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日記38 見下ろせば摩天楼

コロナ禍以来封じられていた海外旅行。そんな渡航制限も昔の話となりつつある2024年5月、実に5年ぶりに国境を超えることができた。行き先は香港。これまで何度か訪れてきたが、最後に行ったのは2018年と6年前のこと。この間にも様々な変化を経た世界的観光都市に行ってきた4日間を書き残しておく。



Day1

Day1といっても、実は日本を発ったのは18時前。なので、香港に到着したのは現地時間の21時頃だった。Airport Express(機場快線)という空港アクセス列車で25分、そこからタクシーでホテルに着く頃には23時前だった。急いで荷物をおろし、この時間にも空いている飲食店を探す。

うろついているうちにたどり着いたのがこの店。店の前で悩んでいると、おばちゃんが「何人?」と聞いてきた。さすが香港人、素早い。

パイナップルチャーハン

夜も遅かったので軽め(といいつつ結構量はある)に済ませる。しかしやはり香港、こういったふらっと入ったお店でも味に間違いがない。最高!

ということで大満足の夜食を済ませ、そそくさとホテルへ撤退。明日からが本番です。


Day2-1 西營盤〜尖沙咀・佐敦

この日は雨予報。特に時間指定の予定があるわけではないので、家族がそれぞれ「なんとなくやっておきたいこと」を処理していくことにする。ひとまず、朝食をとりにいきましょう。

チャーシューマン!

今回宿泊したホテルの最寄りである「湾仔」駅から地下鉄に乗ること10分ほど。「西營盤」駅で下車し、少し歩いて到着したお店で点心を頂く。

母の友人オススメのお店で、朝からしっかり飲茶を楽しめる。飲茶というと点心メインな印象だが(偏見)、そもそもは「お茶+アテ」というスタイルなことも有りお茶が普通に美味しい。それに加えて、ホカホカのチャーシュー饅や海老焼売といった蒸し料理を堪能できる。香港の人にとってはちょっとした生活の一部なのかもしれないが、とても素敵な文化だなと思う。

さて、お腹を満たした後は念願のスターフェリーへ。香港は本土につながる九龍半島と香港島との2つのエリアが観光の中心で、その間にはビクトリア・ハーバーと呼ばれる海(?)が横切っている。そこに、それぞれの中心エリアである尖沙咀(九龍半島)と中環(香港島)を結ぶのが、スターフェリーと呼ばれる渡し船。長い歴史を持つ由緒正しい船であると同時に、120円ちょっとで乗れてしまうとてもリーズナブルなのもポイントだ。

香港らしいコンクリートジャングルとトラム

お店近くの停留所からトラム(後述)に10分ほど揺られて波止場へ。

波止場。懐かしい景色だ!
実は波止場から船の全景を撮るのは難しい。

久々にビクトリアハーバーを渡りながら、槇原敬之の「Star Ferry」を聴く。ちょうど中環から尖沙咀までの所要時間と同じぐらいの尺で、出港と同時に再生すると入港するぐらいのタイミングで曲が終わる。香港に来たなぁと心から感じる一瞬である。

さて、九龍半島に上陸。突然のゲリラ豪雨に降られながら、母のショッピングにしばし同行。この辺りはとにかく地下が複雑で、目的のお店までたどり着くのも一苦労だったが、途中でレゴランドとそのショップに辿り着き、久々にブロックに触れて童心に返るなどのイベントもあった。

一段落して、次は個人的に行ってみたかった場所へ。香港は対中関係という意味では非常に微妙な立ち位置で、内地との連絡手段に乏しかったのだが、2018年に高速鉄道が開通。香港西九龍駅という立派な駅を拵えた。鉄道駅ながら空港のような入境手続きのエリアも存在しており、島国の日本人として「陸路で国外と繋がっている」光景を観ること自体が珍しいのだが、世界的に見ればこういう箇所も沢山あるよなぁと思いつつ眺める。

離港(Departure)

さて、出来立てのターミナルの雰囲気を感じられて満足したわけだが、ここにあるフードコートは数が少ない上に先ほど点心を山ほど食べたばかりでそれほどお腹が空いていない。ということでここはパスし、もう少し軽めの海老ワンタン麺を食べに、以前にも訪れたことのあるお店へ向かう。

香港西九龍駅から歩くこと20分ほど。普通に行くなら地下鉄の佐敦駅が最寄りになっている麥文記麺家というお店にたどり着いた。

日本のガイドブックに掲載されたことも
独特の細麺(手打ち)

サイズは御椀1杯ほどなので、1食というよりは小腹を埋められるようなものと言ったところか。しかし、プリプリの海老ワンタンも5つほど入っていてこれが美味いのなんの。ちょうどお腹を満たせて味も満点。これ以上ない昼食だった。

