見出し画像

天皇賞(春) 2020【反省】

天皇賞 結果

近年の長距離戦は中盤に大きく緩むことが多いが、今年はテンが遅く、1周目スタンド前で⑧キセキが動いたことで、後半に向けてラップが速くなるラップ構成。
ただ、かなり縦長の展開でほぼスローと見てよく、4角である程度の位置にいなければ厳しかったことは例年通り。テンが遅かったことでハミを噛んでしまう馬も多かったので、そのロスに耐え得るスタミナや高速馬場への対応力も問われたように思う。

1着⑭フィエールマン

前走の有馬記念より8kg増えた490kgは過去最高であったが太くは見えず、むしろ最高のデキにさえ映った。
レースはこの馬を知り尽くしているルメール騎手とあって、他馬が動いた向正面でも坂の下りでも動じずに持ち味の瞬発力を引き出す競馬に徹した。

メンバー唯一の34秒台を記録した最速上がりは次位より0秒5も速く、1頭だけ能力が違ったことも勝因ではあるが、いくら当日差しが決まっていたとはいえ、残り1000m地点で20馬身近くも離れていたことを考えれば焦ってもおかしくない中で、冷静な判断を下せたルメール騎手の存在も大きかった。

今回はハナ差での勝利、昨年はクビ差、菊花賞もまたハナ差。馬自身の勝負根性もさることながら、ルメール騎手の首の上げ下げに対する技術、勝負強さをあらためて見せつけた。
「ルメール」の名前でオッズが下がってしまうため、敬遠してしまうことが多いが、やはり勝たせる騎手ということはこれ以上ない強みであり、今回無理やり本命から外したことを恥じたい。

次走は宝塚記念とのことだが、2600m走った後でも残り600mを軽々と34秒台で上がって来られることが本馬の一番の強みだから、前半から流れるペースへの対応が一番の課題になりそうではある。
また、これまでのレースを見ても高速馬場向きで、距離だけでいえば対応可能ではあると思うが、同時に時計の掛かる馬場への不安もある。

2着⑥スティッフェリオ

中団からの競馬を示唆していたが、スタートもよく番手での競馬に。⑧キセキが上がって行った際に我慢できたことが大きく、ペースをしっかり把握して折り合わせた北村友騎手の好騎乗。これ以上は望めない天皇賞においては勝ちパターンに持ち込めた。

直線の長いコース【0.1.0.4】で軽視していたが、そもそもの出走数自体が少なく、京都はGⅠ菊花賞を除いて②③着と苦にしていた訳ではなかったし、昨秋のオールカマーでは11秒台が続くラップで逃げ切っていた馬だけに、直線の短さならともかく、長さを不安要素として考えたことは大きな誤りだった。

3着⑤ミッキースワロー

勝ち馬を直後からマークする競馬だったが、ラスト1000mあたりから先に動いて4角では4番手。
しかし、結果的に動くのが早すぎたか最後は脚があがってしまい、勝ち馬には交わされ、前にいた⑥スティッフェリオも捕らえられなかった。
序盤に掛かってしまったこととを考えれば、勝ちに行っての結果だけに内容は濃く、負けて強し。

意外にも宝塚記念は初挑戦となるが、一昨年の大阪杯は0秒5差の5着に走っており、2200mの非根幹距離も①⑤①②④着と得意といってもいい条件。
今回より相手は強くなるが、面白いかも知れない。

4着⑦ユーキャンスマイル

道中はラチ沿いを走り、直線でも最内を突いて、終始経済コースを走るロスのない競馬で前走の再現を狙ったが叶わなかった。
序盤でハミを噛む場面もあったが、それは他馬も同じで直接の敗因ではないだろう。ラップバランスこそ違えど、3400mのダイヤモンドステークスを勝ってスタミナ不足も考えづらいが、右回りでのこのラップバランスでは厳しかったか。0秒4差なのでそれほど負けてはいないのだが、GⅠだともう一押しが足りない。

5着③トーセンカンビーナ

例によって今回も出遅れたが、1馬身程度の今回はこれまでに比べれば幾らかマシ。最後方から向正面で徐々にポジションを上げて、3角では勝ち馬の外につけてスパートをかけたが、馬なりの勝ち馬に対してムチが入っていたように手応えの差は歴然だった。

坂の下りで⑪メイショウテンゲンが外に膨れたりでモタつく面もあって、結局勝ち馬に対して前に出られないまま。ここまで5戦連続でメンバー最速の上がりを記録していたが、掲示板に載った馬の中では4角での位置取りは一番後ろだったにもかかわらず、メンバー4位タイにとどまった内容は力負けだったか。

これまで57kgすら背負ったことがなく、初の58kgは勝負処での脚に影響は少なからずあったように思うし、GⅠともなると最後方からになってしまう位置取りのハデがあっては戴冠は簡単ではなさそう。

6着⑧キセキ

ゲートこそまともに出たが、最初の直線で制御が効かなくなったことがすべて。向正面で息は入れられたが最後までは持たなかった。
もともとがペース関係なく、自分のリズムで運べてどこまで粘れるかという馬なので、無理に抑えなかった武豊騎手の判断は間違っていなかったと思うし、菊花賞を勝っているが本質的にワンペースで流れることがない長距離戦は不向きなのだと思う。

次走は宝塚記念になりそうだが、昨年は3馬身離されたもののリスグラシューの2着。気性的に信用しづらい面はあるし、人気はまだ落ちそうにないが、気分よく走らせられれば全然やれるだろう。

7着①モズベッロ

序盤に口を割って行きたがる場面こそあったが、それは他馬も同じ。それ以前に勝負処でもう手応えは怪しかったし、本馬も③トーセンカンビーナ同様に57kgの経験すらなかっただけに58kgの影響はあったか。
2着⑥スティッフェリオには前走の日経賞では先着できているだけに、今回は経験の差が出た印象。

8着⑪メイショウテンゲン

上がり勝負では分が悪いため、向正面でスパートをかけたが、勝負処でもう置かれてしまった。
スタミナに寄った本馬にとっては11秒台が続くラップでは厳しかったし、レース上がりは36秒0でも速い。

9着④ダンビュライト

去勢明け初戦を思えば、馬体が減っていなかったことは好材料で、今回の結果はとりあえず度外視でいいのではないだろうか。

10着②エタリオウ

内々を運ぶロスのない競馬は出来たように思う。前走の日経賞では0秒6差に踏ん張っていただけに掲示板ぐらいはあるかと思ったが、気持ちの問題だろうか。
条件をガラッと変えるか、馬の気持ちを変えられる騎手でないと難しいのかも知れない。

11着⑩メロディーレーン

後方から伸びず。小柄な牝馬に56kgではさすがに厳しかったかのかも知れない。

12着⑨ミライヘノツバサ

前走の復活劇は見事だったが、ズブズブのスタミナレース。3角で一杯になっていたし、一気の4kg増58kgを背負っての追走は厳しかったかも知れない。

14着⑫シルヴァンシャー

いくら外厩しがらきといっても、7か月ぶりが初のGⅠで57kgすら背負ったことがないとあれば、3角で一杯になるのも無理はなかったか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?