Mー1グランプリ2020 準決勝

昨年同様、個人的なハマリ具合を1~10段階で書いてみます。



1、ラランド  7
前半は空気が重たかったですが、徐々にウケを重ねてリズムを取り戻していました。
サーヤさんのアクセルがかなり序盤で全開になっていたので、そこで面食らいまして、つかみ損ねてた感じはしましたね。
設定を生かした大喜利性の高いボケから、そこから発展させたボケや展開・・・と多彩に魅せ引き出しの多さを感じました。
準決勝から決勝へ・・・となると、もう1つ2つ大きな笑いを欲ししてしまう己の欲深さ。
出順やここ1年の活躍や認知もあって去年よりは苦戦していました。

2、タイムキーパー 7
芸歴は短いですが、構成や展開は4分ネタにぴったりマッチしていてさすがの一言に尽きました。
短いセクションをテンポよく積み重ね、後半でそれらをうまく絡めて笑いにつなげる。
ロジック自体はものすごく簡単で賞レースネタのお手本みたいに思われるが、実際に作ってみたり、やってみたりすると、これが本当に難しい。
見事な構成や展開に負けていない2人の漫才スキルも光り、大阪吉本を今後担う存在になりそうです。

3、金属バット  8
先日の漫才ブームでも見たネタで、やはりこれが勝負ネタだったのか……と。
M-1に合わせて、オーソドックスなテーマのしゃべくりに照準を合わせてきている印象のネタ。友保さんのキャラや言葉遣いも健在でアクセントとして心地よい。最近の金属は、世間が思っているよりアングラ臭はないと思うんですよね。その分、金属らしい荒々しさは なりを潜めています。以前までは、パッケージも中身もぶっとんでいる印象でしたが、特に今年の金属はパッケージはM-1に合わせて、中身の大喜利で勝負した印象でした。

4、ウエストランド 7
井口さんの叫びが熟成されてやっと日の目をみました。
やっていることはここ数年、大きく変わりはないと思いますが、あのタイプのネタや発言内容は、年数が経つにつれて面白さが倍増していくものだと思うので、ようやく芸歴が追い付いてきたということでしょうか。ひとフレーズひとフレーズが強いパンチ力をほこっていました。
ライブのお客さんにはウケるが、それが決勝という別空間になった時、ピントはお客さんに合うのか、審査員にどう評価されるのかが楽しみ。

5、ニッポンの社長 7
このネタが勝負ネタだとは思っていませんでしたが、以前見た時よりも見やすく、わかりやすかった。
辻さんのセンスと、ケツさんの表現力がうまいこと融合しているので、いいネタなんですが、
他のコンビのガツガツ前に出てくる感じや、手を変え品を変えアプローチしてくるタイプの漫才の前では、見劣りしてしまうのも否めない。

6、ランジャタイ 7
ネタの性質上、2人が掛け合わないまま、わけがわからないまま進んでいくのが一長一短。
後述しますが、マヂラブとタイプが似て非なる形なんですよね。鍵となるのはツッコミの立場。ランジャタイの場合、くにちゃんオンステージ感がすごく強いんですよね。同系統で先をいくマヂラブがいる限り、なかなか勝ちにくいスタイルですね。

7、祇園 8
ネタの切り口は3回戦以上でよく見るタイプのフォーマットがしっかりある、「○○漫才」となりやすいタイプで良いです。
準決勝まで勝ち進んだだけのことはあり、ただの羅列や提示に収まっていない所がネタの厚みを感じます。
あと、ボケ対ツッコミの対立構造ではなく、協力体制で1つの作品をつくっていたということも後半の加速につながって心地よい。


8、マヂカルラブリー 9
ランジャタイと異なり、リアクションに終始せず。村上さんが解説兼ツッコミとしても存在しているのがいいですね。かなり村上さんの担っている役割は多いと思います。
ランジャタイは完全に置いて行かれてしまう客が出てくるけど、マヂラブは村上さんの存在で、そこをすくい上げることができている。
今回のネタも設定上の許容範囲からくずしにかかり、そこからのマヂラブワールド全開でした。めちゃくちゃやっているように見えて、きちんと順を踏んで崩しているあたりが構成面からしてもうまいです。

