メルマガ『東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─』第376号「単方」(内景篇・精)10
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◇ 東医宝鑑(東醫寶鑑)とういほうかん─古典から東洋医学を学ぶ─ ◆
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第376号
○ 「単方」(内景篇・精)
◆ 原文
◆ 断句
◆ 読み下し
◆ 現代語訳
◆ 解説
◆ 編集後記
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こんにちは。「単方」の「山茱萸」です。
◆原文◆(原本の文字組みのままを再現・ただし原本は縦組み
・ページ数は底本の影印本のページ数)
(「山茱萸」p86 上段・内景篇・精)
山茱萸
添益精髓能秘精
煎服丸服並佳本草
▼断句▼(原文に句読点を挿入、改行は任意)
山茱萸
添益精髓、能秘精。煎服、丸服、並佳。本草。
●語法・語釈●(主要な、または難解な語句の用法・意味)
▲訓読▲(読み下し)
山茱萸(さんしゅゆ)
精髓(せいずい)を添益(てんえき)して、
能(よ)く精(せい)を秘(ひ)す。
煎(せん)じ服(ふく)し、丸(まる)め服(ふく)す、
並(ならび)に佳(よ)し。本草(ほんぞう)。
■現代語訳■
山茱萸
精髓を補益し、精を保つ。
煎じて服用し、丸めて服用しても、共に良い。
『本草』
★ 解説 ★
精の単方のうち、山茱萸です。短いですがこれひとつのみでお届けします。
読みも内容も問題ないでしょう。前号で登場した「秘」がまた出てきており、訳語も前号と同じ「(精を)保つ」としてあります。
この同じ用語の訳語を揃えるということが案外難しく、特にこの東医宝鑑のように大部な著作を訳す場合には年月もかかるので、どの語をどう訳したか、前に訳した語を忘れてしまうことがままあるのですね。
東洋医学の分野に限らず、既存の訳書を検討すると、同じ用語で訳語が不統一のものが結構あります。
これにはいくつかの理由があるように思い、上のように訳者さんが以前の訳語を忘れてしまったパターンの他に、訳していて同一の語だと気づかずに訳語が違ってしまうケース、さらに訳者さんがそこまで意識せずに、同じ語の訳語を揃える、という意識さえもなく訳語がバラバラになっているケースなどもあるでしょう。
私は、原文の同じ語はできる限り訳語も統一する、という考えがあり、なぜなら、原文を提示しない場合に読者は訳だけを頼りに読むので、訳語が違っていると、読者側にはその語が原文では同一の語が使われていると判別ができないからです。
ただ、このメルマガなども既に長期にわたって配信しており、以前の号を見返すと同じ語で訳語が違ってしまって不統一になっていることがあります。
これらは書籍で発行するまでにはできる限り直したいところです。
反対に、同じ語でも文脈によって訳語を変えるケースもたまにあり、翻訳という作業はなかなか難しいものでもあります。
先行訳では冒頭を「精髄を補強。」としています。上で見たように原文では「精髓を添益して、能く精を秘す。」とあるのですね。
それを先行訳では前半部分のみを取り上げ、「添益」を「補強」としているわけで、これだけ短い文でも省略があることに驚かされます。先行訳をお持ちの方は補足してくださればと思います。
◆ 編集後記
「単方」の「山茱萸」です。今号も生薬ひとつでお届けしました。
かつて園芸ショップでこの山茱萸の盆栽を見たことがあり、実がいくつかついてとても魅力的に見え、欲しくなりましたが置いて育てる場所がないことに気づいて断念しました。その後そのショップはいつの間にか閉店してしまい、あの山茱萸がどうなったのか、他のお店に引き取られたのか、どなたかが買ったのか、気になるところです。
次号も引き続き単方の生薬をひとつ取り上げて読む予定です。次号は「牡蠣」です。
(2020.08.02.第376号)
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