見出し画像

大人気!テキサスにアフリカ原産の希少動物うようよ! March 15, 2023の記事翻訳

本日翻訳して紹介するのは、the New Yorker Web版に3月15日に掲載された Rachel Monroe のコラムで、タイトルは、”The Allure of Exotic Animals in Strange Places”(大人気!場違いなところに棲む外来動物)となっています。

  Rachel Monroe の寄稿です。彼女の記事が掲載される頻度は非常に高いです。今日訳した文章は短いものでwebでのみ見れるものでしたが、2023年に入って以降でこの雑誌の紙バージョンに5回も彼女の記事が掲載されています。雑誌に記事を上げるというのは、非常に大変なことだと思うので、本当に頭が下がります。中でも一番面白かったのは、3Dプリンターによる住宅作りに関する記事でした。

 さて、今回訳した記事のスニペットは、”hefts from the Dallas Zoo made headlines. But Texas is a hotbed for ownership of all kinds of rare species.(ダラス動物園の盗難事件が話題となりました。盗まなくたって、テキサス州では様々な希少な動物をいくらでも見ることができます。)となっていました。テキサス州でアフリカやアジア原産の希少な動物が飼われていることに関する記事でした。読んでみて分かったのは、テキサス州の野生生物の規制に関する法律は緩いなということです。決して、そのことを批判しているような内容ではありません。Monroe は特に自然保護にのめり込んでいるわけではないので、事実を淡々と記している感じです。

 では、以下に和訳全文を掲載します。詳細は和訳全文をご覧ください。
私の運営しているブログにも同じ記事を載せています。


Letter from the Southwest

The Allure of Exotic Animals in Strange Places
大人気!場違いなところに棲む外来動物

Thefts from the Dallas Zoo made headlines. But Texas is a hotbed for ownership of all kinds of rare species.
ダラス動物園の盗難事件が話題となりました。盗まなくたって、テキサス州では様々な希少な動物を見ることができます。

By Rachel Monroe March 15, 2023

 ノヴァ(Nova)は、丸い耳で、まだら模様の体表が特徴の4歳のウンピョウ(clouded leopard:雲豹)です。今年1月に、ノヴァはダラス動物園の檻の中から忽然と姿を消しました。その際に動物園の関係者は、「リスより大きなものに危害を加えることはない」ので安心してほしいと呼びかけました。ダラス動物園の副園長であるハリソン・エデル(Harrison Edell)は記者会見で、「ノヴァは猫と同じ様な行動をしたのだと思います。まっすぐ木を上に登り、降りてこなかったのでしょう。」と述べていました。ノヴァは、その日の内に園内で飼育員によって見つけられました。興奮してリスが騒いでいたことで居場所が判明したのです。ノヴァは、折の囲いの切れ目から逃げ出したようでした。翌日、動物園の職員は、東南アジア原産の絶滅危惧種で草食性のオナガザル(langur monkey)の展示室を囲む金網に、同様の切れ目があるのを発見しました。オナガサルは一匹も逃げてはいませんでしたが、動物園の飼育員たちは、他の動物も逃げ出している可能性があるのではないかと心配しました。

 その心配は的中しました。ダビオン・アーヴィン(Davion Irvin)という男が後に警察に捕まりました。取り調べの後に明らかになったのは、彼は1月29日の夜、暗くなるのを待ってフェンスを飛び越え、エンペラータマリン(emperor tamarin monkey)の展示室の囲いを切り裂いて侵入し、2匹を持ち去っていました。体重1ポンド(450グラム)ほどの小さな動物を持ち去るのは容易なことでした。そして、アーヴィンはライトレール(ダラスと周辺都市を結んでいる路面電車)に乗ってその2匹を猫や鳩などを飼っている空き家まで運びました。4日後に警察が彼をダラス世界水族館(Dallas World Aquarium)の近くで逮捕しました。彼は水族館でタコやサメについて質問していたことが分かっています。彼は、6件の動物虐待と2件の侵入盗の罪で起訴されました。