9、からし蓮根 8
去年のネタほど仕上げきれてなかったですね。予選と同じネタなのでネタバレもあったでしょうが、それを差し引いても勿体ない。
1つ1つのボケの水準は高いんだけど、拍手笑いにつながるような大きな笑いにはつながらず。設定の中で大喜利をして、時たま別角度からのボケもあって、ネタ振りもそこまで長くないので、結構M-1向きなネタではあると思ったんですけどストーリー的な要素が弱いので物足りなさも感じました。

10、カベポスター 8
ツッコミで緩急を操り、ボケのセンスで魅せるので近い将来決勝には残るであろう存在。ネタの切り口は毎度おそれいります。
永見さんはさすが大喜利の名手ということもあって、ボケを繰り出す間や言葉選びが抜群です。ここに気持ちよく浜田さんのツッコミがハマるので、聞いてて心地よいです。
ネタバレしていないネタだったら。。。とか、オチの唐突さがなければ・・・と悔やまれる結果。

11、ゆにばーす 7
川瀬名人が1つ1つのツッコミでえげつないボルテージでした。拍手笑いを是が非でもとってやろうといわんばかりの勢いで。
お客さんと川瀬名人のテンションがもっと気持ちいところでおさまってネタができたら、ウケはまた変わってくるんだろうなと思いました。
しゃべりベースのネタなので、その脈絡やボケに至る過程も大事なんですが、1つ1つのボケにいくまでに少し時間をかけすぎて、見る側の期待が上回っているのもあったかも知れません。

12、キュウ 7
システムを明かすまでの間の取り方がキュウらしくて独自の世界観を4分で作り上げていました。
有名なネタではあるし、ネタも東京のお客さんには知られてたかな。認知さえされればどんどんウケがとれていくタイプだと思うので、これを機に大きく躍進しそう。

13、アキナ 10
山名さんの表現力と、秋山さんの品を損なわない怒りのツッコミが素晴らしすぎました。
設定と山名さんのキャラのマッチ具合、言葉・動きで魅せる多彩な角度からの笑い。丁寧なネタ振り、確かな技術と、構成。全てトップクラスでした。個人的にはダントツ1位。
品を一切損なわないボケとツッコミの言葉遣いで笑いを取れるのは素敵。近年、汚い言葉で野次ったり、けなす言葉で笑いを加速させる組も増えてきましたが、果たして本当にそのシチュエーションでそんな風になる?と思うんですよね。落語を聞いてると、そういう表現ばかりではないとつくづく思うのですが。アキナは、場面にあったボルテージの怒りを正しく伝えていますね。NGKでの幅広い年齢層でネタをしてきた経験がここに生きている。


14、おいでやすこが 9
ベーシックなことをしているので分かりやすいネタ。フリ→オチ→ツッコミのシンプルな仕組みが大爆発をうんでいました。ピン芸人2人の個性がそのままいかされているので、かなり無双状態に入っていました。人の認知も大きく影響していたとは思うけど、それにしても凄かったです。こがけんさんのあのポテンシャルがネタ振りにすら食い下がってしまうほどの、小田さんの無双状態。何を言ってもウケる、立ち回りながら声をあげればウケる。そんな空気をつくっていました。最終決戦は、かたいと思う。

15、オズワルド 9
前半のスローな入りから、中盤後半にかけての展開とギアの入れ方は賞レースの戦い方を熟知していることをひしひしと感じました。伊藤さんの言葉遣いがどこまで決勝の審査員や一般のお客さんに許容されるんだろう、というところが楽しみでもあり、不安でもあります。ABC、マイナビと、2つの賞レース決勝を経て、各大会違うネタで決勝を戦うつもりなのがかっこよすぎます。どのネタもクオリティが高い。いい出順でネタを披露し、最終決戦まで残れたら優勝ありそうです。それぐらいネタの平均点は高い。

16、ロングコートダディ 8
兎さんのキャラをある程度理解しているとより楽しめるのかな、とは思いましたが、見ていると一切説明はされていないのに笑いどころやキャラの立ち位置みたいなものが自然と明瞭になってくるのがコント師がつくる漫才だな、という色を感じました。ひょっとしたら決勝もあると思いました。

17、インディアンス 7
毎度にぎやかに動き回り、さすがのテンポでしたが、ここはどうしてもネタの題材が後になって振り返ってみたとき思い出せないんですよね。。。。去年の準決勝が本当にすばらしすぎるぐらいの出来だったのでそれと比べると下回ってはいたかな。

