Birthday/君と重ねたモノローグ

改めて調べなおしたら、「Birthday」が「映画ドラえもん のび太の新恐竜」主題歌になったニュースが来たのは去年の11月だった。それから2か月後の1月に「君と重ねたモノローグ」が来て、また2か月後の明日、ようやくシングルが発売される日になる…。

と、ミスチルは基本的に告知日~発売日がめちゃくちゃ長くて、ファンは毎回「新曲の存在は知ってるけど聴いたことない」という半殺し期間を毎回味わうことになる。いっそ「SENSE」の時みたいに、プロモーションなしでいきなりリリース!とかにしてくれ…なんて思いつつも、ようやくフラゲ日になったので、さっそくお迎えに。で、忘れないうちに、初見の感想を残しておく恒例行事をやります。

ちなみに、アルバム「重力と呼吸」期間中(前作のツアー終了~アルバム発売~今作のツアー終了までを勝手に「期間中」と呼んでいる)に出た「ヒカリノアトリエ」「himawari」には、それぞれシークレットトラックがあったんだけど、これは2枚とも新曲が少なかったのと、「Mr.Children Hall Tour 2016 虹」「Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ」の音源も収録されているのもあって結局結構なボリュームになった一方、今回は両A面でカップリングなし、という構成からあんまり期待してなかったんだけどやっぱり隠しトラックはなかった。2曲で12分っていうから、トラック2の最後に何かあるのかとも思ったけど、単純に2曲目が7分の超大作だっただけでした、残念。パッケージもめっちゃシンプル(でも青+ピンクってのが、「春!卒業!桜!」って感じで良い)で、少し前の星野源の時よりも「ただただ青」って感じだったから、「himawari」みたいな隠し要素はなさそう、ネットの反応見てないからまだわからんけど。

1.Birthday

予告編は何回も観たけど、「himawari」と違ってサビしか使われていなかったので、「なるほど~」くらいにしか思ってなかったんだけど、2月14日かそのあたりに、FM802で突然頭からオンエアされたのを聴いてビックリ。イントロがめちゃくちゃいいじゃないですか。

ミスチルのよくやる手法として、イントロでリフを「アコギ+エレキ」で重ねるってのがある。「Starting Over」のイントロがまさにそれで、これによってイントロのフレーズが一気に厚みを増して印象的になる。で、今回もそれが使われていて、しかも今回は「アコギ+ストリングス」でユニゾンしているので、爽やかさも出るし、壮大な感じもして、「冒険を始めるぜ!!!」って感じがしてとてもいい。

で、1番は基本的にずっとDrがキック4つ打ちのみになってる。いい感じの音色で、「恐竜が走ってきてます」感がすごい。Aメロ~サビのエレキは田原さんらしく、「リズムギターっぽいリードギター」というミスチルの王道路線まっしぐらって感じ。「海にて、心は裸になりたがる」が同じ爽快路線だけどしっかり8ビートを刻んでる一方で、この曲は「Worlds end」のような、疾走感がすごい。あと、これは2曲ともなんだけど、どちらも今回エレキの音作りがすごく好き。

そして間奏、ドラムのリズムがタム回しになって、「youthful days」の要素を出しつつ、軽やかにユニゾンするアコギとエレキ、バックでどっしり鳴っているストリングスが合わさって、だんだんエンジンがかかっていく。

2番のAメロは、基本一緒なんだけどエレキが2本になって、1つは同じように淡々と、もう1本は要所要所でツボ押しのように綺麗なリフを弾いている。これよ!これがミスチルよ!(興奮)

そして2サビ、この曲は全体的にドラムの音色がちょっと変わってて、2サビの前半はスネア4分っていうあんまり見ないことをしてるので顕著に分かる。足音って感じの音。で、後半に向かってベースがフレーズと共に合流、みんな集まってサビへ~~~という流れ、そこからストリングス中心の長い間奏へ。ここは静かめにコーラスが入ってるんだけど、ライブでやるときはここをみんなで歌うんだろうね~。スタジアムとかだったら絶対気持ちいいと思う。

