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騎士アレックスとの出会い、冒険の始まり

1990年。当時5歳の僕は、札幌のとある自宅マンションでただ、隙を狙っていた。母親の目を盗んで、母親の財布からありったけの10円玉をポケットに入れる。

その前日、僕は秘密の場所を見つけていた。
それは近所のおもちゃ屋の一番奥にある不思議なドアの先にある。直感的に入ってはいけない気がしていたが、好奇心を抑えきれず、ドキドキしながら開けてみた。そこには、まだ表には出されていないカード自販機「カードダス」の新台が置かれていた。

※カードダスとは
当時バンダイが発売していた自動販売機で買えるコレクションカードシリーズで、機動戦士ガンダムやドラゴンボールなどのカードが展開されていた。初期のものは10円玉を2枚入れハンドルを回すことで1枚カードが排出される仕様となっていた。

当時、3つ年上の兄がこのカードダスを集めており、その存在は知っていた。なかでもSDガンダム外伝シリーズのナイトガンダムのカードは、一際かっこいいイラストとプリズムの光が輝いていたのを今でも覚えている。

その新作が、今目の前にある・・・!

僕は考えていた。
必要なのは10円玉が2枚以上と、行動の素早さ。翌日、僕の冒険は決行されることとなる。
 
母親の財布から入手した10円玉を握りしめ、こっそりとあのドアを開けた。ついに僕は「SDガンダム外伝Ⅳ 光の騎士」のカードダスを回した。

そこで登場したのは・・・
深く、青く輝くプリズムの光に包まれた「騎士アレックス」だった。
アルガス王国の騎士団長である彼の目は、まるで僕の勇気を讃えるかのように真っ直ぐと、鋭くこちらをみていた。

思わぬ喜びのドラマに、ドキドキワクワクが止まらなかった。
まるで劇場版ドラえもんを体験したような感覚だ。非日常的な世界へのドアを開き、そこでかけがえのない仲間と出会えたような、そしてそれが現実に起こったような清々しさ。胸がいっぱいだった。

もう一度、その作戦を実行したときには、親にもお店にもバレてしまい、怒られてしまったことを覚えている。(本当にごめんなさい。)
 
ただ僕には、騎士アレックスの輝きが目と心に焼きついて離れなかった。
そしてそのカードは今も、この手の中にある。

僕以外のカードが好きな人は、どんなきっかけで好きになったろうか?

スポーツ選手のカード、アニメ作品のカード、カードゲーム用のカード、芸能人のカード、ダムのカードやマンホールのカード、世の中にはあらゆるカードが存在する。
トレカは今、たくさんの歴史を刻み、世界で流通し、社会との関わり方も大きく変わってきている。

コレクションするということ、そしてその価値のつき方、インターネットの普及やフリマアプリによる流通の変化、カードを通してつながる人のコミュニケーションの在り方。あの日憧れた”カード”には、まだまだ僕の知らない可能性が眠っているのだと思う。僕はトレカの存在が、多くの人々にとって豊かにするものだと信じている。そしてそれをしっかり論ずるために必要なものはなんだろうか?と思うようになった。

僕はこのトレカが持つ可能性を"コミュニケーションデザイン"の研究に活かせると考え、2024年の春に京都芸術大学 大学院 コミュニケーションデザイン領域への進学を決めた。入試に向けた準備を進めている。

あの日の冒険は形を変えながら、現在進行形で続くこととなる。
今度はちゃんと、自分の財布で!

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