ボードゲームにおけるユニークカード200種作成のための基本的な考え方

このnoteは「ユニークカード200種を作成する時の基本的な考え方」についてまとめたものです。
気になる方全員に読んでいただきたと思い筆を取りましたが、いざ内容を実践するとなった場合、対象者は「すでに中重量級ゲームを制作出来る人」となります。
その点についてはご留意ください。

記事の最後に、カードの世代分けについての記述があります。
また
・コンボやシナジーについて
・タグについて
これらの内容に関しては、後日追記したいと考えております。
※5/9に追記いたしました。

ユニークカードとは

テラフォーミングマーズ(以降テラフォ)やアークノヴァ、またはウヴェ作品等に登場する大量のカード群を指しています。
基本的に効果は全てユニークで、100-200枚程度で構成されています。
本noteでは、これらのカード群を作るための考え方を記します。

まず先に、全体の内容を簡単にまとめます。

①ゲームの構成要素を細かく列挙する
②構成要素を数値化する
③その数値を用いて、足し算(プラス効果)と引算(マイナス効果)の組み合わせでバリエーションを作る

といった順で、ユニークカードを作成していきます。
では、これらを具体例とともに細かく説明していきましょう。

カタンでユニークカードを作る

カタンを用いてユニークカードを190種ほど作りました。200種には少し足りてないのですが、それについても後述いたします。
エクセルでまとめてあるのでご確認ください。

用語の補足
・効果欄における「都市を建設」:開拓地から都市へのアップグレード
・コスト欄における「都市」:都市から開拓地へのダウングレード
・特殊カード:ユニークカード
・発展カード:手元で裏向きの状態(使用前)の発展カード
・騎士カード:使用済みで表向きとなった騎士カード
・通常アクション:特殊カードを用いず、資源を支払って行うアクション

また、このユニーク(特殊)カードの運用ルールとして下記を想定しています。

・資源を得る代わりに特殊カードを引いても良い
・特殊カードも手札に加え、手札上限が適用される
・バースト判定時は特殊カードを捨てても良い
・特殊カード3枚で好きな1資源として用いる事が出来る

テストを行っておらず、実際に遊ぶには様々な不具合が想定されます。これはユニークカード制作の一例として見ていただけたら幸いです。

ユニークカードとTCGとの違いについて

TCGと大きく異なる特徴として「カードを用いないアクションがある」という点が挙げられます。
ゲームによって基礎アクションであったりメインアクションであったり、その呼び方は様々でしょう。本noteでは以降メインアクションと呼称します。
ユニークカードは、メインアクションを基点としてその効果が展開されることが多いです。
カードだけで完結する効果を増やしていくとTCG寄りになっていきます。
テラフォーミングマーズにおける「カードドロー」「山札の一番上をめくって◯◯タグであったなら」「微生物タグ」等の効果が、メインアクションを介さないカードだけで完結する効果です。

ユニークカードの実装について

ユニークカードを実装する場合には、原則として「プレイヤーにどのカードをどのタイミングで使うか悩ませる(ハンドマネジメントさせる)」ことをデザインの際に意識する必要があります。
そのため
①使い得では無い
②持ち得では無い
の2つが必要です。

①使い得では無い
「どのタイミングでどのカードも無制限に使える」ではプレイヤーはジレンマを感じません。
現在の手札を見て、どのカードが相対的に最も強いのか、どのタイミングで使うのが最も効率的か、これらを考えさせる必要があります。
そのために、カードの強さとコストが設定されています。

カードの強弱に関しては、ある程度内容を複雑にしプレイヤーの計算難度を上げます。
例えば「ノーコストで3金もらう」と「ノーコストで6金もらう」では計算が容易で、後者が明確に強く前者が単純なハズレカードになってしまいます。
・強いけどコストが重いまたは使える状況が限られる
・弱いけどコストが軽いまたは柔軟に使える
が、よくあるジレンマとしてあげられます。

またコストは基本的に「1手番またはゲーム全体で使えるカード枚数を制限する」という目的で設定されます。
ゲームの総手番数が少なく、各手番で1枚しか使えない。というルールであればコスト自体が必要でないこともあります。
「40枚獲得して、そのうちの20枚しか使えない」と言ったルールを実装するために、コストが設定されているのです。
テラフォが分かりやすい例であり、コストによって強めのカードは1手番に1-2枚、弱めのカードなら3-4枚くらいと使用枚数の制限がされています。

