ツアーナースが選ぶ、旅行中の救急バッグ[くすり類]
最終更新:2021.11.20
これまでの救急バッグシリーズ
記事の信頼性ってか、私たちについて。
前提としているFirst Aidのことなど。
大原則 看護師は市販薬といえども投薬NG
この法的な部分に加え
以前、プロにも検証してもらいました。
2019年にAHAのインストラクターさん御3方(パンフ上は2名ですが、当日ゲスト参戦してくださりました)共催・サポートの元、ツアーナースのためのファーストエイド講習を開催。その際、救急バッグについてもインストラクター・養護教諭・ツアーナースの3者視点から内容検討しまして。
そこでもやはり、外用も内服も各自持参が基本。トラブル回避のためにも、救急バッグには外用含めて薬は全ていらないという結論に至りました。ファーストエイドの教科書的に考えたら、確かにそうですよね。
となると、救急バッグに薬いらねーじゃん
はい解散としたいところですが、投薬はまだしも外用薬に関しては実際はガンガン使っちゃっている現状もありまして。
少なくともツアーで何も無しでは、弊害がありまくり。
プロにご意見頂いたのに、相反することを書くのは申し訳ないですが現実なんで。
例えば、虫刺され軟膏や湿布が代表的なところ。
学校現場で虫刺されにムヒや、捻挫に湿布と対応していることが多い中、ツアーでは不要!違法よ!と拒否るわけにもいかず、正直そんな気もなく。項目別に詳しく後述しますが、冷やしてだめで本人希望するならムヒくらい良くね?など思っている私。
他、続々事例を挙げますが
団体行動を離脱してまで受診する程ではなく、市販薬で様子みて終了後に受診でも良くね?と本人・保護者・団体同意の元で外用薬、場合によっては内服をすることもあります。
持参が基本っても、思いもよらない傷病にも発生しますし、誰もが漏れなく持参するとも限りません。
下手に薬を用いず受診をと言いましても、旅行中という状況下で厳しいこともありますし、何でもかんでも受診って言ったら看護師いらないじゃん。
それに、天候や事故による延泊で、体調悪化することも。第一選択じゃなくとも備えてとしての薬は必要だと思っています。
①はあるある系だと思いますが、②は今でも微妙かなと思っています。どう思います?
たまたま、内服があったのでほぼ慌てて内服してもらったものの、うーーんと悩んで、その場で養護教諭さんへ連絡し「事後で申し訳ないですが、この対応でよかったんでしょうか。」と言っちゃいましたよ。新幹線、鈍行で2時間半以上ある中で、状態悪化したらと思いまして。親も学校もOkグッジョブだったのでクレームには繋がらなかったにせよ、他のナースならどうしたのかな?と悶々。
この手の悶々案件、10年間山ほどあるわ。
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ひとまず、大原則の保助看法を守りつつ
看護師からの投薬にあたらないようルールに則って使うのも、最終手段として残しておきたい。そんな実情を、症例を交えながら救急バッグによく入っている薬を、外用薬・内服薬に分けて紹介していきますね。
*注 症例脚色しとるよ
個人情報保護のため、年齢や状況や部位など主旨にかけ離れない程度に、脚色していることを、ご了承ください。
外用薬
虫刺され軟膏
基本処置は、流水洗浄+アイシンング。患部も大事ですが、何に刺されたからわからん場合は特にも全身状態の観察も怠らず。
といいつつ、やっぱ脊髄反射的に「看護師さん、ムヒ塗ってー!」は多いですよね。うん、気持ちはわかるよ。
ムヒといえども薬は…とお堅く考えていましたが、救急バッグに準備してあって学校生活でも同様に処置しているのであれば、まぁ塗っちゃてもいいのかなという考えです。あくまで、本人希望かつ掻痒感が治らないなど軽い随伴症状が伴う場合。
課外活動だけでなく、高校の修学旅行でもありますね。
私、ツアーの事前準備では総合病院だけでなく、皮膚科クリニックも調べていきます。意外と利用頻度が高いし、ちゃっちゃと受診して処方してもらったほうが早いし。
え?虫刺され程度で病院?と思うかもしれませんが、活動に支障が出るくらい刺されて腫れてしまう子もいます。
*もちろん、最終判断は学校・保護者となる原則は同じ。
正直、つい最近の修学旅行同行でも刺されて足バーン!ぼーん!と腫れて歩けなくなり、私が助言するまでもなく、本人・学校が希望し皮膚科へ。
ステロイド軟膏&薬で翌朝には腫れも引き、元気に自主研修行っていました。良かった良かった。
救急バッグでよく入っているのは
ダントツでムヒSで、同率一位くらいでレスタミンでしょうかね。
よく入っているのはこちら
ムヒSとレスタミン、成分そんなに変わらんのと
ムヒの中でも最弱がS 唯一ステロイド入っているαEXもあるよと覚えておいて損はないです。だって、こいつら大概入っていますから。
ステロイド使用は控えたいところ。
ですが、ステロイド欲しいくらいに訳分からん虫に刺されて腫れるのが、山奥で受診できない場所なので、担任・保護者の同意の上で状況に応じて使うのダメですかね。ダメでしょうね。ダメかしら。
講習ではダメ!って言われた。えーきっついわー。山奥で、片道1時間とかあるんですけど。
本来、受診前に余計な薬塗らない方が良いとは思いますが、症状と旅行中という状況、夜間で睡眠にも支障が出そうなので、少しでも症状軽減できたらと考え、塗布に至りました。
使用前に、本人・保護者・学校の3点セットの確認、記録は必須。
もちろん、持参も多いです。
児童・生徒が各自でポケムヒ持参ってのもあるある。
正直、課外活動なんて虫除けしても刺されることもあるから、各自事前準備して頂きたいけれど、家庭事情も様々でしょうし。
稀ですが、持参の極みみたいなこんな子もチラホラ
リンデロンは強すぎかなーと思いつつ、パパがOKって渡してるならいいかなと静観。私、同行する学校の属性が凄まじく偏っているので、この手の案件めっちゃ多い。全然OKよと思っていますけれど、ダメなんかな?
