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日記26 「エントランス」

(付記)
今回は、6月18日に参加した「Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス」のライブレポートとなります。ネットに上げられた当日のセットリストを見つつ、決して記憶力が良いわけではない人間が数時間前の記憶を振り絞りながら書いているため、違う曲の演出を混同して書いているなどの可能性があります。特にMCは、細かい表現まで覚えきれてないので「なんとなくこんな意味合いの事を言ってた気がする」程度です。

あと今更ながらめちゃくちゃネタバレ注意です。(まあもうツアーの全日程が終了しているのでネタバレも何もないかもしれませんが……)







6月18日、午後3時。1週間前から天気が怪しかったこの日の大阪だったが、果たしてその空は予報を覆す晴れ模様。決して快晴とまではいかないが、雲の切れ間からかすかに太陽が覗いていて、会場のスタッフさんがしきりに体調管理を呼びかけていた。ただでさえ、コロナ禍を経て初めて5万人という人だかりに飛び込むわけだし、加えてこの蒸し暑い気候だ。アリーナにも持ち込めるペットボトルの水を買い足して、開演を待つ。

17時を少し過ぎた頃、オーケストラアレンジされた[優しい歌]が流れ始め、ライブスタート。縦長の長方形をいくつも並べて構成されている巨大なメインスクリーンに映像が映し出された瞬間、「ライブが帰ってきたんだ…!」と強く感じた。映像は先日発売されたベスト・アルバムのジャケットをなぞるように「エントランス」が起動していくシーンが描かれている。と同時に、メインスクリーンの下半分がゆっくりと、ステージを覆い隠すように降りてきた。

いよいよ映像もクライマックスへ、ついにエントランスが開く。それに合わせてステージを覆っていたスクリーンも開く。そしてそこには……ずっと待っていた5人の姿が!力強いエレクトリックギターの音に導かれるように音が重なっていき、[終わりなき旅]からライブがスタートする。この音、この声、そして周りから聞こえる割れんばかりの手拍子。これがライブだ!3年も待ったライブだ!これだけでもう心が高鳴る。なんども聴いてきたし、ライブ映像で観た曲ではあるが、やはり生演奏に勝るものはない。曲の最後、短いMCを挟んだあとの万感の思いがこもった『終わりなき旅』のフレーズは最高だった。

アコースティックギターに持ち替え、それまでシリアスだった桜井さんの表情がパッと緩み[名もなき詩]へ。この曲は一緒に歌いたかった…!残念。さらに[海にて、心は裸になりたがる][シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜]と、まさしく通常のライブならば5万人の大合唱が聴けたであろうキラーチューンが続く。でもその分、メンバーやSUNNYさんが僕らの声を代弁するように歌ってくれる。これはこれで良いかもしれない。
そんな3曲に続き、「この曲を何度も何度も演奏してきましたが、この曲を聴いているときの皆さんの顔が大好きです!」というMCとともに[innocent world]へ。マスク越しの僕らの表情を感じ取るかのように演奏するメンバーの姿、大好きだ。

MCを挟んで一息つき、メインステージでの演奏が続く。まずは厳しいコロナ禍を耐えた互いを称え合い、また改めてエールを送ってもらったように感じた[彩り]。いつもどおりの「ただいま」と「おかえり」はできなかったけど、今回は「(Mr.Childrenやライブへの)ただいま、おかえり」の意味も込められた、特別なやり取りだったように思える。
そして『僕らの今が途切れないように』の歌詞を引用したMCが印象的だった[口笛]。野外で聴いたのは初めてだったけど、すごく心地良かった。

「ロマンチックな曲をやるので…」とリズム隊2人を冗談交じりに退場させ、桜井さん・田原さん・SUNNYさんの3人がセンターステージへ。「車の運転席に座ってるイメージで」と桜井さんが座ったのに倣って、次の曲は座って聴くことにする。30年、いやアマチュア時代を含めればそれ以上の時間をバンドとともに過ごした[車の中でかくれてキスをしよう]は、夕暮れの涼しい空気に乗ってよりエモーショナルに響いた。
曲が終わると、「もう行ってもいいですか…?」といった様子のリズム隊がステージの後ろから戻ってきて、センターステージへ。JENさんはここで初めて、今日の風の心地よさを感じることができて嬉しそうだった。穏やかな空気が流れる中、次の[Sign]へ。お客さんに360度囲まれたメンバーが楽しそうに音を奏でている様子がとても素敵だった。

