冬の伊勢で孤独にグルメしてきた話
「2万円あげるから好きなところに行きなさい」というありがたいお言葉を編集長から仰せつかったので、伊勢神宮に行ってきました。東日本出身の私はこれまで、伊勢神宮どころか三重県の地をまともに歩いたこともなかったのです(小声)
弊社・トライシージャパンでは、Go To トラベルキャンペーンなどの実態を調査する目的で、全勤務者を対象に、今年も2万円を上限とした国内旅行に対して補助を行いました。本記事はレポートとして掲載するものです。なお本旅行は、緊急事態宣言期間中に実施したものではありません。
1日目 伊勢神宮を巡り、三重の地物を食らう
新幹線でびゅーんと名古屋入りし、話は近鉄名古屋駅からスタート。本来なら「しまかぜ」に乗りたかったのですが、思い立ったのが直前だったので残念ながらすでに満席でした。というわけで適当な時間のアーバンライナーに乗車。せっかくなのでデラックス席に乗りましょう。
直前の仕事で一緒だった鉄道写真家・Mさんに伊勢に行く話をしたところ、「近鉄で行くならぜひ松阪で『あら竹』の弁当を!」とのリコメンドをいただき、その場で列車積み込みの電話予約までしていただきました(その節はありがとうございました)。
松阪駅停車中にホームで受け取り。注文した(してもらった)のは、黒毛和牛の内モモ肉を使った「元祖特撰牛肉弁当」(1500円)です。一般的な駅弁の2倍くらいはありそうな大きな箱。お取り寄せでは黒毛和牛のすき焼きがご飯の上に乗った「松阪名物黒毛和牛モー太郎弁当」が一番人気だそうですが、Mさん曰く「三重県産コシヒカリのご飯の美味しさを堪能するなら特撰牛肉弁当がいいですよ」とのこと。
蓋を開くとこのようなビジュアル。厚めの牛肉が美味しそうです。
どれどれ、まずはこの三重の地で育まれた白米をそのまま一口いただいてコシヒカリの旨味を味わい、続いて昭和34年の発売から変わらぬ味という秘伝のタレで仕込んだ黒毛和牛の内モモ肉を一口――と洒落込みたいところなのですが、松阪から下車予定の宇治山田までは15分程度。とっとと食べないと間に合いません。
最後は残ったタレをご飯に絡めて完食。食べるのが人一倍遅い私にとっては時間との戦いでもありましたが、美味しくいただきました。
さて、宇治山田駅からは腹ごなしも兼ねて、伊勢市駅まで10分ほど歩いて戻ります。荷物を預けたかったのですが、コインロッカーは満員御礼でした。旅行流動が徐々に回復しているようで何よりです。重い荷物を携えて外宮参道をてくてく。
10分ほど歩いて外宮に着きました。旅行経験豊富な読者諸氏には説明するまでもないとは思いますが、伊勢神宮には全部で125の宮社があり、主祭神の皇大神宮(内宮)から豊受大神宮(外宮)までは5キロほど離れています。「外宮から内宮の順にお参りするのが昔からのならわしです」(伊勢神宮公式サイト)とのことなので仰せのままに。
外宮を一通り参拝して、続いて内宮へ。路線バスで20分ほど。地方ではバスの本数が心配だったりしますが、一大観光地なので概ね10分に1本は出ています。
域内を流れる五十鈴川。なぜか皆さん挙って川遊びをしている……と思ったら、ここは手水舎と同じようにお清めができる御手洗場とのこと。無知無学を恥じるべし。
12月上旬の土曜の昼下がり。これだけ人出があるのに外国人が一人も見当たらないのはやはり違和感もあります。
紅葉が綺麗です。彩度を上げすぎると五稜郭ゼン○ン事件になってしまうのでほどほどに。正宮、荒祭宮、風日祈宮と一通り参拝し、お神札を受けて内宮を後に。
おかげ横丁もご覧の盛況です。
冬の伊勢と言えば「赤福ぜんざい」ですが、内宮周辺の店舗はどこも長蛇の列(写真は本店)。外宮前の店舗は比較的空いているはずなのでバスで戻りましょう。内宮から宇治山田方面に向かうバスは総武線もびっくりのすし詰め状態でした。
予想通り、外宮前店では混雑もなくすぐに入れました。
