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なんてことない話。

先月、制作会社のひとが来て、「こういう企画を立てようと思っているんですが、取材は受けてらっしゃいますか?」と尋ねてきた。

料理も麺も食べてくれて、そのうえで話をもつてきてくれるのは良心的だなぁ、と思ったので話を聞くことにした....

概要はこうだ。
「人気の洋食店の、意外なメニュー」
洋食店の意外なメニューとして、トマトラーメンを取り上げたい、同時に、本筋である洋食の看板メニューも取り上げたい」

おおー。

オープンからこれまで、
トマトラーメン専門店、気軽なイタめし屋さんだけどラーメンも、みたいな変遷をたどってきて
ついに
「本筋が洋食で、トマトラーメンは意外な人気メニュー」って言われるようにもなったのかぁ。

お店としてはどっちがメインと言ったことはなくて、扉にも「おいしいゴハンとトマトラーメン」って書いてあるだけだけど
とりまく空気が変わっていって、それが見ていて面白い。

もちろんそれは、すこしずつお店を使うひとが入れ替わっている証であり、売れるメニューがすこしずつ移り変わっている証でもある。

(だけど、昔から来てるひとでも「ああ、これ変わらずにあるんだ」みたいなメニューがあって、だから今でも時々顔を出してくれるんだと思う。

しばらく来てなくて、1、2年後にひょっこり帰ってくるひともいる。
そのまま、また前のように通っている。

なにがそうさせたのか、どういう気分なのか、聞いてみたい....
聞かないけど........)

で、後日いくつかの質問が届いた。

⚪︎洋食の人気メニューは何で、一日どのくらい出ますか?
⚪︎ラーメンの人気メニューは何で、一日どれくらい出ますか?
⚪︎こだわりのポイントはなんですか?
⚪︎なぜこういうメニュー構成にしたのですか?
⚪︎営業中、お客様にインタビューするなど可能ですか?
......

というようなことがいくつか書かれていた。

そこでふと、考える。
きっと、人気の洋食店で、看板メニューがあって、一日何十食も出て、インタビューしたらお客さんが「おいしいです〜〜」とか「ハマります〜〜」ってコメントする。
きっとそういうのを求めてるんじゃないかな。

でも、残念なことに
⚫︎それぞれのお客さんがそれぞれに好きなメニューを持ってるから、看板メニューというほど集中する料理はないし
⚫︎ラーメンもおなじだし
⚫︎うちのお店に来るお客さんは、インタビューされるのを好まないひとが多い

なんか、ちょっと違う気がした。

求められてるのはパッと派手な部分のあるお店なのかもしれないけど(わかんないけど)
実際、うちのお店はパッとしたところのない、地味なお店なんである。

混み合う時間もあるけど、たいていはゆるりとした時間が流れている。
それは客数だけじゃなくて、ひとりふたりのひとが多く、滞在時間が短いために
誰か来ては帰り、来ては帰り、という入れ替わりがいつもあって、ずっとぎゅうぎゅうってことがないからなのだ。

そして、そういう流れ方がうちの在り方として適当だし、やりやすい。

そりゃー、看板メニューがばーんとあって
それがよく売れていて
いつもそれを求めるお客さんがたくさん来てくれる、そういうお店もいいけど。

だけど、やってる方としたらいろんなメニューを作れた方が楽しいんである。

たとえば唐揚げが人気メニューだとして、毎日何kgも唐揚げを揚げ続ける、それよりも
唐揚げつくったり、ステーキ焼いたり、煮込みをつくったり、スパイス炒めてカレーつくったりしてるほうが変化があっていい。

毎日おなじものを作る、その中にも楽しさがあるんだろうけど
季節ごとの素材を使って、目の前のお客さんと料理で会話する、そういうのの楽しさには敵わないと思う。

(蛇足だけど、看板メニューでバンバン売れるようなものって、リッチなテイストやジャンクなものが多い気がする。また食べたくなる、中毒性があるような味とか素材とか。
そういう意味でもうちは地味で素朴なものがおおくて、なんかこう、たいていの人がまた食べたくて仕方なくなる、みたいなものではない)


そんなわけで、そういうようなことをざっくり書いて返信した。そういうお店でもよければ、って✏︎
遠回しに断ったような返事になったけど、別に断ってはいない。
断ってはいないけど、期待したようなお店じゃないですよ、っていうのはそういうことになったかもしれない。

まあこの話は企画を立てる段階の話だから、それで良かったと思う。
もし、万が一、そういう企画を立てて、それが通ったとして、取材されたとして、
それを見て来てくれた方がいたとしても、期待に応えられる気がしないから。

なんか、それだけの話なんだけど。

洋食屋さんってなったよ〜〜、みたいな話。

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