信憑性に欠ける噂:イギリスで妊婦は4階以上に住むことが禁止されている?

インターネット上で特によく目にする情報が、「イギリスでは妊婦(又は子育て家族)が4階以上(又は5階以上)に住むことが法律で禁止されている」という情報だ。

この情報は大抵の場合、日本で無視され続けている「高層マンションと流産率との関係性」の存在の信憑性を高めるために使用される。例えば、「日本では、高層階ほど流産率が高くなるという報告がある。実際、イギリスでは妊婦が4階以上に住むことが法律で制限されている」のような使い方だ(なお、流産率については後日説明する)。

この手の情報の面倒さは、その信憑性に強い疑いがあったとしても(多くの人はそう感じるだろう)、そのようなルールが「存在しない」ということの証明は大げさに言うと悪魔の証明に近いという点である。基本的には相手にしないながらも、なんとなく頭の片隅に引っかかっている状態が気持ち悪いのだ。おそらく情報の発信者もそのことを逆手に取って、「間違っていてもどうせバレやしない」と思いながら言い切っているのだろう。

イギリスにおける法律、条例、規則を全て調べることは不可能なので日本で言うところの某知恵袋的サイトから調べた。

まず、筆者が直接的に「日本ではイギリスには妊婦又は子供がいる家族は5階以上に住んではならないとする噂がある本当か?」と聞いたところ、回答は「いいえ、それは本当ではない」との回答であった。

次に、同サイトで同様の質問を探すといくつかの類似する質問と回答があった。その内容は以下の通り。

●質問
子供たちは高層アパートに住むことができますか?

●回答
これに対する法律はまったくありません
・それは間違いなく違法ではありません。 息子が8歳のときに自分の家を買うまで、フラットの18階に住んでいました。
・何千人もの子供たちが高層アパートに住んでいます。
・完全に合法
・なぜ合法ではないのですか? 子供が高層アパートに住むことはできないと言う法律はありません

●質問
特定の年齢未満の赤ちゃんと一緒に高層アパートに住んではいけない法律はありますか?

●回答
・いいえ、そのような法律はありません
・ない。

以上のように、少なくともイギリス人は、「…4階以上に住んではならない」というルールの存在を全く知らない。それどころか、高層階に子供と住んでいる又は住んでいたという話は山ほど見つかる。

もしかしたらどこかの区画又はビル単位で、事故防止などの観点から、子供は上層階に住んではいけないというローカルルールがないとは言えない(公営住宅は安全性に配慮されてないため子供の落下事故が多い)。だとしても、イギリス人でさえほとんどが知らないようなローカルルールをわざわざ日本で話題するメリットは何かあるだろうか。

いずれにしても、「妊婦が…」という説は99.99%以上の確率でガセネタであり、高層階に住めない理由が流産率と関係あるかのような記事は99.9999%以上の確率でガセネタなので、信用しないよう気を付けて欲しい。

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