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Vol.4 名探偵明智小五郎シリーズ 怪人四十面相

第1話「黄金仮面 第1回」
製作/宣弘社プロダクション、日本テレビ
脚本/伊上勝 監督/外山徹 企画/西村俊一
ロンドン警視庁の要請を受けて犯罪結社ブラックマスク団を壊滅させた明智小五郎(中田博久)は、久しぶりに日本に帰国。医療用に開発された原子エネルギー光線を兵器に転用しようと狙う国際秘密結社ドラゴンの首領・黄金仮面(天津敏)と対決することになる。助手の高月早苗(梓英子)、小林少年(関口守一)や東刑事(幸田宗丸)らの協力を得て、明智は、特殊装備を備えた車を走らせ、陸へ、海へ、空へ、敵のアジトへと、激しいアクションとともに事件の核心に迫っていく。

 江戸川乱歩の明智小五郎シリーズを原作に、名探偵・明智と、怪人四十面相の戦いを描く。舞台を現代に置き換え、探偵ものというより、スパイもののテイストが色濃い独自の明智像となった。派手なカーアクション、スマートかつ超人的な明智像など、スタイリッシュな演出が際立ち、当時大人気だった映画『007』シリーズの影響を感じさせる。
 また、明智に敵対するのは、「黄金仮面」をはじめ「天空魔人」「透明怪人」といった、悪の怪人然とした男であり、じつは彼らの正体は「怪人四十面相」であった。

 このシリーズの全貌に、私(1955年生まれ)が触れたのは、ごく最近のことであった。1966年4月3日からの本放送時には「黄金仮面」のみ触れていたようだが、記憶が曖昧である。
 つい最近(2020年)、“ JUNK FILM by TOEI ”という配信チャンネルが放映するようになって、ようやく全貌を再見できるようになったのだが……しかし54年ぶりだよ! 中田博久、天津敏、梓英子らの顔ぶれもくっきり浮かびあがるようになったのだ。

 明智助手の高月早苗については、まったく記憶がない。慌ててwikipediaを繰ってみたのだが、この「明智助手」の扱いは、映画によって、テレビドラマによって大きく違っていたのだ。列挙するだけでも、ひと苦労である。

    *    *    *

 ただ、「明智の女助手」でひとりだけ特筆すべき存在がいた。これを付記とする。

『少年探偵団 かぶと虫の妖奇』『鉄塔の怪人』(2作とも1957年5月・東映 監督:関川秀雄)明智小五郎:岡田英次 マリ子:中村雅子 怪人二十面相:加藤嘉  

 最近になって、明智小五郎=文代夫人=二十面相の三角関係や、明智小五郎=小林少年=二十面相の三角関係(?)が取り沙汰されるようになったが、何を今更の感が強い。
 そもそもマリ子という女は、二十面相の愛人ではないか! 少年探偵団の団員諸君が想像もしないうちに、二十面相の魔手は明智探偵事務所に迫っていたのだ!    

 いや、どうも失礼。この2か月前、今井正監督の『米』で父親と娘に扮した加藤嘉と中村雅子(母親役の望月優子の実妹)は、翌1958年には結婚しているが、二人の関係はプライベートなことで、映画での役柄が「父親と娘」であったり、「二十面相と明智助手」であっても関係ないのであった。

 第一、加藤千代(加藤嘉と中村雅子の娘)の著書『わが父と愛の修羅』によれば、二人の共演作は『米』『少年探偵団』に、内田吐夢監督の『どたんば』と続いていたが、この『どたんば』の岐阜ロケのさいちゅうに「二人は結ばれた」という。
 つまり、『少年探偵団』のセット撮影のあいだ、明智(岡田英次)の助手マリ子に扮していた中村雅子が、二十面相役の加藤嘉と密会していた、わけではないのだ。

 それでも、あえて提案したい。「明智探偵事務所に採用された女性助手が実は二十面相の手下であった」という案を使ってほしいのである。

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