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あとがき④ Onjuk(with 言の葉)

これから数回に分けて、アメ研に関するあれこれを書き残しておこうと思います。「形に残すこと」、大事。なるべく忘れないうちに、沢山の事を書き起こして残しておきたい。

「あとがき」シリーズ最後の更新。なぜこんなに遅くなったかというと、卒業制作の完成を待っていたから。そしてついに本日(2022年2月23日)、全11曲に及ぶ(相対的にみて)「大作」ともいうべきアルバム『言の葉 -koto no ha-』の完成をもって、Onjukの活動には確かに一つのピリオドが打たれた。

Onjukの「あとがき」には、makerugakachiのような壮大なエピソードはない。激動のmakerugakachiと比較すると、Onjukはとにかく「ゆるやかに」結成され、活動し、そして終わった。ということで今回はそんな過去の歴史を敢えて脚色して書こうとするのではなく、折角なのでアルバムのライナーノーツという形をとる。そしてその中でOnjukというバンドの足跡を書き記しておくことにする。

-monologue-

(詞/曲:夏目響二朗)

同期のバンドLegeensに[夏について]という曲がある。そしてこの曲、ライブで1曲目として披露する際に「前置き」?「導入」?という形の小品が演奏されることがあって、それがすごく好きだった。そこでこのアルバムにもそういうものがあってもいいんじゃないか?と思い、完成予定日の2日前に別件で通話した際きょうじろうに「1曲目の前フリみたいなものがあるといいなぁと思ってたんだよね~」とそれとなく言ってみると、なんと!彼も同じことを思っていたらしく、既に歌詞も曲もほとんど完成したものが送られてきた。これは運命!ということで、(申し訳ないが)突貫工事で用意してもらった。時計の針が動く音を入れているのもナイスアイデア!これから始まるアルバムのいい導入になっているんじゃないだろうか。

01.Through

(詩:夏目響二朗/渡辺咲帆 曲:夏目響二朗/就一朗)

図らずも(?)自分以外の3人がクレジットされた曲。別に不仲とかではないです。一応アルバムの開幕はこの曲ということだけど、まさしくピッタリだなと思う。

これから僕らは未来へ行くのさ
あなたの手を握って

ミディアムテンポの落ち着いた曲で、歌詞も明るい未来を予感させるポジティブなもの。シンプルだからこそ歌が活躍するし、Onjukというバンドの魅力や輪郭がはっきり反映されていると思う。

この曲ができたのは2021年。makerugakachi同様、いやそれ以上にOnjukはコロナ渦という長い眠りについていた中で、その目覚めとなった1曲だ。明るい未来を予感させる歌詞は、そういったところからもインスパイアされているのかもしれない。本人たちに聞いたこと無いからわからないけど。

02.君がいなくなって

(詞/曲:夏目響二朗)

言わずと知れた最初期の曲。以前のあとがき①「AMK Works Index」でも書いたけど、何度ものアレンジ変更を経てここに辿り着いた。1番はアコギの弾き語り、終わったところからバンドが合流するアレンジは2021年のサマコン以来導入されてきた、メンバー納得&お気に入りのアレンジ。この曲に限らずだけど、Onjukは新しい曲に挑戦しつつ常に「過去の曲のブラッシュアップ」にもしっかり取り組めたなと思う。今回のアルバム作成にあたり、過去にstudio246で録音したものはそのまま流用するところを、この曲だけわざわざ再録するくらいにはこだわりを持って作った。それが正解だったなと強く思う。2年前の音源と比べると皆成長していて良いね。


-dialogue-

(曲:田中龍佑)

これも2021年サマコンの副産物。本番は[君がいなくなって]を1曲目に、[花火]を2曲目に演奏したのだが、当初この2曲は逆で[花火]からスタートする予定だった。ということで、それに合わせてオープニングのSEを制作したいと思って作っていたのがこの曲で、でも先述した[君がいなくなって]のアレンジ変更に伴って曲順も入れ替わったことでお蔵入りとなっていた…それが今回まさかの復活。[monologue]を入れる話になった時、「それなら実は…」ときょうじろうから提案を受けての大抜擢となった。前トラックから感覚を空けずにストリングスが入る編集も彼が頑張ってくれました!感謝。