②持ち得では無い
どのカードを使うか、を悩むためには「どれを残しておくか」も同時に悩ませる必要があります。
結局使わなかったカードがゲーム終了時に何枚も手札に残っている、ではハンドマネジメントとして成立しません。
テラフォでは、カード所持にコストをかけています。
アークノヴァでは手札上限を辛めに設定しています。
どちらも「どのカードを残すか」を悩ませるための実装です。

要素の列挙

ユニークカードの作成のために、まずは、そのゲーム本体の要素を可能な限り全て列挙します。
要素とは、物理的なコンポーネント以外にも、各種ルールであったり、プレイヤーの動きであったり、様々なものが含まれます。
この時重要なのは「複数の要素を一つにまとめない」ということです。いくつかの要素が被ってると感じることがあっても、ひとまず別々の要素として列挙しましょう。
というのも、これは「ユニークカードのバリエーションを作るため」に行うものです。被ってると思っても、そのちょっとした表現の違いによって自身の中で異なる効果のカードが生まれることがあります。
「分かりやすく要素をまとめる」が目的ではありません。

では実際にカタンの要素を列挙します

コンポーネント類
・ダイス 2個
・ダイスの目 2-12
・数字チップ 2-12
・地形:森林 丘陵 畑 牧草 山地 砂漠
・資源カード:木材 レンガ 小麦 羊毛 鉱石
・発展カード:騎士 街道建設 発見 独占
・勝利点カード
・盗賊駒
・街道
・開拓地
・都市
・最長交易路
・最大交易路

アクション等その他の要素
・ダイスを振る
・資源カードを引く
・資源カードを支払う
・資源カードのプレイヤー間での交換
・資源カードの4:1交換
・資源カードの港を用いての交換
・街道の建設
・開拓地の建設
・都市へのアップグレード
・発展カードの購入
・発展カードの使用&表にして並べる
・手札上限
・バースト
・盗賊駒の移動&相手から資源を奪う
・盗賊による資源産出の停止

また、ユニーク(特殊)カードを用いた要素も列挙しておきます。

・特殊カードを引く
・特殊カードを使用する
・特殊カードを捨てる
・特殊カードの下にカードを挟み込む
・特殊カードの上にカードや駒を乗せる

これらをユニークカードを作成するためのパーツとして用います。
これを読み、自分ならもっと細かく要素を抽出出来る! と思った場合にはさらに追加してください。
繰り返しになりますが、他人に見せるために要素をまとめるのではなく「ユニークカードのバリエーションを自身の中から生み出すため」に必要な工程です。

要素の数値化

カードの強さをある程度の範囲に収めるため、諸々を数値化していきます。
実際はテストを重ねることで調整を測る部分であり、厳密に計算式を用いない場合も多いです。
テストの結果、ゲーム本体に手を加えられることも多く、この項目はざっくりと認識してしていれば良いと考えます。
大まかな指標として読んでいただけると幸いです。

では、カタンの資源やアクションを数値化していきましょう。
まずTakeWatchさんの記事内にある「ゲームの最小画素」から引用いたします。

カタンは少し計算が複雑になる
・最小画素は1資源カード
・最終形を2開拓地、3都市、3騎士(最大騎士力)、7道
の10点で勝利したとする
初期の2開拓地+2道を差し引くと、3住居、3都市、3騎士、5道が必要
必要資源数は12+15+9+10=46枚
4対1変換や意味のない発展カードのドローを加味すると、だいたい1/50-60がカタンの解像度と言っていいだろう

この記事にある通り、カタンは1ゲームで、1プレイヤー60枚の資源を獲得すると考えます。
各種資源はその用途が異なるものの、ゲーム内での価値は等価のため、資源1枚を価値1とします。
1ゲームにおける、プレイヤーの総獲得価値は60です。
ゲーム終了まで8点を獲得するのが目的ですから、勝利点1点の価値は60/8=7.5です。
またカタンは、1プレイヤー15-16手番ほどでゲームが終了するため、1手番の価値は60/15=4に定めます。
その他のアクションに関しても、必要コストからざっくり換算すると下記のようになります。

資源:1
勝利点:7.5
1手番:4
街道:2
開拓地:4
都市:5
発展カード:3

カタンは10点獲得でゲームが終了するため、中量級の中では比較的計算しやすい部類だと思います。
またこれらの価値も一定ではなく、ゲームの進行度や状況によって変動いたします。
重量級となれば、細かい数値を決定するのはとても難儀な作業となるでしょう。
ここまで明確な数値を出す必要はなく、脳内である程度の指標を持っていれば充分だと考えます。
これらは「テストカードを作るための暫定的な数値」として用いるのが良いでしょう。

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