「赤福ぜんざい」(530円)。歩き回って疲れた身体に心地好い甘さと温かさ。香ばしい焼餅で小腹が適度に満たされたところで、一旦宿泊地へ。
ホテルに大浴場があるとQOHL(Quality of Hotel Life)が3倍増です(当社比)。「画竜点睛を欠く」は中国の故事成語ですが、かつて日本には類義語として「旅籠に湯を欠く」という表現があったと言われています(いません)。
夕食は宇治山田駅至近の「大喜」へ。こちらも前出のMさんにおすすめしていただいたお店です。まずは特撰黒松剣菱を一献。そこは地酒じゃないんかい! というツッコミが入りそうですが、剣菱はこちらの店の看板酒です(もちろん地酒も揃っています)。店の初代当主が赤穂義士の忠孝の精神に惚れ込み、赤穂四十七士が討ち入り前に酌み交わしたと言われるこの酒を看板酒にしたとのこと。
伊勢産さめのたれ。字面だけ見て興味本位で頼んでみたところ、文字通り塩干ししたサメの肉でした。「たれ」は吊るし干しの垂れている様子が由来とのこと。肉厚で噛むほどうまい。お銚子をもう一本。
鰆焼霜造り(鳥羽産)、生牡蠣(鳥羽産)、あおさの天ぷら(伊勢産)。説明不要ですね。お銚子をもう一本。
車海老も頼んでしまいましょう(僥倖)。
最後に握りと巻物をさくっとつまみ、伊勢海老(志摩産)の赤出汁で〆。とてもよいお店でした。
2日目 逆打ちの二見浦、はじめましての伊勢うどん
参宮線・二見浦駅からおはようございます。昨日は伊勢神宮に行ってきましたが、古来の風習では参拝前に二見浦で禊として沐浴をしていたそう。そして現代では、沐浴の代わりに二見興玉神社で穢れを祓うようです。順序が完全に逆になってしまいましたが、とにかく行ってみましょう。
ちなみに地名としての二見浦は「ふたみがうら」ですが、JRの駅は「ふたみのうら」。混同しないように注意。
二見興玉神社への夫婦岩表参道には、古くから参拝客を迎えた旅館が立ち並んでいます。
二見興玉神社を参拝。こちらは有名な夫婦岩。本居宣長は「変わらじな 波は越ゆとも二見潟 妹背の岩のかたき契りは」という歌を詠んでいます。
近くに何やら厳かな和風建築がありました。「賓日館」という名前から迎賓のための施設であることは想像できますが、見学できるようなので行ってみましょう。入館料310円の支払いにはPayPayが使えました。
神宮に参拝する貴賓の休憩・宿泊施設として明治20年に竣工した賓日館。書院造の大広間はなんと120畳。折上格天井をシャンデリアが華やかに飾っています。
ウエディングフォトを撮っている方々はいましたが、日曜日にもかかわらず見学客はまばらで館内を暫し独占。何故みんな見に来ないの……?「せっかく伊勢に来たんやで、『賓日館』見てってーさ!」とでも言いたくなります。
昼時ということで宇治山田に戻ってきました。昨日たまたま通ったときに目に留まった「伊勢うどん ちとせ」の暖簾をくぐります。
味わい深い外観と同様、店内も町の食堂らしい情緒がぷんぷん。「ここはシンプルに月見うどんか、うーん、みそ煮込みうどんも捨てがたい」などと井之頭五郎よろしく独り言ちつつ、肉うどん(880円)を注文です。
真っ黒なスープ、もといタレに浸かった衝撃のビジュアルで登場。よく混ぜてしっかりタレを絡めたうどんを啜ると、見た目に反してあっさりした味わい。超低反発の舌触りが新鮮です。肉もたっぷりで満足感十分でした。卵も入れればよかったな。
駅売店で買った赤福を携え、伊勢志摩ライナーで帰ります。今回はそこそこ駆け足の行程になってしまったので、再訪の際は鳥羽・志摩も含めて時間をかけて巡りたいところ。海外に行けない時期はもうしばらく続きそうですが、その間に国内をじっくり見ておきたいですね。
※その後名古屋でも爆食い・爆飲み行脚をしてしっかり経済貢献(散財)しました。
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