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夜、道路、街灯

前編

信号機は誰もいない道にも合図をくれる
愛想などない でも律儀で 誰かに似てる気がした

自他共に認めるMr.Childrenバカな僕ですが、その中で一番好きな歌詞を挙げろ、と言われるととてもむずかしい。みなさんも考えてみてください、あなたが最も愛するミュージシャンで、最も好きな曲はなんですか?すぐに言えるのはもちろん素晴らしいけど、僕は「日による」といつも答える。

しかし、この歌詞は間違いなく「5本の指に入る」好きな歌詞である。2010年、収録曲など一切の告知なく発売された「SENSE」というアルバムに収録されている「ハル」という曲の一節だ。どこが好き、と言われるとちょっと難しいけど、信号機を「愛想はないけど律儀で」と表現しているところがすごく好きだ。

桜井和寿という人は、「光」をテーマにすることが多い。次の2つも、僕がミスチルの中で特に好きな歌詞だ。

でもね僕らは未来の担い手
人の形した光
暗闇と戯れ合っては
眩しく煌めく「箒星」

(箒星/Mr.Children)
悲しみの場所に灯された
裸電球に似た光
それはほら吹きに毛の生えた
にわか詩人の蒼い願い

(もっと/Mr.Children)

ちなみにこの「もっと」は、発売自体は2007年だが、曲の題材は9.11。「悲しみの場所」とは「グラウンド・ゼロ」であり、「ワールド・トレード・センター」のことらしい。
皆がイメージするMr.Childrenは、聴く人の背中を押すメッセージソングが多いかもしれないけど、実はこういうアルバム曲は、結構暗かったり、後ろ向きなのが多い。

世界は誰にでも門を開いて待ってる
平等の名のもとに 請求書と一緒に

これも「もっと」の一節。こういう、希望だけを押してくるのではなく、ヒヤッとする毒を混ぜてくるのが、ミスチルを聴いてて飽きない理由でもある。だからこそ、より「光」が生(活)きてくる。

ここから後編。

あんまり趣味の話ばっかりしててもつまらないので、ちょっと考えてみた。最近バイトを再開してみて、夜に色んな道を歩くようになった。夜は良い。多分、もう少し暖かくなったら更に良い。太陽が照ってるのに寒いとき「なんで?」となるが、夜は寒くなるべくして寒い。夜は話が進むし、普段しない話をしたりする。小学生とかの頃は、日付が変わるまで起きてるなどあり得なかったし、ごくごくたまにそういう日があるとある意味快感だった。それが高校生になると当たり前になり、そして最近またちょっと楽しくなってきた。だから、夜の散歩も楽しい。

夜は道路の音も静かだし、今は冬だから、空気も澄んでいて街頭の灯りも画になる。そして、夜は夜にこそ映える曲がたくさんあって、それを聴いて悦に浸るのがマイブームだ。

・椎名林檎「依存症」
・リーガルリリー「GOLD TRAIN」
・ねごと「カロン」
・ASIAN KUNG-FU GENERATION「ブルートレイン」
・RCサクセション「夜の散歩をしないかね」
・パスピエ「waltz」
・藤原さくら「はんぶんこ」

あたりは夜に合う。星野源にも「夜」という曲があるけど、あれは歩きながら寝そうになるので注意。

最近読んだはましゃかさんのnoteに、「見慣れた街並みもイヤフォンで音楽を聞きながらリズムに乗って歩けば視界がミュージックビデオになる、これは本気で。」とあった。これこれ、これがいいたかった。

日頃、自分の知らない所で色んなことが起きて、その表層や断片だけを思わぬ形で知ったりして、心がひどく揺さぶられることもあれば、誰かとどうでもいい話をしたり、英クラの友人と飯を食ったりしている時間に幸せを感じたりする。noteのネタが既に尽きているくらいにはなにもない日々を送っているわけだけど、音楽を聴いて、街頭に照らされてるさっむい道路を音楽聴きながら歩いてる間は主人公になった気分になる。そういう間に、「前編」に書いたようなことを考えたりする。大人になるという重圧を目前に控えた僅かなモラトリアムだからこそ、こういう余裕があって、こういう密かでコソコソしたことを楽しんでいられるんだろうな、と思った。そんなことをしているうちにもう今期が終わっていく。まあ、ただ、これからのことなんて少しもわからないので…。