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成り立ちの話。

一品で完結するものと複数品で完成するもの、または、これとそれ、というマッチングによって完成するもの。

たとえば、牛丼は一品完結型、定食は複数品完成型、料理とお酒のマリアージュはマッチング型(思いついたままのざっくり感)。

(牛丼が一品完結というひともいれば、味噌汁がないと完成しないってひともいるけど、それは横に置いておこう)

ごはん屋をはじめるにあたって、最初に力をいれたのは「一品完結」ならぬ「1オーダー完結型」であることだった。

居酒屋にいけば、ビールと、お通しと、あれとこれのつまみと、場合によっては〆まで、いろいろ頼むことになる。

それが楽しみのひとつでもあるし、ハードルのひとつでもある。

はじめてのお店を使う前に
「何品くらいで完結し、それにはどれくらいのお金がかかるのか」って考えることって多いんじゃないか。

たとえば、新しいレストランができたとして、
ランチで1000円のカレーをやってたら、
「ちょっと行ってみるかー」ってなりやすいけど、3000円コースのみ、ってなってたら行く日とシーンを選んでしまう。
端的に言えばそういうようなこと。

うちのお店はまずできるだけ多くの人に「行ってみるか」って思ってもらって、実際に入ってみる、となるまでが大事だった。

宣伝をするつもりはなかったし、近くの人たち(あくまで知り合いではない近所の人)がほぼ気兼ねなく入れるお店が理想だった。
それに、私も隊長も無名だった。

誰かわからない人たちが作った、何も定まっていないお店に知らないお客さんを毎日呼ぶ、
ゼロからではなかったけど、それはあくまでマイナスではないという意味の、限りなくゼロに近いとこからのスタートだってわかっていた。

いまはメイン+⚪︎⚪︎円で定食セットがつく、と書いてあるけど、以前はセット込みの価格とメニューしか書いてなかった。

⚪︎からあげ定食 ◯◯円
⚪︎メンチカツ定食 ◯◯円 といった感じだ。

これなら追加しなくても、いくらで完結できる、ということがわかる。
おすすめメニューにはそういうのしか書かなかった。

「ドリンクを頼まないといけないんじゃないか」「単品の注文じゃダメかもしれない」って思われないように、ワイングラスやお酒類を目立つところに置かないようにして、カウンターにはお皿を積み上げた。

ごはんを食べに来るお客さんは強い。
毎日飲みに来る人はいないけど、毎日食べに来る人はたくさんいる。

ひとりのお客さんも強い。
ぽっと空いたひと席に座ることができるし、人と予定を合わせなくていいから、早い時間や遅い時間、ピークタイムを外した時間に来てくれる。

結局、予約で満席になったとしても、実質1回転で終わってしまうお店っていうのは珍しい存在じゃないのだ(と思う)。

そして、お客さんが増えた段階においてより大事になるのって、間(時間という意味でも、空間という意味でも)を埋めてくれるひとりのお客さん、毎日来てくれるごはんのお客さんなんだ。

と、そんなことを話している自分は一品完結型じゃないけど....

こないだ連れていってもらったお店は、料理とワインとが素敵にぴたっとあって、
そういうお店に行ったのは久しぶりだったから、さいこーに楽しかった。

若い頃からずっと、ほとんどごはん屋さんというものに行ったことがなかったから、お客さんの「普通」の感覚がわからなくて、日々営業するなかで「あっ、こうじゃないのか」「これはこのくらいなのか」って塩梅を見ながらやってきた。

だから今でも他の店がどうなのかあまり知らないし、いまの形がよそと違うと言われても、「そうなんですか」としか言えない。

でも、この小さなお店がやっていけるくらいにお客さんがついてくれてるのなら、それはひとつの解だと言っていいのだ。

いまは「一品で終わるより、いろいろ頼みたい」ってお客さんが増えてきた。
それっていいよね、ここの料理をもっと食べてみたい、そう思ってもらえるのって。
そうじゃないとこから始めてきたから、そういうのすごく嬉しいなって思う。

そしてまたもう一方では、いつもかわらずにランチに来てくれたり、夜ごはんを食べに立ち寄ってくれる、そういうお客さんが離れないのも嬉しいなって思う。

それが、7年経っても、この先も、同じからあげを揚げ続けるパワーになるし、よりおいしくさせようって考える源にもなっている。

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