メインステージに戻って次に演奏された[タガタメ]は、個人的にこの日のベストソングだと思う。この曲を今聴くと、どうしてもリアルタイムで進行している戦争のこととリンクさせてしまう。また曲の途中の映像演出には、Stay Homeが叫ばれた時期にさながらゴーストタウンと化していた街の様子も映し出された。そういうことと結びつけてこの曲が選ばれたかどうかはわからないけれど、メンバーは凄まじい熱量で演奏していた。さらに言えば、ここはスタジアム。つまり屋根がないので、音は会場の外にも届く。この[タガタメ]は、会場の中にいる5万人だけでなく、長居公園、ひいては世界に届けるメッセージなんじゃないだろうか…?というのは考えすぎだとしても、それくらい強い思いを見た。
さらに[Documentary film]が続く。『ある時は悲しみが多くのものを奪い去っても 次のシーンを笑って迎えるための演出だって思えばいい』というフレーズが、コロナ禍を経てより大きな意味を持ったように感じる。

ここからはガラッと空気が変わり、ダークな曲が続く。先陣をきったのは[DANCING SHOES]。(衣装替えのために一旦下がっていった桜井さんがイントロの中盤になっても戻ってこなくてちょっと焦った)映像演出は、縛られたダンサーが最後の最後で鎖から開放されるというストーリー。おどろおどろしい映像をバックに、クセになるアコースティック・ギターのリフを鳴らしながら歌う桜井さん、すごくいい。
息つく間もなく演奏された次の[LOVEはじめました]には、今回の個人的ベスト選曲賞をあげたい。本イントロに入るところ、機械音声の『ラァブ ハジメマシタァ~』に合わせてスクリーンにタイトルが映し出された瞬間!この瞬間がこの日で最もハイテンションになった瞬間だった。ライブで聴くのは10年ぶり(!)だったけど、他のシングル曲に負けず劣らずの盛り上がり具合だった。
そしてたたみかけるように[フェイク][ニシエヒガシエ][Worlds end]とロックナンバーが続く。しかしまあ、よくこれだけ激しい曲をほぼ休む間もなくやり続けられるなぁ………と思ってしまう。僕らの手拍子に煽られ、また煽り返すように、メンバー全員が生き生きと演奏している姿はとてもカッコいいし、「ロックバンド」然としたMr.Childrenを見せつけられた感じがした。

ここでまた一呼吸おいて、「皆さんの思い出と共に、大事な曲になっていけるように」という言葉(みたいな感じだった気がする)と共に演奏されたのが新曲の[永遠]。タイアップした映画を連想させる大きな桜の樹をバックに祈るように演奏する5人は、ついさっきまで荒々しくロックを奏でていた5人とはまるで別人のようだ。このふり幅がMr.Childrenらしくてすごく好き。さらに[others]では、桜の樹に代わって月が映し出された。ちょうどこの時間になると、太陽がすっかり沈んで空が暗くなり始めた頃。時間としてはちょっと早すぎたかもしれないけど、心地よい風は確かにこの曲の持つムードをさらに引き立たせていた。

ここからライブはいよいよ終盤へ向けて勢いを増していく。まずは[Tomorrow never knows]から。『心のまま僕はゆくのさ 誰も知ることのない明日へ』というフレーズは、まさしく扉を開いて半世紀を目指しスタートを切った今のMr.Childrenというバンドを象徴するかのようだ。
続く[光の射す方へ]は、「Stadium Tour 2015 未完」と同じく、最後の大サビでドカンと花火が打ち上がる。地味に今年最初の花火だったかもしれない。この曲もまた、いつか規制が解けたら一緒に叫び歌いたい曲の一つだ。
そして[fanfare]。イントロが流れた時、前にいたお姉さんがピョンピョンと軽く跳ねながら喜んでいたのが印象的だった。桜井さんはステージを縦横無尽に移動しながら魂の歌声を披露する。
ボルテージが最高潮に達する中、とびきりポップなイントロが!久々に昔のような長いイントロがつくアレンジに戻った[エソラ]は、自分が「SUPERMARKET FANTASY」をきっかけにファンになったこともあり、個人的には「この曲こそがミスチル」と思ってしまうくらいずっと聴き続けてきた曲だった。ライブとしてはちょうど5年前の夏、同じ長居スタジアムで聴いたのが最後だったけど、いつまでも色あせずに気分を高鳴らせてくれる至高のメロディーだ。何度も言うけどこの曲もまた一緒に歌い叫べる日が来ますように!