お腹もいっぱいになったところで、次の目的地へ。香港島で「鉄板のアレ」を見に行くことにする。

※余談。尖沙咀の駅に戻る途中でTOM LEEという大手楽器ショップに立ち寄った。島村楽器やイシバシ楽器のように一通りの楽器が取り揃えられ、音楽教室も併設されたれっきとした楽器屋。ちゃっかりエレキ弦を購入。店内では試奏している人もいたが、ちゃんとレッチリのCan't Stopを弾いていた。マジで万国共通なんやな…。


Day2-2 山頂(ビクトリア・ピーク)



地下鉄で再び香港島へ戻ってきた。ここからは、香港観光のド定番とも言えるビクトリア・ピークへ向かうことに。本当は夜景がとてもキレイな場所なのだが、我々家族としては「行きも帰りも現地も激混みの夜にわざわざいかなくても良い!」という発想。かなり微妙なお天気ではあるが、まあ霧がかかっていたりしてもそれはそれで幻想的だよね〜ということで昼下がりに突撃することに。

ちなみに山頂にはバスで行ける他、これも観光要素の目玉であるピーク・トラムという登山列車があるのだが、これもこれで激混み&運賃もガッツリ観光地価格ということで往路はパス。そしてバスも経験上割と混む上にかなり揺れて過去に激酔いしたことがあったので、3人だからと割り切ってタクシーで優雅に移動。それでも確か1500〜1600円ぐらいだったので、3で割ると500円ほど。べらぼうに高いわけでもないし良いか。

かなりアップダウンの多い山道を揺られること15分ほどして、中環駅から山頂に到着。何度か訪れたことはあるが、悪天候というのは初めて。街は雨と曇りのちょうど境目ぐらいの天気だったが、山頂は果たして………。

!!!

何にも見えない………。(松岡修造ボイス)

この光景、すごく既視感があるなぁと思ったら、Mr.Childrenのmiss youのジャケットとかアートワークが全体的にこんな感じだったわ。

見上げればRainbow〜

さすがにすごい霧。雨はそんなに降っていないのだが、霧で数10m先も見えない。しかしながら、日本にいてこれだけはっきりした濃霧に包まれることも少ないので、逆にテンションがアガる。周囲の観光客も、景色が見れず残念!というよりは、圧倒的な霧とこの空気感を楽しんでいる感じだ。

しかし、山の天気は変わりやすかった。霧が少しずつ風に流されていき、アハ体験の如く徐々に視界がクリアになっていく。そして遂に…!

見える…!見えるぞ…!(最初の写真とほぼ同じ画角)

霧の中から香港島のビル群が姿を現した。夜景も何度か観たことがあるけど、(写真でどれだけ伝わるかわからないが)昼に観ても普通にちゃんと絶景…というか、地震大国の日本ではなかなか観られない「圧倒的高層ビルジャングル」はかなり新鮮だ。

これよ、これが観たかったんよ…!と感動していると、さらに上層(?)の霧も少しずつ晴れていく。そしてものの数分で、あの霧一面の景色はこうなった。

九龍半島まで望めるように。画角もさっきと同じ。

一面真っ白なところから少しずつ霧が晴れ、香港島からビクトリア・ハーバー、そして九龍半島が姿を表すこの一連の景色の変化。わずか十数分の間に、しかも図ったかのように目の前で起こった。(まるでカーテンを開けるように!)お昼にも夜にも来たことがある場所ではあるが、こんな表情を観たのは初めてのこと。自然の移ろいと人工の文明がマッチして生まれたショーのような、すごいものを観ることができた。

ちなみに反対側は香港仔(アバディーン)方面?が見える。
なんで斜めに撮るん?

山頂廣場(山頂にあるショッピングモール)内で名物のエッグタルトも堪能。サクサクトロトロで最高。香港に来たら(山頂でなくとも)一度は必ず食べておくべき逸品だ。

さて、絶景もスイーツも味わったので下山。帰りはちゃんとピーク・トラムで帰る。片道でも高いが、往復だと行きに乗ったタクシー代(3人合計)が1人分の切符を買うだけで消えていくというすごい代物だ。もちろんそれだけの価値はあるが。

中は思ったより綺麗だな。(卓郎風)

あまりにも混み過ぎていてまともに写真も撮れなかったが、前回(2018年2月)に来た時から車両更新がされておりピカピカで展望も最高。昔小さい頃に乗った時は、あまりに急勾配なのにずいずい登っていくものだから何だか面白くなってきてずっと爆笑していた記憶がある。もはやちょっとしたジェットコースターとも言える。先述の更新で壁天井がほぼ全てガラス張りになったので、昼でも夜でも素晴らしい景色が望めること間違いなし。ちなみに乗る時は西側(登る時は進行右側、降りる時は左側)に座ることをオススメします。


Day2-3 トラム〜西湾河(電影資料館)

