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マーラー「交響曲第5番」と闘い

マーラーの「交響曲第5番」は、ドラマチックで人気の高い交響曲である。

この楽曲のテーマは、
暗・闘争→明・勝利
という典型的なものである。

今回のnoteでは、私とこの曲についてのエピソードを語っていきたい。


マーラー「交響曲第5番」

※この動画について
指揮:アンドレス・オロスコ=エストラーダ
演奏:Hr交響楽団

私のおすすめの音源は下記である。
指揮:ゲオルク・ショルティ
演奏:シカゴ交響楽団

各楽章ごとの内容


第一楽章

トランペットのソロからこの交響曲は始まる。
暗い憂鬱な葬送行進曲が続く。
途中テンポが速くなり、ドラマチックな展開が始まる。
最後はトランペットのソロとともに、ピチカートで終わる。

第二楽章

激しい波に向かっていくような戦いの音楽で始まる。
その後しばらくゆったりとした音楽が流れるが、また激しい戦いが再び始まる。
金管の天空へ連れ出されるようなファンファーレが鳴らされる。
そして、また再び激しい音楽が鳴るがすぐに落ちつき、静かに終わる。

第二楽章はマーラーの妻アルマによると、「彼の自我と世界との戦い」だという。
マーラーの仕事のメインは指揮者であった。
100人近くの団員を自分の求める芸術の方向へ動かしていくというのは、すなわち、自分のエゴをそのまま100人の前へ突き出していくことである。
それは時に軋轢を生む。

完璧主義者のマーラーは特にオケの団員と問題が起きることが多く、またユダヤ人という背景もあり、周囲の批判に晒されていた。

第三楽章

3拍子の明るい音楽が始まる。
舞踏は激しさを増していくが、落ち着きを取り戻す。
ピチカートの素朴な音楽が始まり、穏やかな自然を感じさせる。
再び舞踏が始まり、激しさを増す。
闘争を続けていた第1,2楽章とは異なる喜びに満ちた楽章である。
マーラーが妻となるアルマと夜会で出会ったときの心情を描いているのだろうか。

第四楽章

安らぎと切なさを感じさせる耽美的な音楽。
婚約したアルマの美しさへの憧れを描いたようにも感じる。

第五楽章

青空の下、草原を散歩するような牧歌的な音楽が進行する。
アルマとの明るく楽しい新婚生活の描写のようにも思える。
力強さと朗らかさを感じさせる。
最後に音楽は上昇し、第二楽章のファンファーレが再現され、その全貌を表す。確かに希望を掴み取った音楽はそのまま、なだれ込むようにして華麗に終わる。

私とこの曲について

私はある学生団体の副代表を現在勤めている。学生団体で企画を起こしたり議論したりする中で必要なのは、自分の考えを述べた文章を大勢の前で提示したり、直接前で話す事である。

もともとシャイで口下手な私はそのような行為をしようとする度に、葛藤が生じる。

「別に頑張らない選択もできるわけだ、でもそれは自分が許せない。」
「私の独りよがりかもしれないけど、これをしなきゃ団体として成長がない。」

そんな自分の思いを貫くことは、自分のエゴをそのまま大勢の中に突き出す行為である。
精神が打ち付けられるような感覚がする。
それでもそんな弱い自分と闘って打ち勝とうと、もがいている。


交響曲第5番はそんな苦しい時に聴く。
マーラーの楽曲の一つの特徴は、この曲の第2楽章のような「闘い」だと思う。

この「闘い」は、周囲との闘いなのかもしれないし、自己との闘いなのかもしれないが、どちらにせよ私も一人の闘う人間として、自分の求める芸術を勝ち取ることを目指し闘い続けた彼の楽曲に共感し、勇気をもらっている。

この交響曲の第5楽章、終末には勝利のフィナーレが待っている。

それは私の希望である。

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