ロボマスター観戦の手引き

更新:2020/03/27 17:45

※執筆者は中国語が落単ギリギリな上、まだロボマスに参加しておりません。情報が不完全だったり間違えていたりしますので、心優しき方はコメントやツイッター(@akicb_one)で遠慮なく指摘して頂けると幸いです。
※日本語ユーザの読みやすさを重視して、簡体字を日本漢字に変換している場合があります。

~追記(2020年3月27日)~
筆者はScrambleの戦略班としてRoboMasterに参加することになりました。
それと中国語の単位が取れました!(60点でしたが)

Please, Welcome RoboMaster!

中国は深圳(しんせん)で開催される、世界中の学生が最先端の技術で挑むロボット競技大会、ロボマスター。

2019年9月現在、日本におけるテレビ放送等はありません。YouTubeやYoukuに投稿されている英語や中国語の実況動画を見ることになります(これを書き始めた当時、日本語のニコ生の試合数は少ない状態でした)。聞き取りは苦手、でもロボマスを楽しみたい、という日本語ユーザのために手引きを作成しました。
あくまで中国の大会なので、ロボット解説や出場者インタビュー等は全て中国語で行われます。中国語を勉強すると何倍も楽しめますよ!

2018年8月に行われた世界大会で、日本から唯一出場した福岡連合大学「FUKUOKA NIWAKA」の試合を見ていきます。対戦相手は華北科技学院「Storms」。32チームが16チームに絞られる決勝トーナメント1回戦。
試合は2連戦が原則で、2連勝すれば勝利、1勝1敗なら引き分け、2連敗なら敗北となります。

ルールに関する詳しい説明は、FUKUOKA NIWAKAの公式ページを参照して下さい。公式YouTubeにも動画があります。

本来ロボマスターは学校ごとにチームが作られるのですが、FUKUOKA NIWAKAは様々な大学や高専から学生が集まっているため仮想の大学名で登録しています(現時点で日本に学校単位のチームはありません)。

試合動画→https://youtu.be/ZFZIQ40HriU
これに沿って解説を進めます。2画面が出来る方は、この文章と動画を同時に見ることを推奨します。

ちなみに選手目線から試合を解説した動画もあります。こちらは福岡連合大学vsバージニア工科大学の試合。併せて御覧下さい。

~オープニング~

BGM「Requiem for a Tower, Movement 4」の中、走って入場する両チーム。赤がStorms、青がFUKUOKA NIWAKAです。

司会者のトーク、出場者インタビューが行われると、画面は放送席に移ります。ニコ生では日本向けの放送席が見えましたが、これは大会主催者が作成した動画なので中国向けの放送席です。

座っている2人は実況と解説。スポーツ中継と同じですね。

試合前のセッティングタイムは3分。選手たちが準備している間、視聴者には様々な情報が提供されます。

チームのスタッツを確認

名前の下にある星は、これまでの試合成績やポイントから算出された総合評価を表します。

勝率:今シーズンの勝率
平均撃破:1試合あたりの撃破数
命中率:発射したボールが相手チームの装甲板に当たった割合

輸出能力:攻撃能力
救援能力:エンジニアのレスキュー能力
○○執行:戦術を実行する能力
穏定性:安定性
能量機○打撃能力:ボーナスを取得する能力
箱取弾丸能力:ボール(弾丸)の入った箱を取る能力

種類別にロボットのスタッツを確認

まずはヒーローから。

重量:ロボットの重さ。
平均速度:走行距離を走行時間で割った値。

この時点で右下のタイマーが3分のカウントを始めました。セッティングタイムのスタートです。

続いてエンジニア。

取箱方式:ヒーローに渡す42mm弾は箱に入っているため、どのように箱を取るかについての説明があります。
救援方式:破壊されたロボットを回復エリアまで連れていくために備えている装置の仕組みです。

ルール説明も行われますが、これは先述したNIWAKAのページに日本語版の動画があるため割愛します。

~試合直前~

各ロボットの番号とオペレータが紹介され、いよいよフィールドが映し出されます。

選手たちは、時間が足りない場合に2分と3分の技術停止を1回ずつ取ることが可能。その間タイマーは固定されます。この場合は残り30秒で技術停止を取っていた模様です。

セッティングタイムが終わると、主催者がジャッジシステム(裁判系統)の確認を行います。装甲板に弾が当たると自動的にダメージを計算して試合状況に反映する、ロボコン経験者が絶賛していた優れものです。
その間、画面には先ほど紹介していなかった歩兵やドローンに関する説明が表示されます。

問題が無ければ5秒後に試合が始まります!

