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渋谷 瑞兆のカツ丼を食べたことはあるかい


カナダに来て大体2ヶ月程度。特に不自由もなく日々を過ごせている。

僕が出国前に気にしていたこと。

「カナダ滞在中はケンコバさんとジュニアさんでやっている『にけつッ!!』の録画はどうしよう...」

「Switchはドックごと持っていくか単体のみで持っていくか...」

そんなことはどうでもよくて...(『にけつッ!!』についてはどうでもよくない)。

何より気にしていたのが「飯」である。

めし。メシ。MESHI...。

僕は海外飯で苦い思い出がある。大学生時代、アメリカのウィスコンシン州にある大学に7ヶ月の中期留学に出ていたのだが、くる日もくる日も飯がハンバーガーだったのである。

場所が田舎だったということも問題だったが、食の選択肢が存在しなかったのである。

最初は「アメリカ〜〜〜」って感じでよかった。もって3日だった。

何より悲しく感じたのは、擦り傷や切り傷でできた傷口がビタミン不足で全く治らないのである。唇は切れたら切れっぱなし。血、出っ放し。

同じ北米圏ということもあり、2度とあの経験はしたくないと怯えていたが、バンクーバーは全くそんなことは無かった。

移民国家ということもあり、至る所にアジアンスーパーマーケットやジャパニーズレストランが見られる。僕自身も毎日豆腐に鰹節とネギをかけて、生姜を添えた後にポン酢を垂らして頂いている。

あの頃に比べたらどれだけ幸せな飯を食えているか....。もちろん傷も治るし血も止まる(そもそもまだ怪我してない)。

しかし。

そんな僕にも恋しくてたまらない日本の味が一つ存在する。

日本は東京、渋谷区の神泉駅近くに位置するカツ丼屋「瑞兆」のカツ丼である。

僕が瑞兆のカツ丼に出会ったのはおよそ4年前。

東京に引っ越して間も無かったころ、東京のスーパーグルメ文化人に「これ食っとけって飯ある?」と尋ねた際、帰ってきた答えが「瑞兆。味は保証するから、実際に行って確かめて」だった。

店内はぎちぎちのカウンターに一度に7〜8人程度が座れると言ったぐらいの広さ。

食べ物のメニューはスーパーシンプルにカツ丼のみ。値段は一杯1,000円ぽっきり。

僕は聞いていた情報通り、1,000円だけ握り締めて店内に入った。

出てきたのは丼の蓋からもうはみ出んだろぐらいのお肉の載ったカツ丼である。「出てる出てる〜〜」って言いそうになる。

よくある卵と一緒に煮込んで少ししなしなになったカツとは違い、サクサクの揚げたての状態のカツをドカンと載せるスタイル。先ほど目の前で揚がったばかりのカツの衣と甘辛いタレの相性は抜群にいい。

味については言うまでも無い。本当に生きている間にこのカツ丼を食べれてよかった。この時代に生まれたことをここまでありがたく思うことも滅多に無い。ありがたやありがたや...。

この衝撃は今までの僕の食体験をぶち壊すレベルで凄かった。それからはと言うものの、お昼頃渋谷近辺で用事がある際は何度も何度も通った。時には謎の黒人集団に挟まれて泣きそうになったり、急な大雨でずぶ濡れになりながら並んだり...。

僕は自分の舌に自信がないので、あまり友達にオススメのお食事処を紹介しないけど、瑞兆については覚えているだけでも20人近くに紹介したし一緒に行った。三重県の実家の家族が東京に遊びに来た際ももれなく食べさせた。本当に、絶対に、誰に食べてもらっても間違いない味だと思う。


とまあ、こんな感じ。書いてる途中で「僕、しばらく食えないんだよなあ...」って改めて考えてたらすごく寂しくなってきた。

家族も友達もそんなに恋しくなってないけど、瑞兆は本当に恋しい。

「最後の晩餐は?」と聞かれたら、間違いなくこれ。

「あ〜死ぬ死ぬ、今死ぬ」ってなったらウーバーイーツに届けてもらう(多分やってないだろうけど)。

ごたごた書いていてもしょうがないし、百聞は一見にしかず。

是非1,000円だけ握り締めて行ってみて。



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