 長い海岸線を有し、メキシコと国境を接しているテキサス州は、野生動物の密売の温床となっています。「密売は全て営利目的で行われています。結局のところ、誰かがどこかで欲しがるような動物が居る限り、密売は亡くならないのです。」と、テキサス州公園・狩猟管理局(Texas Parks and Wildlife Department)のブレント・サツキー(Brent Satsky)部長は私に教えてくれました。サツキーは、長年その組織で働いていて、多くの動物種が密売されるのを見てきたと言っていました。「それこそ、あらゆる爬虫類(reptiles)が密売されています。網目状ニシキヘビ(reticulated pythons)、ビルマニシキヘビ(Burmese pythons)、ワニ(alligators)、カミツキガメ(snapping turtles)などです。」と、彼は言いました。「また、本当にたくさんの種類のカメ(tortoise)も密売されています。テキサス原産のミシシッピアカミミガメ(red-eared sliders)は、世界中に欲しがる人がいます。ダラス・フォートワース地区では、キングコブラ(king cobra)が密売されていました。普通の人がコブラを飼うというのは良いアイディアだとは思いません。危険ですから、お薦めはしません。」

 しかし、アーヴィンが侵入盗をした動機は金銭的なものではありませんでした。好きすぎて、どうしても欲しくなったというのが動機のようです。彼が警察に語ったところによれば、彼は本当に動物が大好きで、もし釈放されたら再び動物を盗んでしまうかもしれないそうです。アーヴィンのように動物を欲しがる者は決して少なくありません。実は、動物園に侵入して動物を盗んだ人物はアービン以外にもいます。2020年には、コーリー・マクギロウェイ(Cory McGilloway)なる人物が、サンフランシスコ動物園からマキ(Maki)という名前のワオキツネザル(ring-tailed lemur)を連れ去りました。連れ去った後、マクギロウェイはワオキツネザルが何を食べるかとか、チョコを食べるか否かとか、飼育方法とかを検索していたそうです。マクギロウェイは有罪を受け入れるまで18カ月間拘留されました。無事に動物園に戻ったマキは老衰と腎臓病で昨年(22年)の春に亡くなるまで、動物園の人気者でした。動物園関係者によれば「忍耐力と勇気のシンボル」として多くのファンを獲得していたそうです。

 テキサス州は、希少な動物種の飼育に関する法律があるのですが、非常に緩いものです。テキサス州ではほとんどの人が都市部に住んでいるにもかかわらず、多くの住民が依然として辺境の地(frontier)に住んでいると自認しています。そのためだと思うのですが、あるいは不条理なものへの憧れなのかもしれませんが、あるいは単に法律が緩くて飼えるからなのかもしれませんが、多くのテキサス人があらゆる外来種(non-native species)と共存することを好んでいます。マクギロウェイは、カリフォルニア州ではキツネザル(lemur)をペットとして飼うことはできませんが、テキサス州ではできます。サル(monkey)も飼えますし、許可証があればコブラも飼うことができるのです。テキサス州には個人所有のビッグキャット(トラ、ライオン、ジャガー、ヒョウ、ユキヒョウの5種のこと)が、時として飼育環境が万全でないことも多いのですが、たくさんいます。月刊誌”テキサスマンスリー”(Texas Monthly)には、かつて「テキサスで逃亡したトラたちの略歴、2021年版」というタイトルの記事が掲載されたことがあります。その年の最初の5カ月間に発生した事例が何件も詳述されていました。トラが逃亡した事例、捕獲された事例、保護された事例などです。最近、同州ではペットのカンガルーが脱走する事件が相次いでいました。

