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リハビリ:今朝は快晴

昨日は気づいたら寝ていた。
先日行った“OMSB”のファンが撮影したライブ映像をXで見ていたら
眠くなってきたところまでは記憶がある。

気づけば夕飯の食器は机に置いたままだし、
部屋の電気は付けっ放し、
おまけにコンタクトもつけたままときた。
誰もが経験したことあるだろうあのギルティーに叩き起こされたわけだ。

今朝は嫌味なほどの快晴で、今すぐに起きないと
今日を丸1日無駄にするであろうというのは
容易に想像がついた。

とりあえず誕生日に買ったラジカセのラジオのスイッチを入れてみる。
真っ先にTOKYO FMがついたが、朝はJ-WAVEというのは相場で決まっている。(決まっていない)

チューニングを合わせ直すと男女のパーソナリティがNSYNCというグループの再結成のニュースについて話していた。聞いたこともないグループだったが、聞くところによると“ジャスティン・ティンバーレイク”が所属していたらしい。

説明の中で女性のパーソナリティが何度も“ジャスティン・ティンバーレイク”の名前を出すのだが、ジャスティン・ティンバーレイクのなかの“ジャスティン”のイントネーションがやけに気持ち悪い。

“ジャスティン・ティンバーレイク”と一気に呼べばいいものを“ジャスティン”と“ティンバーレイク”を別物のように呼ぶそのイントネーションは、まるで
日本名のようで漢字の当て字を考え始めてしまう。
いやまて、そんなことはどうだっていい
なぜなら今日は快晴だからだ。

風呂に入りふと思い立ち、隣駅にあるカフェに久しぶりに行くことにした。

カフェに着くと特製ホットドッグとホットのカフェラテを頼む。
1席だけ空いたカウンター席に案内される。
「お席は1時間制をお願いしています」

なるほどそうきたか。
私は はい と納得した様子を見せたが
内心、カフェで1時間は短すぎやしないか?
と疑問を抱かざるを終えない。

今日は途中まで読み進めた本を一冊持っていきていて、残りのページは50Pほど。
熱々のソーセージが乗る特製ホットドッグを食べ終え、
ラテにも関わらず少しの酸味を感じるカフェラテを飲み終え
この本を読み終えるまでに1時間で足りるだろうか。
今日は快晴だからか なるほどおもしろい という感情になれる。時間が先か、読み終え食べ切るのが先か。
いざ勝負。

いつ来てもこのカフェはオシャレな客で溢れている。
私が案内されたカウンター席の両隣も当然オシャレな装いだ。

こうなると私はその身なりを凝視したくなる欲望に駆られる。
(何より服選びの参考になるからだ、疚しさはない。ない、ほんとに。)
健やかな時間を優雅にコーヒーで楽しむ中、
隣の客がジロジロと見てきたらどう思うか。
その気持ち悪さとガッカリ感は計り知れない。

自分は1時間のレースの中にいることをふと思い出して我に帰る。
注文の品が届いていない今の私にできることはたった一つで、
本を読み進めることだけだった。

今読んでいる本は筆者が飲食店のオーナーで、あらゆる飲食店でのエピソードをオーナー的視点、従業員的視点、いち客としての視点で語られる。
普段ラジオなどを聞いてエピソードトークが好物な私にとっては打って付けで、
読み終えるのが勿体無いとさえ思うほど面白い。

この本を読み進めながら今の自分の周りにもエピソードトークとしてネタになるものはないかと嗅ぎ回ってみるが、隣の女性2人の“深夜まで働いたら熱が出た”話ではネタにならない。
仕方ない許してやろう(何様)、
今日は快晴だからな!

そうもしているとホットドッグとカフェラテが届く。
ホットドッグにかぶりつくとこの熱さは正気の沙汰ではないと気づく。
レース中の私は冷ましている間に本を読み進めることにした。

読み進めているとふと自分のバイト時代のことを思い出す。

大学2年の頃、私は自宅のすぐそばの鉄板焼き屋でアルバイトをしていた。
当時あるバンドのギタリストに憧れ髪を伸ばしていたのだが、
ある日こんなことが起きる。

店はそこそこの広さで、50名ほどは貸し切れば入りきるほどだった。
その日もそれくらいの人数の貸切で、部活の大会の打上げが行われるとのこと。
店に入ってくるのはほとんどが女子高生でバスケのユニフォームに身を包む。

この日ほどやる気に満ち溢れた日はなかった。
女子高生の前でテキパキと仕事をこなし、
一人でも“なんかあの店員さんかっこいい”
と思ってくれればそれでよかった。
(それですら欲しがり過ぎだが)

だがその真逆なことが起こる。
紹介を忘れていたが、アルバイトの先輩に誰もが認めるほどのイケメンの先輩がいた。イケメンな上に身長は185cm近く、水泳の全国大会記録保持者ときたらどれだけの完成度かは想像がつくだろう。この日もそのイケメン先輩とシフトが被っていてあとは女性の店員。

思い出して欲しいのだが、当時私は髪を伸ばしていた。私服を着ていればまだそれっぽくなるものの、バイト服を着て髪を縛り上げる私は国分寺のD.O、いわば国分寺ザファッカーだったのである。

打ち上げは高校生ということもありソフトドリンクの飲み放題だったのだが、飲み物を持って行くたびに女子高生の各テーブルではゲームが行われていたに違いない。

めくったら次出るカードはキングかジョーカか、
頼んだら次来るのはイケメンか国分寺ザファッカーか、
といったところだろう。

それぞれ飲み物を持って行くとその瞬間静かになり、
厨房に戻るとリアクションが聞こえてくる。
イケメン先輩であれば歓喜と言わんばかりの黄色い歓声、
国分寺ザファッカーであれば爆笑だ。
爆笑。


もちろんそれ以降は団体の時はイケメンとシフトが被らないよう共演NGを出した。

悔しかった。てかなんか腹立ってきた。

本を読み進めながらこの出来事を思い出した私は
無償に腹が立ってきて、その本の
“終わりに”の部分はもはや読んでいるのではなく文をただ目で追っている状態だった。

アドレナリンが出たのか冷めていたのか、ホットドッグの熱さは全く感じず、気づけば1時間のレースにも綺麗に勝利した。

店に入ってちょうど1時間後、店を出て
そういえば今日は快晴だったことを思い出す

が、さすがの快晴もこの怒りには勝てず

モヤモヤを抱えたまま帰宅し
今、この文を書くに至った。







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