さて、ビクトリア・ピークを満喫して只今午後5時ごろ。夕食まで少し時間がある中で、母リクエストのスポットへ向かうことに。

トラム

そこまでは、香港島の由緒正しき交通手段・トラムに揺られてのんびり行くことに。1904年にその歴史が始まって以来、100年以上の長きにわたって香港島の足として人の往来を支えてきたトラム。その魅力は様々あるが、やはり一番は二階建てならではの眺望の良さだろう。

コンクリート・ダンジョン

道の両サイドを車や二階建てバスがせわしなく駆け抜け、道路沿いの建物はやたらと高いし看板が道路まで迫り出していることもしょっちゅう。(何度も言うが)地震大国の日本ではまずありえない、圧迫感のすごい町並みである。というか、そもそも街や建物の作り方が日本と発想から違うんだということがひしひしと伝わってくる気がする。

車両には番号が振られているのか、看板がついている。
名札みたいでかわいい。

香港島は基本的に真ん中が山なので、海と山の間の僅かな平地に建物が密集する。鰂魚涌(クォーリーベイ)付近は、迫り出した山と超高層マンション(映画「トランスフォーマー/ロストエイジ」のロケ地にもなったらしい)が同居するカオスなエリア。香港ならではの環境や歴史が作り出した景色と言えよう。

40分ほどじっくりトラムから景色を楽しみ、目的地付近の停留所で下車。おおよそ7.5kmほど、名古屋駅からだと本山ぐらいまでの移動だったが、運賃は均一3香港ドル(当時約60円)。この安さも地下鉄やバスの路線網が発展する中でもトラムが長く愛される所以である。

停留所から少し歩き、目的地へ。香港電影資料館という、香港にまつわる映画のアーカイブや資料を観ることができるスポットである。

FILM ARCHIVE

ここでのお目当ては、特別展として開催されていたチャイナドレスの展覧会。過去に香港映画で着用されていたチャイナドレスが展示され、その変遷や歴史をみることができる。撮影OKだったが実物をネットに載せるのはなんだか怖いので文字だけで書き残しておくと、一番の感想は「思ってたより多様性!」という感じだった。日本でイメージするような、ちょっとセクシーな「これぞチャイナドレス」というものもあれば、藍色や茶色といった落ち着いた柄の、なんとなく明治っぽさを感じさせる色合いのものまで様々。派手だから良い、地味だからうーん……ということではなく、それぞれに個性がはっきり出ていて面白い。母リクエストなので同行という感じだったが、しっかりと楽しむことができた。

(※繰り返しますが常設展ではありません)


のんびり移動して展示もじっくり観たので、時間は18時過ぎ。夕食の時間ではあるがそこまでガッツリ空腹というわけでもないし、基本的に悪天候で雨に降られながらだったので少し疲れてしまったこともあり一旦ホテルへ帰ることに。ホテルへは往路と同じトラムもあるし、地下鉄を使えばものの十数分で帰ることができるが、ここは敢えてバスに挑戦してみることにした。鉄道オタクとは基本的に、往復で同じ交通手段を使うことを嫌う傾向がある。多分。

しかし、いつものように乗換案内でパッと適切なバスを調べることはできない。MaaSアプリのようなものがあるのかもしれないが使い方が難しいので、とにかくバス停を調べて周る。ホテルは湾仔(ワンチャイ)駅の近くなので、その辺りに降ろしてくれれば良いのだが………。

選ばれたのは、720系統でした。

縦横無尽に走るバスの中から、ようやくお目当ての系統を発見できた。香港のバス停というのは一見難しいが、ちゃんと読むと分かるようにできている。バス停にデカデカと方面が記載されているわけでもないので一つ一つしっかり確認していくわけだが、ちゃんと「湾仔」の文字を見つけることができた。しかもこのバス、現在地(西湾河駅付近)を少し西に走った後、トラムやらバスやらで激混みのエリアを高速道路ですっ飛ばし、湾仔付近までワープしてくれる優秀な系統。名古屋にも、高針あたりまでお客をたんまり乗せて、そこから名古屋高速で一気に名古屋駅までワープできる名鉄バスがあった気がするが、その手のルートである。非常に便利。

ちなみに、これはバスだけでなくトラムや地下鉄にも言えることだが、香港は基本的に時刻表が存在しない。もちろんダイヤは組まれているので調べようと思えば出てくるが、基本的には「何分後に来ますよ」か「何分間隔ですよ」だけ教えてくれる。路線図の右側にかかれている数字はまさにこの「何分間隔」の話をしているわけで、曜日や時間帯ごとにバスの運行間隔がまとめられている。なのでいつ来るか細かい時間はわからないが、とにかく何分か待てば来るということだけはわかるようになっているのだ。

えぇ…

スコールのようなゲリラ豪雨でずぶ濡れになりながら待つこと10分ほどしてお目当てのバスが到着。快適にホテルの近くまで送り届けてくれた。バスチャレンジ、なんとか成功。慣れないバスも、ちゃんと理解すれば便利な乗り物である。


(※長くなったので後編へ)