落ちサビはアコギと歌のみ、むき出しって感じ。ラスサビの「It's my birthday」はコーラスが沢山重なって、それまでのサビよりも盛り上がりがすごい。ストリングスも8分で鳴らしてて、帰着というよりはどんどん旅に出ていきますよ~!って感じだ。

ちょろっと歌詞の話。Mr.Childrenのアニメ映画主題歌と言えば、2009年の「ONE PIECE FILM STRONG WORLD」での「fanfare」が割とデカくて、ライブの定番曲になってた時期もあるくらい盛り上がる曲。歌詞にも「さあ旅立ちの時は今 風を読んでデカい帆を張れ!」というくらい、海賊モノってのを意識してるんだけど、今回も歌詞的にはかなり寄せてきている。

君にだって2つのちっちゃい牙があって
1つは過去 1つは未来に 噛みつきゃいい

ってところが「新恐竜」のテーマって感じがする。予告編で使われてた落ちサビ~アウトロまでの部分も、特に映画を意識して作ってるのがわかる。歌詞とセリフがシンクロしてるのが泣かせにきてるな。

2.君と重ねたモノローグ

そもそも「モノローグ」ってなんだっけと思って調べたら、「俳優が舞台で一人で喋る長セリフ(その人の思考や感情、物事の推移などのナレーションもある)」らしい。ここでは、雑にくくって「君との思い出」くらいの意味でいいんじゃないかな。

いきなり歌スタートなのも割と久しぶりなのでは?と思って思い出してみると2012年リリースの「pieces」以来、なのでちょっと意外。頭から泣かせる気満々の桜井ボイスと、めちゃ音作りがいいギターが心地いい。「Birthday」が「冒険がはじまるよー!」っていう朝とか昼の曲なら、こっちは完全に夕方の曲って感じ。役割としては、星野源の「ドラえもん」と、挿入歌だった「ここにいないあなたへ」(めっちゃいい曲)の関係性に似ている。系統としては、「秋がくれた切符」「空風の帰り道」みたいな、勝手に「ミスチルの帰り道バラード」と呼んでいる曲に近いんだけど、それよりもウカスカジーの「My Home」とか、Bank Bandの曲調にも近くて、ミスチルとしてここまでやるのはあんまりないのかも?と思った。

メロディーは、まさしく自分がミスチルから受けた影響の部分そのままなのですごく心地良い。予告編で「水上バスやん!」と全力で突っ込んだサビの部分は、流しで聴いてみるとあんまり違和感がない。(ただ、この部分をそのままこの前「Yamabiko」に落とし込んでしまった)こっちは、あくまでゆったりしたバラードとして成立しているので、基本的にはオルガン(小林武史の頃の音色にも近くて好き)とギターのみで進んでいき、ストリングスはあくまでバッキングに徹しているな~という感じ。落ちサビから徐々に存在感を増していって、ラスサビで転調するところから一気に曲のメインに昇ってくるのが、曲の展開を全力で「今からお前を泣かせてやるぜー!」っていうのを感じさせる。予告編だけだと、「放たれる」みたいに、主題歌なんだけどそこまで表に出てこないのかと思ったけど、意外とそうでもないのかもしれない。

で、問題がアウトロ。これには驚かされた。そこで盛り上げてくるかー!となった。くるりの「ブレーメン」よろしく、テンポが一気に上がり、バンドがフェードアウトしてストリングスだけになったかと思いきやまたバンドが戻ってきて…と、ミスチルにしては珍しく(曲の全体に対する歌ってる部分の割合が少ない曲は「ポケット カスタネット」とか「風と星とメビウスの輪」とかがあるけど)2分くらいあるアウトロだけで展開がコロコロ変わっていく。ストリングスのアレンジを担当しているSimon Haleは有名な賞とかも受賞している凄腕で、その遊び心を出したのがここなんだろうね。2曲とも、普段の四家卯大ストリングスとか、弦一徹ストリングスとはまた違った厚みがあって、ロンドンまで出向いて気合入れて録ってきました!って感じがする。雰囲気的にも「Drawing」に通じるところがあって、すごい良いなと思った。

こんなに良い曲を聴いて、色々インスピレーションが浮かぶ一方で、部室には3月終わりごろまでは入れない、という厳しい現実に、ただただコロナを恨むほかない…。