作られた構図

数日前、千葉ロッテマリーンズとオリックスバファローズの試合にて、佐々木投手の四球後に主審の白井氏がタイムをかけ、佐々木投手に何かを話そうとして捕手の松川選手に制止されるという出来事がありました。

自分はそこまで詳しく追ったわけではないのですが、気になる点がいくつかあります。まず事実だけを取り上げますと上記の通りとなるのですが、白井氏は中継映像でも両手を挙げていますので、この時点でタイムとなりボールデッドとなります(宣告自体は片手でもいい)。その際にマウンドに行って何かを話そうとしたら、松川選手が止めに入った、という経緯となります。

一連の出来事に関して、当事者から具体的な振り返りがされた事はこれまで一度もなかったと思います。なので、自分としましては単に野球の一連の流れでしかなく、タイムをかけてボールデッドにして、確認し(ようとし)た、というだけの認識です。いやだって公認野球規則にも権利として存在していますし(8.01のd)、他に何か言ったとかあったにしても、その是非を判断するなら当人の口から出てこないとどこまでも推測の域を出ず、意味がありませんから…

で、この前提で何故か白井氏が悪い、審判が悪いという方向に行ってしまうのですが、両者とも経緯を全く話していない中で、じゃあ何で批判されてんのって話に…いやー、分からない…「審判の顔が侮辱していた」とかでしょうかねぇ…まぁこれも自分の推測に過ぎないんですが。「若い選手に対して…」というなら、100歳のジイサンならいいのかという話になってしまいますし、そういう議論は意味が無いことも分かっています。
自分も端くれながら新聞記事なりweb記事を見るのですが、この批判関連で出てくる報道のほぼ全てが第三者に対する取材や発言によるものです。専門家やOBがこう言った、明らかにこうに違いないなど、本人達の意思はそっちのけで推論で語られ、支持する人も多々いる、といった辺りでしょうか。

自分としては現在の審判叩きの世論形成を見たときに言い様のない気持ち悪さを感じてしまいまして、事実だけ見れば単なる野球のボールデッドの確認以上の域を超えてこないのに多くの人が尾ひれをつけたがるので、何の意図があって構図を作ろうとしているのかな?とすら思ってしまうのです。

メディアとしてはまぁ単純に燃やした方が売れるから、と言うところでしょうけれども、一般の方からすればそういったものでは無く、単に気に入らないから排除して欲しいという認識の表れでしょうか。それを刷り込ませたのが誰か?というのもあるんですけど、過去の引き合いや扇動に囚われすぎて今そこで起きたリアルの検証がすっ飛ぶのは勿体ないように思います。

更に言いますと、審判への接触も退場案件(暴力行為にあたりまして…)なので、松川捕手も判断次第では規則通りに退場させられた可能性があります(これは9.01のd)。勇敢なのはいいのですが、規則を知らずに退場となってしまうのはこれまた勿体ないです。特に主力になった段階では替えが利かない事も多くなり、迂闊に退場になる事が致命傷になる事もありますので、よく理解して抵触しない範疇で自制出来るようになって欲しいと思います。

同時に、もう一つの側面としまして、自分の様にプレーそのもので考えていたりとか、そういった見方をしている人はTwitter上でもちらほらいらっしゃいまして、その方達も規則に沿えばこうなんだよという解説はなさっている(現役審判の方もいます)のですが、そういう方々へのリプライの中におぞましい言葉で批判しているものが少なからず見受けられます。

審判への批判の多くは佐々木投手へ暴言を吐いた(のではないか)(という推測)というものですが、そこの暴言と捉えた物は批判するのに、否定のために己の吐いている暴言を正当化するないしその行動自体に気付かないのは浅はかではないか、と思います。
異論を唱える方々を敵対と見なし何でも言っていいという傍若無人がまかり通ると、それはやがて選手である佐々木氏に対する呪いとなっていきます。「ああいう無礼な人たちが支持している選手」…当然、いいイメージは持たれません。そして選手はファンを否定する事は基本的にはできないのです。変に関わると取り巻きが見つけ出して袋叩きにされるから、気になったところはあるけど面倒になるから黙っていよう…というように、腫れ物として扱われ、現場としてもピッチャー返しとか不幸な接触とかで怪我させたら叩かれるんだろうなあとか内心で遠慮されてしまったりとか…選手自体には何も非が無いにも関わらず、です。これ以上の不幸があるかと。積み重なると日本球界に居場所が無くなってしまう…とまではいかないと信じていますが。

タイムをかけた一連の流れとは言え、審判の白井氏も表情からして外部からそういう風に捉えられたというのはあると思いますので、今回は何もなかったにしても副審判長の言うようにもう少し表情は上手くやってくれ、というのが実際のように思います。

持論として、選手や組織のファンである事を公言するなら自分の立ち振る舞いを意識していないと、それは選手や組織のイメージを損ない、滅ぼすことになってしまう、と考えています。自分もそうです。群馬ダイヤモンドペガサスに対するイメージは損ねてはいけないという所と、身近な所で言えば自分は仕事後にホームセンターに寄ったりしてアイデアを練ったり、図書館や市役所に行ったりもするのですが、この時は仕事場の作業服を着ていますので会社のロゴが見える状態になっています。こういう姿で社会的によろしくない行動を取って他人に迷惑をかけると、所属企業に対するイメージ低下に繋がる…ああいう社員が務めている組織じゃあろくな所じゃ無いんだろうと、そう思われないように(社会人野球のファンなら理解できると思います)、着ている間は結構そういう所を意識している所はあります。いやまぁオフでも似たような物ではあるのですけれどもね…

色々思った事は書いたのですが、本当に今回の案件は自分の感じていることと世間で言われている事のずれが大きく、なんでそうなっているんだろう?という違和感が強かったので、書いてみました。
ただこれも自分のいち意見に過ぎません。例えばこういった話に反射的に噛みついてきた人がいたにしても、自分としては「そういう所があかんと言っているんやぞ」と返すことになると思います。
野球のプレーに関しては、行動したことだけでまずは判断すると、余計な情報を挟まずに済むと思います。カッとなる前に一歩踏みとどまって考える事が出来ます。何故そうなったのかと考察するのは自由ですが、推論の域を出ない物を根拠に人を断罪する事はあってはならないと思いますし、その意見の一つを提示した人を攻撃する事を正当化できる物でも無いと思います。

野球の規則は複雑なものでして、自分も全てを理解している訳ではございません。そういった所は有識者の方々や審判の方に話を伺ってみる事もありますが、知らなかった規則が出てくる事も多々あります。審判の裁定は時には規則通りにいかない事もありますが協議の上で両者にフェアに近い条件でカバーすることもあります(BCリーグではよくあります)。基本的には下された判定を踏まえていかないと野球の試合自体が成り立ちませんし、いちいち抗議していては試合時間も冗長なものになってしまいます。

両者から未だに話が全く出ないと言うことはある程度幕引きはしていると言うことで、これ以上掘り返すようなことは白井審判のみならず選手である佐々木氏の意向にも背くことにもなりかねません。過度になると選手を私的主張のために利用していると捉えられかねないので、ファンの方々としてもよく考えて自分の在り方もよく俯瞰して考えられるきっかけにして欲しいと願っています。

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