性別移行を始めたり自認する性別の恰好をして出勤したり したところ、人目に付かない部署に異動させられそうです

2018年のGID(性同一性障害)学会で販売されたGID全国交流会誌2018「トランスジェンダー としごと」特集号が、おそらくPDFの容量が大きいせいか学会サーバーから消えていました。

ということで、PDFをこちらに再掲しましたが、コンテンツの中身もベタ打ちでも再掲していきます。

*こちらの交流会誌はTRanSとして作成したものではなく、TRanSメンバーらが関わった有志の集まりによって発行されました。

Q4. 性別移行を始めたり自認する性別の恰好をして出勤したりしたところ、人目に付かない部署に異動させられそうです。

<回答>弁護士 宮井 麻由子

① 会社との約束を確認しましょう

採用のときなどに、会社と社員との間で職種や部署を限定する約束をしている場合、よほど特殊な職種や部署でなければ、社員が性別移行を始めたり、戸籍上の性別・生物学的な性別とは異なる性別の恰好で出勤したりしても、会社はこの約束を守る必要があります。就業規則や労働協約に「配置転換を命じることがある。この場合には拒むことはできない」などと書かれていても、会社と社員との個別の約束の方が優先されるので、会社は約束どおりにする必要があります。
異動を命じられてしまっても、会社に、職種や部署を限定する約束があったことを伝えて、撤回してもらうことができるはずです。会社はトランスジェンダーに慣れていなくて心配しすぎているだけということも結構あるようですので、可能であればじっくり話し合ってみるのも良いと思います。

② 会社は社員に、どんな異動でもさせてよいわけではありません

職種や部署を限定する約束がない場合でも、会社は社員に、どんな異動でもさせてよいわけではありません。会社は取引先や顧客、他の社員が「違和感や嫌悪感」を抱くから、人目に付かないところに居てもらう必要がある、と言いたいのかもしれません。
しかし、このような「違和感や嫌悪感」は、一過性のものであり、性の多様性への理解が進めば、次第に消えていくのかもしれません。(日本の裁判でも会社内の「違和感や嫌悪感」はトランスジェンダーへの理解を図れば時とともに緩和されていく可能性があるということを述べたものがあります。今から15年以上も前の裁判です。)
トランスジェンダーの社員を外見の変化だけを理由に人目に付かない場所で働かせるという対応は、自尊心を傷つけたり社内での孤立感を与えたりして、その社員にとって、毎日の出勤を精神的にとても辛いものにしてしまうことがあります。そのように考えると、外見の変化だけを理由に人目に付かない部署へ異動させるような配置転換は、双方のメリット・デメリットがアンバランスで、法律的にかなり問題があるように思います。

③ 嫌がらせ目的の場合には従う必要はありません

いずれのケースでも、異動させる目的が嫌がらせや、退職に追い込むことである場合、そんな辞令は無効ですから従う必要はありません。ただし、そんな不誠実なことをしてくる会社であれば、慎重に対応した方が良いでしょうから、弁護士などの専門家に相談することをすすめます。

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