18、東京ホテイソン 8
いつもは1つ1つのボケがもっと単発なイメージがあるんですが、今回は1つのネタとしてまとめ上げてきている感じがしたので、決勝までいけたのかなと思いました。センスは十分証明されていたので、あとは構成面の仕上がりを待つばかり、とされていたのかな、と思うぐらい近年は苦汁を飲み続けてきました。一切ハズさず爆笑だけを取り続けていくのでかなり強いです。


19、コウテイ 9
今年の集大成でしたね。いろいろなタイプの漫才をつくり、いくつかの漫才の良いフォーマットを1つに集約していました。自分はこのスタイルにかなり可能性を感じていたので期待をしていましたが、大阪組の初準決勝特有の洗礼を浴びる結果となりました。(霜降り、からしの例のように)このスタイルになったことでパワーは増したけど、去年や一昨年までの大喜利的にひかるボケと、一部のお客さんを置いていくボケが混在する時期の雰囲気も戻ってますね。自分はそれがプラスに転じていたように感じました。いったと思ったけどなぁ。

20、学天即 7
1つ1つのボケに対する奥田さんのツッコミが流暢すぎて安心感すらおぼえました。
もっとガツガツかみついていったら、笑いが来るのかな?なんてことも思いながら見ていましたが、結構あっさりめな処理で次から次へと繰り出される怒涛ボケの押収をさばいている感じでした。言葉遊び的なボケが4分続いているので、これはNGKとかの長い尺でやったらもっと爆笑になるんだろうな。4分のMー1ネタとしては少しライトに感じました。

21、ダイタク 7
コントベースで双子を利用していましたが、いつものようにロジカルにうまく双子をからめていました。
ウケてはいますが、後半ということもあってかなりの刺激物でないとお客さんも満足しなくなっている時間帯なのでベーシックに見えてしまったのが残念。

22、見取り図 8
過去2年とはまた違ったタイプのアプローチでコント漫才。
中盤から後半にかけてまとめあげてくるのは、さすがM-1決勝を知り尽くしているコンビです。コンプラには全く引っかからないけど賞レースネタとしてこういうのはどう見られるんだろう?みたいな不安な箇所が2箇所あって、ヒヤヒヤしてましたが、後半のまとめあげ方は見事でした。ただ、しゃべりベースのネタに比べて勢いが出にくいのかな、と思いますが。
特に去年が良かっただけに、そこを乗り越えられるかが肝。

23、ぺこぱ 8
去年の自分たちや今の自分たちをすべてネタにとりいれた、ニューぺこぱでした。
裏切ってやろう、というぺこぱの戦略を歓迎する人と、そうでなく去年のタイプがみたいな、と思う人とわかれるところではあるんでしょうが、M-1に挑戦するならこういう進化は大歓迎です。その裏切りの部分で、すぐに汲み取って笑う人と、戸惑いつつみて笑いが遅れる人がいたのがビューイングで見た率直な感想です。人によって笑いのラグが起きている前半でした。ほんと微妙なずれなんですけどね。
過去の自分をフリにしてるというのは、この組にしかできないものでいい漫才でしたが、去年爆発した松陰寺節は、不発な箇所があったのも否めませんが。

24、滝音 8
ベイビーワードがそこまでハマっていませんでしたね。1つ1つのワードは面白いんだけど、設定をいかしたボケがたくさんある中に落とし込めるともっと構成面での評価はあがるのでしょうか。キングオブコントのネタみたいなつくりだといいんでしょうけどね。完全にベイビーワードを繰り出すための設定や会話、みたいな感じが払拭出来たら決勝も見えたかなぁ。

25、ニューヨーク 9
いい味が出ていましたね。らしさ全開で、去年とはまた違うアプローチができるぶん期待できます。
ネタの構成も結構新しく感じました。いくつかのセクションにわかれてショートコント的につないでいくんですが、各くだりに笑いどころが散りばめられており、羅列系の漫才やショートコント感を全く感じませんでした。これを1本ネタとしてまとめあげてきたのは、かなり構成面で優れているネタだと思います。今年は狙える位置にいると思います。

26、錦鯉 8
まさのりさんの名刺としてふさわしいネタだと思います。いかにキャラを受け入れてもらえるかが、このコンビの生命線だと思うので、最初の反応がどうでるかが決勝ネタの注目どころ。



自分が見た上での予想は、7組的中

錦鯉、ウエラン→からし蓮根、コウテイにしてました。

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