 テキサス州で最も目立っている(そして儲かる)外来種は、同州の多くの牧場で飼われています。キング牧場(King Ranch)では1世紀以上前から外来種が飼われています。この牧場は非常に有名で、フォードのSUVやピックアップトラックの最高級グレードの名称はこの牧場に因んだものです。広大で、テキサス州を象徴するようなところです。1930年にサンディエゴ動物園がこの牧場に、インドやパキスタンが原産のクビナガレイヨウ(long-necked antelopes)、ニルガイ(nilgai)の群れを提供しました。この地の半熱帯性の気候がクビナガレイヨウやニルガイの生育に適しており、また、天敵もいなかったため、生息数は急激に増えました。やがてキング牧場には、エキゾチックな獲物を仕留めようとして多くの狩猟愛好者が訪れるようになりました。この数十年の干ばつと気温の上昇により、同州の一部では牧畜を続けるのが難しくなっています。それで、多くの牧場主がアフリカやアジア原産のレイヨウや羊や山羊を自分の牧場に放って育てるようになりました。同州でオジロジカ(white-tailed deer)などの在来動物を狩猟できるのは、特定の数カ月間に制限されています。しかし、インパラ(impala)やアフリカスイギュウ(Cape buffalo)の狩猟は法律で全く制限されていません。1年中狩猟することが可能です。

 テキサス州に拠点を置くエキゾチック・ワイルドライフ協会(Exotic Wildlife Association)によると、この産業は同州経済に10億ドル規模の貢献をしているそうです。多くのテキサス州の外来動物の狩猟ができる牧場は、自然環境保護を推進しつつ、まつ、資本主義的でもあります。外来動物の飼育や売買を行うワイルドライフ・パートナーズ(WildLife Partners)社は、外来動物は投資対象に最適であるとして推奨していて、「株式、債券、投資信託など多くの伝統的な投資手段を上回るリターンが期待できます。」と宣伝しています。また、狩猟愛好者は希少種を捕獲するために結構な額を支払っています。時には数万ドル支払う場合もあるそうです。それが、牧場主にとっては密猟や生息地の消失によって本来の生息地では絶滅の危機に瀕している動物を飼育するインセンティブとなっています。ですので、いくつかの外来動物は、絶滅の危機に瀕しているアダックス(addax)やマウンテンボンゴ(mountain bongo)などですが、アフリカよりもテキサス州の方が生息数が多くなっています。20年前に野生のシロオリックス(scimitar-horned oryx)は絶滅したことが確認されましたが、テキサス州のヒルカントリー(Hill Country)には数千頭も生息しています。

 人工的に野生生物を増やしてそれを自然と呼びたい、何かを救うためはマネタイズするのが一番という実利主義的な考え方は、いかにもテキサス人らしいと思います。もちろん、投資したからといって、必ずしも思い通りのリターンが得られるとは限りません。何と言っても野生の動物なわけですから、フェンスを越えて飛び越えていなくなってしまったり、どこかへ行ってしまうこともあります。例えば、北アフリカ原産の毛むくじゃらで角のある羊、バーバリーシープ(aoudad)は、1950年代に狩猟愛好者の獲物となるべくテキサス州に導入されました。その一部が逃げ出して野生化して繁殖しました。今では数百頭で群れをなして移動して、在来種の餌を奪っています。テキサス州西部では、テキサス州公園・狩猟管理局の職員が、バーバリーシープの数を抑えようと、ヘリコプターからそれを収穫(harvest)することもあります。しかし、その試みもこれまでのところ、効果は限定的なようです。数はほとんど減っていません。

 テキサス州の外来動物は、様々な役割を担っています。時には州のシンボルの役割を果たし、投資対象となったり、何かの餌にされたり、狩猟愛好者の獲物になったり、ペットになったりしています。ですが、あくまで動物です。そこを忘れてはいけません。ニューメキシコ州との州境付近の裏道で車を運転していた時に、私はのっぺらな顔に高く伸びた角のある有蹄の動物を驚かせたことがあります。おそらくオリックスだったと思います。その動物は、奇妙に頭を揺らしながら小走りに去っていきました。見慣れぬ光景で、あまりに場違いな感じがしたため、私は一瞬、ワームホール(時空構造の位相幾何学として考えうる構造の一つで、時空のある一点から別の離れた一点へと直結する空間領域でトンネルのような抜け道)を抜けてサバンナに来てしまったのかと錯覚してしまいました。私とその動物は、同じ瞬間に同じ場所に偶然にも居合わせたわけですが、本来であればテキサス州で出会うことなどあるはずないわけです。不思議な気がしましたし、ちょっぴり嬉しいような気もしました。♦

以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?