パワー半導体って何?

 一作目、とても多くの反響をいただいてありがとうございました。
 正直「ほーん。なげぇし読むのめんどくせぇ(ハナホジ)」という扱いを受けつつもひっそりやっていくもんだと思っていたので、驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。(むしろ出したばかりの頃は驚きの方が大きかったです...)

 ということで今回はみんな気になる半導体の中でも、よくわからんけどなんか注目されててすごい【パワー半導体】について解説してみます。

 日本の半導体はオワコンと言われることもありますが、全然そんなことなくて、実は消耗品だったり製造装置、そしてパワー半導体で世界と競う立場にあるので、ぜひ注目してあげてください。

■半導体って何?

 パワー半導体について論じる前に、半導体って何ぞや?というお話をします。

 元々半導体とは普段は電気を通さないけど、ある条件を加えると電気を通す物質のことを呼んでいましたが、私たちがよく口にする半導体というのはこの条件によって電気を通したり通さなかったりという性質を利用して開発された物を指します。

 具体的にどんなもの?というお話ですが、電流を一方向に流す事が出来るけど逆は流れないもの(ダイオード)とか、小さい電気の信号を大きくしたり、電気の信号の流れを高速で、オン/オフする機能がある電子部品(トランジスタ)、PCでよく使う記憶装置(メモリ)とか、演算装置のプロセッサ(CPU)などがあります。
 多分半導体と聞いて思い浮かべるのはメモリとかプロセッサなんじゃないかな?と思います。 

■パワー半導体って何?

 パワー半導体の代表的なデバイスとしては先ほど挙げたダイオードとかトランジスタあたり。定義としては大きな電流を流しても壊れにくい半導体を指します。一方でメモリやプロセッサは大きな電流を流すと熱をもったりして壊れるのでパワー半導体とは言いません。(熱については後ほど触れます。)
 これらが何をするの?というお話ですが、パワー半導体はモーター駆動やバッテリー充電、CPUなどの半導体を動かすなどの役割を担っています。

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■パワー半導体が注目されている理由

 トランジスタやダイオードなんて昔からあった電子部品で、目新しさもないのになぜ?と思われるかもしれません。それがなぜ今注目されているの?というと、パワー半導体に変革期が来ているからです。

 その変革というのがSiC、GaN(、Ga2O3)という新規材料です。
 これらは従来のパワー半導体(Si)から飛躍的に性能が上がっていて、電気を流した時のロスも削減されていて発熱しにくかったり、消費電力の削減や小型化ができたり、大きな電流が扱えるようになったりといった用途でもこれによって克服できるようになりました。

・SiCについて

 SiCの得意としているポイントとしては、大電流を扱えるという点にあります。従って、発電システムだったり電化住宅のHEMSという家電、電気設備を最適に制御するための管理システム、そしてEVなどといった、システムのパワーが要求されるような用途への普及が期待されています。

 大手だと三菱電機(2020年世界3位)、富士電機(同5位)、東芝(6位)、ルネサス(7位)と世界的にもかなり頑張っています。その他、ロームは後発ですがSiCの開発を積極的に行っていて、2025年にシェア30%を目標としています。

・GaNについて

 GaNはSiCと比較しても電気を流した時のロスが小さいためにとても効率がよくて熱も発生しにくいデバイスですが、大きな電流に対してはSiCほど強くないという材料で、高周波用途に特に適しています。従って、急速充電だったり、5G用途などへの普及が期待されています。

 GaNはまだ技術的な課題も多くまだ取り扱いも少ないですが、少しずつ製品化されたり普及が進んでいます。

 国内メーカーとしてはかぶたんの記事を確認いただければと思いますが、まだ歩留まりがよくなくて値段も張るので、ここら辺の生産性が改善できるような材料が中小型株から出た場合はMipoxやオキサイドのように大盛り上がりします。

・Ga2O3について

 Ga2O3についてはまだ実用化には至っていないですが、GaN以上にロスが少ない(SiCの1/10)ため、非常に消費電力を小さくしたり、より小型化が出来たり、もっと言うと6Gなんて通信規格が出てきて、発熱したりもしやすいからよりロスを小さくしなければならないなんてものが出てきた時に活躍しやすい材料です。

 最近タムラ製作所発のベンチャーが世界初のGa2O3の量産化に成功して盛り上がりましたが、この会社にはタムラ製作所以外にもAGC、佐鳥電機、新電元工業、安川電機、トレックスセミコンダクターなどが出資しています。

 その他京都大学発のベンチャーでFlosfiaという会社もGa2O3の実用化に取り組んでいますが、ここにはデンソー、三菱重工業、JSR、フジミインコーポレーテッド、三井金属鉱業などが出資しています。

■次世代パワー半導体の今後

 次世代パワー半導体はまだ本格的な普及はできていないですが、その役割は今後の技術発展に大きく寄与していて、5GEVといった国策にも密接に絡んでいる材料です。

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 今後技術発展によって低コスト化が進んだり、安定生産や量産化に成功した際はどんどんと市場に出てきて小さな充電器だったり、低電力化などにつながっていくのではないかと考えています。

 まだまだ伸びが期待できるので、これから出てくるニュースについてはきちんとチェックしておけるといいことがあるかもしれません。

・余談

 パワー半導体とは直接関係ないですが、次世代パワー半導体の活躍が期待されるような用途って往々にして【熱】が関わってきています。

 要はいっぱい電流を流したりしたとしても100%伝わるわけでなくて、どこかで電流のロスが発生します。このロスというのは熱や光に変換されてしまいますので、ガンガン使っていると熱を持ちます。
 この熱というのはとても厄介で、それによって品質の劣化や性能低下、もっと言うと火傷や炎上を招きます。
 なのでこのような次世代パワー半導体を要求される用途というのは温度管理(サーミスタ)だったり制御(サーモモジュール)が必要になることが多いです。

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