メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第383号「導引法」(内景篇・精)1

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 ◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆


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  第383号

    ○

        ◆ 原文
      ◆ 断句
      ◆ 読み下し
      ◆ 現代語訳
      ◆ 解説

      ◆ 編集後記


           

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 こんにちは。「単方」を読み終わり、「導引法」に入ります。
 
 ◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
      ・ページ数は底本の影印本のページ数)


 (「導引法」p86 上段・内景篇・精)

 導引法
 
    治遺精以手兜托外腎一手摩擦臍輪左右輪
    換久久擦之不惟可以止精且可以補下元更
   擦腎兪胸前脇下湧泉但心窩忌擦入門

 ▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)

導引法

  治遺精、以手兜托外腎、一手摩擦臍輪、左右輪換、

  久久擦之、不惟可以止精、且可以補下元。

  更擦腎兪、胸前、脇下、湧泉、但心窩忌擦。入門。


 ●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)
 

 ▲訓読▲(読み下し)

導引(どういん)の法(ほう)

  遺精(いせい)を治(ち)す、手(て)を以(もっ)て

  外腎(がいじん)を兜托(とうたく)し、

  一手(いっしゅ)にて臍輪(せいりん)を摩擦(まさつ)す、

  左右(さゆう)輪換(りんかん)し、久久(きゅうきゅう)に

  これを擦(さつ)す、惟(ただ)以(もっ)て精(せい)を

  止(とど)むべきのみならず、且(かつ)以(もっ)て

  下元(かげん)を補(おぎな)ふべし。

  更(さら)に腎兪(じんゆ)、胸前(きょうぜん)、

  脇下(きょうか)、湧泉(ゆうせん)を擦(さつ)す、

  但(た)だ心窩(しんか)のみ擦(さつ)することを忌(い)む。

  入門(にゅうもん)。


 ■現代語訳■
  
導引法

  遺精を治すには、手に外腎[※前陰]を乗せ、

  もう一方の手で臍輪を摩擦する。

  左右の回転方向を変えながら、長らく擦る。

  ただ精を留めるのみならず、下元を補うことができる。

  さらに腎兪、胸の前、脇の下、湧泉を摩擦する。

  ただし、心窩を摩擦してはならない。『入門』

 ★ 解説 ★

 単方をようやく読み終わり、今号から次の導引法に入ります。文章が三段あり、今号は一段めです。

 同じ精の章の中でありながら、読んだのはすでに一年以上前になってしまいますが、「煉精有訣」の項でも似たような方法が説かれていました。

 ただ、そちらでは臍を摩擦する方法がなかったのでした。また、面白いことに、全身にわたってあれだけ多くの手法が説かれていた、身形の章の「按摩導引」にも、臍を擦る方法はありませんでした。

 では按摩導引には臍の記述がなかったかと言うと、そうではなく、臍を想念の火で焼くという方法が説かれていたのでした。

 こちらは実際の動作でできる方法ですのでより簡単な方法と言えます。

 話題は変わりますが、メルマガでの翻訳だけでは全体の訳が遅々として進まないので、別に翻訳作業を進めていることは既に書きました。

 翻訳を進める中で、翻訳の表記をどうするか、また何度か書きました、訳語をどのレベルまで訳すのか、についていろいろ考えます。

 その中で、原文のニュアンスを消したら、全体での均衡が壊れてしまう、でも、そのままでは現代文として読むには意味がわかりにくい、というジレンマがある部分が多々あります。

 そんな時に、既に上に書いたように、

  外腎[※前陰]を

 のように、カッコで括って簡単に註釈、またはわかりやすい訳語を併記する手法を思いつきました。

 書籍化した際に、本文とは別の部分に註釈を記すと参照するのが面倒になりがちで、さらにそれだけ本文のスペースを取るわけですが、このようにその場に註釈を入れる形なら、見やすくまた紙面を取らないという点でもよいのではと考えています。

 例えばここは、外腎のままでは身体のどの部位に該当するのかわかりにくく、そのままでは訳語として少し不親切のようですが、かと言って前陰、陰部、陰嚢、などと別の用語に置き換えてしまうと、今度は本文の別の個所には、「内腎」という言葉がある部分があり、そちらとの呼応関係が消えてしまい、本文全体の繋がりが読み取れなくなってしまうからです。

 東医宝鑑は、全体でひとつの宇宙というようなことを何度か書きましたが、ある個所と別の個所との繋がりで、より深く読めるように構成してある部分が多く見受けられ、それは原文の用語のまま読まないと、上のように消えてしまう繋がりが多く、編纂者さんが意図したであろう繋がりを保持するには、やはり原文の単語を保持するのが最善の策だと思うようになり、このような方策を取ることにしました。

 これは一例ですが、今後はそのような部分が登場したと思ったら、解説でご紹介して、この手法の良さを感じていただける手助けとしてみたいと思います。

 ◆ 編集後記

 単方が読み終わり、ようやく次の項目に入ることができました。

 先行訳のこの部分には大きな誤りがあり、そちらもご紹介したかったのですが、長くなりすぎますので割愛させていただきました。先行訳をお持ちの方は、この部分の訳のどこが誤りなのかをご検証してくださればと思います。
 この導引法はあと二号で読み終わる予定です。
                      (2020.09.20.第383号)
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