~試合開始~

試合開始が宣言されました。第1局の始まりです。

試合中の画面は直感的に理解できるよう設計されていますが、初見では分かりにくいかもしれません。

上から見ていきましょう。
赤と青はチームカラーであると同時に、基地ロボットのHPゲージでもあります。試合開始直後は両者フルにありますが、攻撃されると減っていきます。
電気を模したようなマークの数字は相手に与えたダメージ数を表します。残り時間が0になった時に基地HPが両チーム同じであれば、この数字が大きい方が勝ち、となります。

中段には各ロボットのHPが表示されます。
黄色の三角に感嘆符が付いたマークは、禁止行為(衝突など)を行ったと主審に判断され、ペナルティとしてチーム全員の視野が数秒間真っ白になっている状態を示します。
プラスマークは、回復エリアでHPを復活させている状態を示します。

下段にはオペレータの姿(時には一人称カメラ)、中央に各ロボットの位置が表示されます。
ちなみに、選手たちには位置情報が見えていません。自分以外の位置を画面で確認することは出来ないため、オペレータールームの中で会話するか、ドローンから教えてもらうしか無いのです。

~試合運び~

※この対戦は2018年のルールに沿って行われています。ルールは毎年改定されますので、ご注意下さい。
※中国語では、赤を「紅」、青を「藍」と書きます。

両チーム、始動エリアから動き出します。まずはヒーローが「資源島」へ42mm弾を取りに行きます。通常の17mm弾と比べて相手に与えるダメージが10倍になる重要な資源です。資源島は上段と下段に分かれていて、上段の方に多く置いてあります。しかし段差を登る必要があり、その隙を突いて敵陣の下段ボールを奪うのも作戦のひとつです。

時々、ロボットが旋回していることがあります。これは「腰振り」と言われる動作で、動き続けることにより装甲板にボールが当たりにくくするために行われます。

守備を固める青チーム、対して赤チームは前線に主力を投入して積極的に攻め込みます。蹴散らされる青の守備陣……。

青の1番歩兵が、少し高い場所に上りました。これはバンカーです。
ジャッジシステムには各ロボットの砲塔にかかる熱量を計測する機能があります。熱量は弾を打つと熱量が上がり、やめると下がり、許容上限を超えると自分にダメージが出ます。
バンカーは砲塔の冷却速度が1.5倍になる場所です。

赤チーム、弾が切れてきました。撤収して補給したいところです。しかし、そうさせるわけにはいかない青チームは攻撃力の高いヒーローを落とすべく全員で囲い込み攻撃。一旦は抜け出されるも歩兵3台で追いかける青チーム、しかし赤のヒーローを逃してしまいます。
ちなみに弾切れを知るのは「射出指示を出しても弾が出なくなった時」だそうです。

押し込んだ形になった青チーム、敵陣に戦力を集めて守備の突破を狙います。
一方で赤チーム、全員で守る布陣を敷きます。かなりHPが削れてしまったヒーローを回復エリアに置き、周りにまだHPが残っている歩兵を配置しています。

ここで弾切れを起こした青チームが撤収、赤が形勢を逆転。ヒーローの補給も完了し、再び攻撃を仕掛けます。

赤の2番と4番、ヒーローと歩兵が青の哨兵を倒しにかかりました。カメラの視界に入った敵に照準を定める哨兵は、逃げるたびに目標が変わって文字通り右往左往。一方、逃さず猛射する赤の自動照準。あっという間に青の哨兵が撃破されました。これを主催者のジャッジシステムが検知、自動で基地のガードを開きます(藍方基地天○解除)。

その少し前、画面にFIRST BLOOD(ファーストブラッド)と表示されました。これはロボットの種類に関係なく試合で行われた初めての撃破、という意味であり、他の競技で言うところの「先制点」と同じような意味です(点が入るわけではありませんが)。メリットとしては、
・相手に対して早くアドバンテージを持つことで試合を有利に進められる
・相手の哨兵ロボットが40秒間停止する
・相手の基地の無敵状態が解除される(ガードが開かなくても装甲板に当てることでHPを削れるようになる。ただし装甲板は基地の頂上にあるため、正確に当てるのは難しい)

守りが薄くなった青チーム、時間は残り半分。目の前にある敵機と粘り強く戦い、エンジニアが破壊された1番を救出しますが、ひとつ隙がありました。

オペレータは、ロボットを1人称視点で操縦します。つまりドローンを飛ばして空から教えて貰わない限りはフィールド全体が見えません。青チームは全員、赤の1番が基地の前まで来ていることを見逃していたのです。
HPが減り始めたことで気付き、青チームは基地前にロボットを集めます。赤チームは大チャンス、ヒーローを送って2台で攻撃します。青チームのエンジニアが体を張って防御。さて、結果は?