ということで、なんだかんだ3年間で初めてとなる「キーボード(オルガン)を弾いた曲の収録」ということになりました。つっても難しいことはしてません。家の電子ピアノで録った音源に花火の素材など諸々を混ぜてちょちょっと編集しただけ。でも次曲との繋がりも自然かつスムーズで、いい仕事をしているなぁと思う。


03.花火

(詩:酒向歩華/田中龍佑 曲:田中龍佑)

記念すべきOnjuk最初のオリジナル曲。なんだかんだ5人時代唯一のオリジナル曲だったりする。作詞は英語のクラスで仲良くしていた友人が書いたものを修正しているので、完全オリジナルとも呼びきれないところがポイント。歌詞の修正は細かい表現やメロディーの都合がメインだけど、日本語としてより自然な表現を目指して初披露以降もちょくちょく直していた。しかし、

少し手を伸ばせば 届きそうな少しの距離も

この歌詞は失敗だった!と歌詞カードを見て気づいた。「少し」を近距離で連発してしまっており日本語としておかしい。でも3年間何も感じなかったし、今となってはこれに代わる的確な表現も思いつかないので、これが正解と言い張っても良いのでは…?というのは甘えですかね。

この曲はきょうじろうも「最もミックスが難しかった」と言っていたけど、とても大変だったと思う。長いから展開にある程度変化をつけないといけないし、その中でコーラスを足したりフェードアウトにしたりと沢山工夫してくれて感謝。特に2番Bメロのコーラスはとても綺麗。是非一聴あれ。


04.惜し風

(詩/曲:就一朗)

AMK2020コンピレーションアルバムに収録された曲。改めて「いちベーシスト」として成長できたなと思う曲。ただルート音を弾くだけじゃなくて、「風」というモチーフをしっかり表現すべく自分なりの創意工夫を詰め込んでみた。詳しくはコンピレーションアルバムのライナーノーツで書いているので、そちらも読んでみてもらえると喜びます。


05.ヒライアカル

(詩/曲:就一朗)

完全初公開の新曲。惜し風は「風」がテーマだったけど今度は「星」。同じ就一朗作の曲ということもあり、前曲と同じくベースはなるべく動くように意識。今回はベースソロもあるし、ライブでの再現を捨ててでも要所でしっかりフレーズを弾くように意識した。

ちなみにローグ3兄弟を除いた8曲の中で最も遅くレコーディングされた曲で、しかも全パートがバラバラに録音している。3年生の授業が全て終わった2月上旬に集まった日にはドラムしか録れず、他のパートは別日に各自で録音。ベースは近所の格安カラオケボックスにフリータイムで入り、3時間ほどかけてじっくり戦った。そのほか、ギターや歌とピアノは各自の家で録音したらしく、それらをつなぎ合わせて完成したのがこの音源。のわりには一体感があるし、いい作品になったなと思う。ただあくまで「作品」。前述したとおりこれらをライブで完全再現しようとは……あんまり思っていない。Onjukの曲をやる際には特にこの意識が強いかも。そもそもこの曲はバンド4人で合奏したことが一度もない。そんな曲でもアルバムに入れてしまったのだからすごい(?)。


06.冬のうた

(詩/曲:田中龍佑)

今回の収録曲の中で最も歌詞が長い&多い曲。そしておそらく随一の明るさを持つ曲とも言える。前曲が「短調から長調(マイナーからメジャー)」という動きをしてくれている為、アルバム全体としても「別れの曲から楽しい曲への移行」というストーリーがなんとなく出来上がっていていい感じだ。冒頭の鈴は良い感じのエフェクトをかけてもらってるけど、実はアメ研の部室に落ちていた鈴やタンバリンを使って録音した生音。ついでに言えば、この曲もコーラスがふんだんに使われているが唯一「メンバー以外の人がコーラスを担当している」曲でもある。歌詞カードのアートワークをやってくれた方が歌ってくれたそうで、感謝オブ感謝。どこか探してみてください。

