年にはSクラスがW140型にフルモデルチェンジしたにも関わらず1998年まで販売台数でトップに立ち続けるんだ。

車の出来の良さもあるけど、この手の車としては価格が安かったことも販売を後押ししたほか、特に北米市場はアメリカン・ドリームの気質もあって新参者に寛容だったんだろうね、Sクラスのオーナーが多くLSに流れたはずだ。もちろんヨーロッパ市場でもLSは高く評価されているよ。

そして1998年にはSクラスがW220型にフルモデルチェンジしたことでトップの座は明け渡すことになるものの2000年にはLSがフルモデルチェンジして5年間トップになり、双方はもう1回ずつフルモデルチェンジを行う。しかしここでリーマンショックがやってきたことでどちらも販売台数は激減した後はSクラスの独壇場になっている。

LSの与えたもの

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(↑現行型のLS: セルシオから数えて5代目となる)

W140型Sクラスはサイドウインドウに空気層を挟んだ二重窓、という随分手間のかかることをしているんだけど、当時のメルセデスベンツのエンジニアは「こうでもしないと、LSの静寂性には到底及ばなかった」と言っていたそうだ。

またイギリスの高級ブランドであるジャガーの工場にはLSのパーツが生産品質の目標として使われていたそうだ。

これまでの日本車で、海外の一流ブランド達にここまで影響力を与えた車があっただろうか?

90年代はみんな大好きGT-Rを初め、多くの名車が生まれた時代だ。その夜明けと共に生まれたパッと見平凡なセダンを忘れないであげてほしい。

参考文献

・「カーグラフィック 2017年11月号」カーグラフィック株式会社
・「メルセデス・ベンツSクラスを動揺させた初代レクサスLS(トヨタ・セルシオ)の衝撃的成功と現行LSの不振をデータから検証する」『Motor-Fan.jp』https://motor-fan.jp/article/10011541
 
掲載画像はDaimler global media site及びLexus USA Newsroomより

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