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同郷で同業の同級生の話。

仕事あと、めずらしくお店に残って(いつもはすぐ帰る) 考えごとをしたり掃除したり。

あ、と思いついて、同郷の友人に電話した。

いまはもう吸収合併でなくなってしまったけど、とある村の、ひとつしかない中学校で一緒だった男子。
(もう、男子って歳じゃないけど.....)

東京に出ていまも飲食やってるのは私と彼ともう1人くらいで、時々思い出したように電話で話したり、お店に来てくれたり、なんだかんだと長い付き合いをしてる。

「いやー、さやかさん、俺思うんですけど」
彼は分析するのが好きだ。
わたしも好きだから、話が合う。おなじ仕事だから余計にそうなる。
(同級生だけどなぜか敬語)

中学のときはほとんど話したことがなかったのに、と、思う。

以前とあるレストランで修行してたとき。
そのお店がオープンの頃は1000円ランチをやってて、カレーも出してたって話をしてくれた。
(いまはカレーもないし、もっともっと高い本格フレンチになっている)
その話を聞いて、「導入期はみんな地道に努力するもんなんだな」って勇気が湧いた記憶がある。

わたしはいろんな経験を想像で補っているけど、彼は実際に経験してきている。

どういうことかって言うと。

わたしは自分の職場を作ってしまったけど、彼は誰かの城の中に入って働くというのを何度となく繰り返している、
わたしは自分でやり方を探して試して、自分だけに通用するオペレーションを作ってきたから、他の店のことはあんまりわからないけど、彼はいろんな人の方法や、いろんな店のオペレーション、そして、実際そうであるところの存在の仕方を感じてきて、知っている。

そういうリアルな話を聞かせてくれたり、忌憚なく話すことができる相手ってなかなかいない、貴重だなって思う。

「俺はね、不器用だから包丁使いにしても何千回何万回とやってできるようにしてきたんですよ、器用な人はパッと見てすぐできちゃったりする。
でも、何千回何万回やってきた人にはかなわないんですよ、実際にやってきた経験には」

彼は同郷の友人であり、同業の仲間であり、職人だ、そして昔気質で無骨なとこがある。
(こないだの美容師の友人と似てる。)
だから信用できる。

「最近パン焼きまくってますね、発酵に興味が湧いてきたんですか?」

「いや、前から好きだったけど、発酵に手が回らない気がして手を出してなかっただけ。
最近やってみたら、お、いけるなって思って、せっかく種も起こしたし、トレーニングしてるとこ」

「そうなんですか、俺、実は、発酵好きなんですよ、こんどいい本持ってきますよ」

その人の言葉をひとつひとつ信用できる、嘘やお世辞や飾り立てる言葉がない、そういう人間が周りにいるっていうのは恵まれてる。そう思う。

お店をオープンする直前に彼と飲みに行ったことがある。
彼は下戸だから、「烏龍茶あります?」とバーテンダーに言ったら、「うちはバーだからお酒しかないよ」と返されて、なんだかかわいいカクテルを飲んでた。笑
その夜も話が弾んで、結局もう一杯頼んで、彼は酔っていた気がする。
それももう8年前くらいになるのか、と、振り返ってしまった。

早いな、とは思わない。
それなりに月日を積み重ねてきたから。

あっという間だな、とも思わない。
日々はしっかりと長かった。

ただ、それぞれ歩いてきた8年間があって、8年前もいまもおなじように話している関係がある、それだけのことである。

そうして、それだけのことがきっと、とても大事なことなんだ。

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