勝者、Storms。残り12秒でFUKUOKA NIWAKAの基地HPを0にして、自チームの基地HPを1ポイントも削らせなかった完封勝利です。

選手は直ちに第2局へ向けた準備を始めます。

~試合後~

対戦データが表示されます。上から順に、残り基地HP、与ダメージ数、敵機撃破数、発射した弾の数、回復回数です。

ハイライトが流れます。実況と解説が講評を加えているのでしょう。

各試合ごとに発表されるMVPは、赤ヒーローが受賞しました。操作手(オペレータ)と設計代表者の姿も映し出されています。
??:
助攻:
基地妨害:
機置人妨害:
〇弾(大):42mm弾の発射個数?
〇弾(小):17mm弾の発射個数?
取箱:42mm弾の入った箱を取った個数

主催者による技術分析も行われます。ロボマスターの世界には、技術をオープンソースで共有する文化があるのです。

~第2局~

この試合に勝たなければ敗北が決まる青チーム。

両チームのヒーローは、資源島下段で42mm弾を補給して速攻を仕掛ける作戦を取りました。
対してエンジニア、青は大きな体を生かして赤のヒーローを妨害しています。そして赤は、青チームの資源島、しかも上段の42mm弾を奪ったのです。資源島で姿を隠し、動くべき時を窺います。

何体ものロボットが密集して乱打戦状態になりました。弾は衝撃を与えると発光する構造になっており、空中を緑の線が飛び交います。

ここで手書きの数字が表示されました。これはボーナスを獲得するチャンスで、1から9の順に弾を当てると攻撃力(=敵が受けるダメージ)が1.5倍になります。
しかし目の前にいた赤の歩兵たちは一方的に42mm弾を撃ち込まれるリスクを回避するため、あくまで青のヒーローと戦いました。

弾を撃ち尽くしたので各自退却、赤のヒーローはエンジニアの元へ。そう、青からスチールした42mm弾。

青の4番歩兵、HPが生存ギリギリまで減ってしまいました。回復エリアへ急ぎます。しかし赤が追撃。青の4番は撃破されてしまいました。FIRST BLOODを獲得したのは赤チームです。

青のピンチは続きます。哨兵が2台体制で攻められ、42mm弾を連続で当てられます。これは痛い。
しかし今度は応戦に成功、一旦赤を基地から遠ざけました。

そうしているうちに、今度は青ヒーローのHPが危険な状態に。箱を持ち上げる腕を畳み忘れてトンネルを通れないというミスで赤ヒーローを振り切ることは出来ませんでしたが、何とか回復エリアまで辿り着きました。これ以上HPが消耗することを防ぐため、青エンジニアが間に入って防戦。エンジニアは最大HPが他に比べて大きいので、防弾壁として使うことも出来るのです。

完全に主導権を握った赤チーム、再び青哨兵を攻めます。先ほどの攻防で半分に減ってしまったHPを守り抜きたい青チーム、しかし撃破されてしまいました。

ということは……そう、基地のガードが解除されてしまうのです。青チーム絶体絶命。

とうとう赤に基地を囲まれ、邪魔することも出来ない位置を取られました。なすすべなし。

Stormsが2連勝。喜んで飛び出していくピットクルー(修理要員)が映り、動画は終わります。

この後、両チームのキャプテンが対戦結果にサインすることで試合が正式に成立します。

~おわりに~

この大会が行われた2018年および2019年までは、日本にロボマスターのチームはFUKUOKA NIWAKAしかありませんでした。しかし2020年度(2019年世界大会終了後~2020年世界大会)からは全国にチームが誕生しており、日本地区戦(日本代表決定戦)も実施されます。

興味が湧いた方、一緒に戦いたくなった方、支援を希望される方、お気軽に各チームへ御連絡ください。最高峰の技術を体験しましょう。

このノートに頂いたサポートは、全額(振込手数料等を除く)がロボマスター発展のために使用されます。

それでは、またどこかで。Please, Welcome RoboMaster!

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