Stay KID, Be ADULT
友人の誕生日会に招待された。
なんせ日陰に生きて22年、シダ植物の擬人化とまで揶揄された私にとってはBirthday Party💃✨は未知の世界であり、非常に緊張している。
参加に際して何か必要なものがあるか尋ねた所、
「じゃあなんか文章書いてきて!!」
とのこと。どっかで聞いたなその台詞。これだな多分。
スタートから暗雲が立ち込めている気がしなくもないが、親友の親友を紹介して頂けるというこの上なく光栄な機会を恵んで貰ったのだから、崇高で実りあるメッセージを送りたいものだ。
彼女とは高校からの付き合いである。もう出会って8年目に差し掛かろうとしていることに驚きを隠せない。
出席番号順で前後になり、部活動紹介か何かのタイミングで格闘技好きだと判明してから仲良くなった気がする。岡田准一とか、トム・クルーズが好きだとはしゃぐ彼女と私は、案の定同じ格闘技系の部活に入った。
学業はといえば、おそらくギリギリで入学できたものだから、当然のことながら私の成績は中学までの黄金時代から一気に氷河期に突入し困窮を極めていた。
一方で前に座る彼女は熱心に授業を聞き、どの教科においても成績優秀で、「うわーすげえこの子なんでもできるやん」と感心した。話をしていても何事に対しても深く考える彼女の話や問いかけは呑気な私には到底思いつかないもので、はっとさせられることが多かった。
サボり魔の私と完璧主義の彼女。どこで折り合いがついたのか分からないが、徐々に彼女の天然さが公になるにつれ「もしかして真面目なだけじゃなくて面白いタイプ…?」と印象が変わったことは確かだ。
高校2年の時、二人して足に大怪我を負った。部活どころか歩くのに精一杯で、どちらかの松葉杖が常に壁に立てかけてあった。当時行われた避難訓練ではしゃがむことのできない二人だけ取り残され、修学旅行の部屋が一緒になると「怪我人同士で大丈夫なんか」「あれが老老介護か」とヒソヒソされた。
そういや台湾で逆セクハラかましてたな。
土林市場に売ってあった、いわゆる男性の「アレ」を模した飴を見て「これって何なん?」って真剣に問い詰めたそうだ。無知を責めるつもりは全くないが、あまりの純粋さに衝撃を受けた。
年頃の男子にそんな仕打ちするんじゃないよ全く。
部屋で見た映画にトム・クルーズが映った瞬間にカメラを嬉々として構えた彼女の姿もよく覚えている。「ツーショット撮って!」と頼まれたが敢えなく機を逃したのがこちら。
残念ながら高3ではクラスは離れたが、今なお仲良くしてもらっている。
先日は6年前から約束していたミッション・インポッシブルの最新作を観に行った。イーサン・ハントの色気たるや。トップガンを観に行った時も勿論横には彼女がいたし、きっとこれからも一緒に彼を拝みに行くであろう。
この一年、彼女は海外で研鑽を積み、更に思慮深くなっていた。
帰ってきて、向こうの話をしてくれる彼女は誰よりも輝いていて、慢心することなく更に新しいことに挑戦する姿勢に尊敬の念を抱いている。
しかしそんな彼女も今、就職、安定、将来、キャリア等々、大人と社会から放たれる「圧」に苦しんでいる。
なんだってんだ全くよ。
やりたいことやらせてくれよな。別にお前に迷惑かけるわけじゃないしさ。
そこで「いつまで子供みたいに」って達観してろよ、自分が夢追うことを諦めた苛立ちをこっちにぶつけんな。
なんて言ってみたところで、社会は聞く耳すら持ってくれない。
こんなにも色んな経験を自ら積み重ねて「自分」と向き合ってきた彼女が、
「周りがやることに合わせる」行動をとった大人の作った社会に無理やり嵌め込まれようとしていることに納得がいかない。
この先、自分の思いと社会の仕組みが相入れないことも出てくると思う。
本音と建前、なんて気持ち悪い文化に翻弄され、自分を殺した方が楽なんじゃないかと思うこともきっとある。
自分が正しいと思うことと、周りの正解は違うのかもしれない。
力の入れ方とか、匙加減を間違えることもあるかもしれない。
でも大丈夫。
匙加減間違えても後で調整すればなんとでもなるから。
小学生になる前くらいか。「子供の科学」という雑誌が大好きでずっと読んでいたことがあるだが、その雑誌には毎回付録がついていた。ある時の付録が、「オバケエビを育てようキット」的なやつで、オバケエビの乾燥卵が小さな容器に入っていた。
「水槽に卵を一振りすると、1〜2週間でオバケエビが孵化します」って書いてあったと思う。
しかし、匙加減を間違えた幼き私は、垂直に入れ物を傾け、
なかやまきんに君の如く全てを水槽にぶちまけた。
イッツ・マイ・ライフの結果、オバケエビアウトブレイクを引き起こし、両親から人の親とは思えないほどの罵詈雑言で怒られたのだが、ペットボトルに小分けにして事なきを得た。
そう、だから、その、、後で調整すればなんとでもなるから!!入れすぎ注意って書いてない方が悪いからね!うん。大丈夫だから。こんなんでもギリ生きてるから。もうすぐ無職になろうとしてる奴に大丈夫って言われても、とか思うかもしれないけど、大丈夫。
そう断言できるのは、長く彼女の努力を横で見てきた自負があるからだ。努力の研鑽は必ず糧となる。それは、彼女自身が一番理解している筈だ。
頑張れなんて言わなくても、勝手に頑張ってくるし、無理するなよ、程々にな、なんて言ったところで聞いちゃくれないのはもう分かりきっている。
だから後ろでBGMでも流しておくよ。
曲は勿論、
It’s My Life.
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