「最後の曲を何にするか悩んで、ずっと握りしめてきたこの曲を選びました」という(感じの)MCを挟み、本編最後に演奏されたのは[GIFT]。Mr.Childrenからの音のGIFTを受け取り、僕ら5万人のファンも最大限の愛を贈る。最後の『今 君に贈るよ』以降の部分は、声こそ出せなかったが、会場全体が沢山の愛に溢れた瞬間だった。

ここからはアンコール。少しラフな格好になったメンバーがステージ上に戻ってくる。「あの曲やってほしいな、という希望を出来るだけ叶えようと選曲しました」と話し、その中でも「まだやってないな?」という曲を……ということで、[HANABI]へ。この曲がこれほど終盤まで引っ張られたことは初めてだろうか?でもそのぶん、『逢いたくなった時の分まで 寂しくなった時の分まで もう一回 君を強く焼き付けたい』というフレーズの深みが増したようだった。もうライブは何曲も残っていないだろうからこそ、一つ一つの音や声を聴き逃さないように、それこそ「焼き付ける」ように聴く。そしてもう何度も何度も思ったが、これもいつかまた一緒に歌いたい!

曲が終わると、長めのMCへ。改めてのメンバー紹介ということで、まずはサポートメンバー以上の存在にも見えるキーボードのSUNNYさんから。キーボード、そして「コーラス」ではなく「ボーカル」と紹介されるのが、メンバーからのリスペクトや愛が感じられてすごく好きだ。そういえばSUNNYさんは、[名もなき詩]でアコーディオンまで弾いていた。本当にすごいプレーヤーだと思う。
続いてメンバー。JENさんは、僕らお客さんだけでなくツアーの運営スタッフやデビュー以来・以前からバンドを支えてきた人たちに改めて感謝を述べ、大きな拍手が送られた。ナカケーさんは、これまでの感謝と共にこれからの決意を力強い言葉で伝えてくれた。田原さんも、「皆さんの思いが湖面に光っているようで綺麗だった」と話し、最後に「たまには紹介させてください」と桜井さんを紹介する。自分がバンドをやってみてわかったけど、たった3年やるだけでもバンドはすごくすごく大変だ。それを10倍やってきたことがどれだけすごいことか…。しかしそこには、こんな風にメンバーをしっかりリスペクトできる信頼関係があることは間違いない。それを感じる事が出来て良かった。

いよいよ最後の1曲。紹介された桜井さんが、改めて感謝と今後の抱負を語る。そして「この曲のタイトルそのものがメッセージ」(ダメだ!一番大事なMCなのに細かい表現が思い出せない)という言葉と共に、最後に演奏されたのは[生きろ]。30年の歴史を築き、そこからさらに前進し続けようとするMr.Childrenのパワーがそこに込められていた。最後のサビでは、[終わりなき旅]と同じようにメイン・サブのスクリーンをフルに使ってメンバー4人が大きく映し出される。その表情を、姿を、声を、音を、熱を、焼き付けるように見つめる。聴く。そして最後の音が鳴った瞬間……一斉に照明が暗転し、ライブは終了した。(個人的にこの照明演出がすごくカッコよかったので、いつか自分のライブでもやろうと思った)

全25曲、あっと言う間の時間だった。3年間という長い期間ではあったけど、Mr.Children(とSUNNYさん)の変わらない姿に喜びを感じ、演奏をライブで聴ける幸せをかみしめた時間だった。帰り道で、思いだすように色んな曲をウォークマンで聴き返してみる。「この曲聴けて良かった!」という曲も、「あ、そういえばこの曲、聴きたかったのに演奏されなかったな」という曲もいくつもあった。いや、それでも大丈夫なはずだ。この「半世紀へのエントランス」というツアーは、30周年を祝いこれまでを振り返るツアーであると同時に、50周年へ向かう旅立ちのツアーでもあるのだ。あくまで「エントランス」なのだ。きっといつか、今日聴き逃した曲が聴ける日もあるかもしれない。そして同時に、また素敵な曲が新しく生まれてくるだろう。

3年ぶりのライブ参戦となった「Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス」。ほんとうに最高の時間でした。また会えますように!そしてその時はマスクを外し、声を出して、一緒に歌えますように!



(ちなみに)
以下、ライブ一週間前に予想したセットリストを残しておきます。(当時知っていた情報は「プレライブのセットリスト」「5/10に行われたライブを報じためざましテレビとZIP!のニュース」のみ)終わってから見ると「近からず遠からず」という感じですね……。

(予想セットリスト)
01. 生きろ
02.名もなき詩
03. youthful days
04. 海にて、心は裸になりたがる
-MC-
05. 僕らの音
06. Replay
07. HANABI
08. Sign
09. 永遠
-MC-
10. Simple
11. Tomorrow never knows
12. others
-SE-
13. ロックンロールは生きている
14. ニシエヒガシエ
15. フェイク
16. Any
17. DANCING SHOES
18. Worlds end
19. シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~
20. innocent world
-MC-
21. GIFT

-Encore-
22. overture~蘇生
23. fanfare
-MC-
24. 終わりなき旅