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One Room Holic

以前、「不透明」という曲について書いた。この曲は2019年の冬、2コ上の先輩たちの引退ライブを兼ねた定期演奏会が終わった後の祝賀会(寺)で出来た曲だった。そして今回書く「One Room Holic」は、そこからさかのぼる事5か月。自分たちAMK2019のお披露目ライブとなった、2019年のサマコン(サマーコンサート?)を終え、同じように祝賀会(寺)が開かれ、明けた朝にできた曲。静かな曲ではあるけれど、他の曲とは大きく違った意味で、makerugakachiというバンドを象徴するような曲になっているように思う。

(なぜ突然この曲の記事が?と思われるだろうが…リリースが予定されているmakerugakachiのCDをお楽しみに)

19年夏のサマコン、我々makerugakachiは同期で最も息巻いていた。それはもう、傍から見たら怖いくらい息巻いていたと思う。大学生になって好きなだけバンドをやれるようになり、気の合うメンバーと練習をして、いい歌を歌って、終わるとメンバーの下宿に押しかけて夕飯を食べる。そんな日々を経て、結成から2か月なのに張り切ってオリジナル曲を2曲も用意し、コピーと合わせていきなり4曲。当時の映像を観ても、「俺たちすごいだろ!ほらほら聴いてくれよ!」という暑苦しいくらいの勢いを感じる。今振り返れば、ある意味思い描いていた「大学生バンドマン」然とした姿だったかもしれないけど、やっぱり「若いなぁ……」と苦笑してしまう。

そんなライブは、出来はともかくとして心から「楽しかった!」と言えるものだった。今日の達成感とこれからへの期待や不安をメンバーの下宿に持ち帰ってささやかなパーティーを開いたのち、部活の祝賀会会場に移動してまたひとしきり騒いだ。騒いで、遊んで、疲れ果てて、自分は一人別室で倒れ込むように眠った。

翌朝。疲れはピークに達していて、解散になった後「このまま帰るのは無理だ!」と、またメンバーの下宿に駆け込み、復活するまで4人で雑魚寝することにした。しかし、酔いつぶれてヘトヘトな3人と違って、一睡していた自分は一人だけちょっと元気だった。眠っている3人を起こさないようにぼんやりと部屋の景色を眺めながらできたのが、この「One Room Holic」という曲だ。タイトルは、アメ研OBの方が所属するcinema staffの「AMK HOLLIC」という曲から取っている。

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1番はこの時の情景描写から。

午前9時 天気は曇り
カーテンを閉め切って
外の喧騒から離れて怠けて
ただ溶けていく

昨日のことも何もかも
覚えていなくたっていいじゃないか
与えられた今という時を
ただ生きていく

Good Night, My Friends
静寂という音を鳴らしてるんだ
Good Night, My Friends
六畳をライブハウスにして
今だけの音を奏でよう

カーテンを閉め切った六畳(「One Room」)の下宿は、そこに4人の人間がいるとは思えないくらい静かだった。午前9時ともなれば、外を歩く人も増えて街が活動を始め切っている時間なのに、六畳の中だけは時間が止まったようだった。そんな空間が、異常なまでに「画になるなぁ」と思えた。

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午後8時 空には星
一つの灯りの下で
子供みたいな純粋さで
広大な夢地図を描いた

限られた中で僕ら
どこへ向かっているんだろう?
でもわからないまま進んでいこう
水平線を越えて

Good Night, My Friends
空想上のショーをいつか 現実にしよう
Good Night, My Friends
街が眠る頃 くだらない四重奏を

2番の歌詞は、サマコン直後、寺に行く前に開いた4人だけのパーティーの情景描写であると同時に、歌詞にも仕掛けをした。歌っている内容としては、バンドのこれからについて。しかしそれと同時に、「メンバーの名前を歌詞に入れてみる」というチャレンジの産物でもある。

「子供みたい〈な純〉さで」
「〈広大(工大のもじり)〉な夢地図」
「限られ〈た中〉で」
「空想上の〈ショー〉をいつか現実に〈しよう〉」

1つ目を思いついた時、「これはキタ!」と思ってやってみたけど、残り3つは結構こじつけた感じが強いなと今でも(当時でも)思う。名前の字だけで読み方を考慮してなかったり、本名がわからないと伝わらなかったり…。でもまあ、これはこれでいいんじゃないでしょうか。

それ以外で言うと、パスピエの歌詞に出てきた「街が眠る」という表現や自分たちのオリジナル曲にある「水平線」という言葉を借用して使ってみたり、比喩表現を使ったりといったキザな(暑苦しい)言い回しが多い。これを本気で書いていたところからも、当時の自分(たち)がいかにmakerugakachiでいることを楽しんでいたかが伝わってくる気がする。

さよならだけ嘘だった 街が眠る頃に会おう
ふたりだけに雪が降る スノードームだ
(waltz/パスピエ)

3分前のことだって 単純だった言葉さえ
胸の穴から飛び出して 水平線の彼方まで
(hymn/makerugakachi)

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Good Night, My Friends
形はないけれど価値はつけられない
Good Night, My Friends
そんな日々をまた 明日から生きていこう

メンバーの名前を歌詞に入れようと思ったとき、同時に「makerugakachi」というバンド名も入れられないか、と考えた。「負け」と「勝ち」…曲の流れを考えると、そのまま使うにはあまりに不自然だ。そこで、別の言葉に置き換えられないか?と錯誤した結果が、歌いだしの一節で「外の喧騒から離れてな〈まけ〉て(怠けて)」と歌い、それを最後のサビで「〈価値〉はつけられない」と回収する…という、もうなんともやっつけというか、それはバンド名が入っている!と言い切れるのか?というような出来になってしまった。だけど、別にこの曲ありきでバンド名つけたわけじゃないし仕方ないだろ!これで良いんだよ!と割り切って完成させた。

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こうして振り返ってみると、やはり当時のバンドの空気が如実に表れた曲だなと思うと同時に、歌詞でも遊びつつ、良いメロディーも載せられた、悪くない曲なんじゃないかとも感じる。この曲を作った当時に思い描いていた今とは離れているかもしれないけど、バンドが終わろうとしている今でも、そしておそらく終わってしばらく時間が経ったときでも、当時のバンドの姿をなんとなく思い出すには充分なんじゃないだろうか。

そして再度。「なぜこの曲を今?」という疑問は、僕らの卒業制作を手に取ってもらえると、きっと解決するはずです。お楽しみに。

午前9時 天気は曇り
カーテンを閉め切って
外の喧騒から離れて怠けて
ただ溶けていく

昨日のことも何もかも
覚えていなくたっていいじゃないか
与えられた今という時を
ただ生きていく

Good Night, My Friends
静寂という音を鳴らしてるんだ
Good Night, My Friends
六畳をライブハウスにして
今だけの音を奏でよう

午後8時 空には星
一つの灯りの下で
子供みたいな純粋さで
広大な夢地図を描いた

限られた中で僕ら
どこへ向かっているんだろう?
でもわからないまま進んでいこう
水平線を越えて

Good Night, My Friends
空想上のショーをいつか 現実にしよう
Good Night, My Friends
街が眠る頃 くだらない四重奏を

Good Night, My Friends
形はないけれど価値はつけられない
Good Night, My Friends
そんな日々をまた 明日から生きていこう

Good Night, My Friends
Good Night, My Friends
六畳で夢を見よう
(One Room Holic/makerugakachi)

(思い出したので追記)
この曲をバンドアレンジしようと部室のスタジオで小一時間作業していて、気分転換に「大きい声で歌いたいな」と思ってできたのが「追憶」(の原形となった「衝動」という曲)です。