あとイントロ及びアウトロのギターによるリフは僕が弾いたもの。ライブで演奏する際にもかなりの難所となるリフだが、「どうしても無理だった」ということできょうじろうから依頼され弾いてみた作曲者自身も撃沈。なんでこんなややこしいリフを考えてしまったのか、自分を小一時間問い詰めたくなった。でも音源として完成したものはとてもいい感じ。「これが目指していた形だ!」というものができた。とはいえやはり「作品」。これをライブで再現できるか?というのはまた別の話なわけで………。


07.ステップ

(詩:夏目響二朗/渡辺咲帆/Leggens, グッバイホテル, makerugakachi
 曲:夏目響二朗)

引退ライブで披露した新曲。クレジットには同期の3バンドが併記されているが、これは各バンドの曲から引用した歌詞があるため。実はこういう仕掛けもされていたんだけど、さすがに本番で気づいた人はいなかったでしょう。今回アルバムを出したことで、是非「歌詞」にも注目しつつこれまでの曲をも振り返ってもらえると嬉しいなと思ったりする。

この曲では、ベースに加えて大サビの裏で鳴っているメロディーラインを鳴らす方のストリングスをキーボードで弾いている。転調における雰囲気の差をより広げたいと思って提案し、仮のイメージ音源を出してみたところ好感触を得て採用してもらった。本レコーディングではメロディを自分で弾きつつコード部分は就一朗に一任することで、より上品な和音の響きを出してもらうことにした。アウトロ最後のキメ部分までストリングスを入れるか迷ったけど、入れたのは正解だったと思う。最後まで響きが続いていって、次曲と綺麗につながっている印象がある。良いね。


08.Yamabiko

(詩/曲:田中龍佑)

AMK2021コンピレーションアルバムに収録されたこの曲が最終的に準ラストナンバーになった。今回きょうじろうが246のミックスクオリティに合わせて全楽曲を調整してくれたんだけど、最終的にこの曲の音圧には到達できなかったらしい。(曲に関してはもう別のライナーノーツで何度も書いたので省略)


-epilogue-

(曲:就一朗)

今作における真のラストナンバー。実は引退ライブで[Yamabiko]の前に僕が長々とMCをした際、そのバックで弾いていたピアノソロをアルバム用にリアレンジしたもの。これも他のローグ曲と同じタイミングで採用が決定した。やっぱりOnjukは彼のピアノがないと成立しないバンドだとよくわかる。[Yamabiko]の導入からアルバム全体の締めくくりへと役割は変わったけど、とてもいい雰囲気を持った小品だと思う。


おわりに---タイトル『言の葉 -koto no ha-』

最後にタイトルについて。今回のタイトルは僕がつけさせてもらった。「言の葉」とは、[Yamabiko]の歌詞から引用したもの。

声を枯らして 息を切らして
投げた言の葉たちが聴こえた

これまでは曲のストーリーにおけるいち単語だったものが、バンドのアルバム全てをひっくるめたいわば「Onjukの作品の集合体」としての意味を持ったことで、より[Yamabiko]という曲のもつメッセージも強まった。

Onjukというバンドは最初にも言ったように「ゆるやかに」結成し、活動し、終わったバンドだと思う。しかし同時に、バンドとしての活動を続けていく中で「それぞれが持つ個性(アイデンティティ)を獲得していった」バンドだとも思う。だからこそこの先ももっといろんな事ができそうだと想像してしまう。

このアルバムが「最後」でないことを強く願っているし、メンバーが同じように思っていてくれたとしたら、こんなに幸せなことはない。