元々、皮膚が弱いからステロイド各種持参とか、親が心配してなんでも持たせたと救急バッグより多種持参している子もいます。使用したことある薬なら、問題ないしね。ただ、状態確認はもちろん密にして、場合によっては途中で保護者連絡して様子見で良いか?確認したり。
スマホOKの学校だと、LINEで親にいますぐ聞けやとかよくやりますわ。(原則は、その保護者連絡LINEも担任介してですが)。
補足として
上の文章で意外と重要なのは“担任・チーフ許可のもと”ってこと。保健室、仮押さえのみで使用して初めて料金発生って場合もあり。
明らかに隔離が必要な内科的なもの以外で勝手に使用すると、チーフに怒られちゃいます。金かかるからね。怒られなくとも、なんか言われるよ絶対。もちろん、学校OKなら、何も言われない。
すげえ予算限られてるところだと、事前にチーフからなるべく保健室使わないでねとか言われる。稀にね。
要は、保健室利用することで追加料金発生と、お金が絡むとケースもあるので、団体許可と理由を事前にチーフへ確認。
これ、ツアナス業務上で結構重要です。地方の公立だと確率高し。
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虫刺され薬2強?で、ムヒと双璧で、かの有名なウナは入ってないの?
うん、こちらは滅多に見ないです。なぜならスポンジタイプだから。共有できないでしょ。
参考
虫刺されの基本対応
以下、虫刺されに関わらずですが参考リンクとして貼っているのは、私が基本としている、AHAのハートセイバーファーストエイドの内容に準じてそうなの選んでいます。
教本は流石に著作権上、載せられないんで代用的に貼っています。
ムヒシリーズの公式サイト
抗ヒスタミン軟膏
新レスタミン軟膏が多いですね。
軟膏だけでなく、内服もある市販抗ヒスタミンの代表的なやつ、それがレスタミン君。
限局的な蕁麻疹などに対し、全身状態観察継続+アイシングしつつ、第一選択じゃないけれど、受診前の砦的な手段として欲しいなとは思っています。
是非はともかく、これ系多いんじゃないでしょうか。
「なんか草木に触れて被れたんじゃね?」と思いつつ、アレルギーによる最悪な症状を想定し、全身状態の観察継続。本人、かゆいぜなんか薬くれーって言うから、白ワセで濁したけど全然効かないから、仕方ねえレスタミン塗るかという流れ。
症状が限局して、アナフィラキシー前駆じゃない可能性があるのであれば、旅行中断して皮膚科受診より、許可を得てレスタミン試す方が現実的な対応なのかなと思います。
あー、こういうこと書いていいのかな。今回の内容は、全部なんだかなぁと思いながら書いています。
あと、ワンパンチ式の瞬間冷却パックがあって冷やせる状況だったにしろ、捻挫も続々発生しやすいハイキング序盤で、虫刺されや皮膚トラブルで消費したくないな、後々もっとヤベェのに備えて温存しておきたいと思っちゃうんですが、ケチかしら。
ワンパンチ、せいぜい2個くらいしか持ち歩かないし。
参考:そんなレスタミン、公式サイト。
抗ヒスタミンについて
万能役的な軟膏
キップパイロール
成分・用途見ても救急バッグには、不要だと思います。
次の、オロナインにしろこの手の消毒軟膏的な、万能薬がとりあえず入っていることも多々ありますね。
キップさんは、ツアーで初めて知りました。都内小学校で入っている率の高さたるや。一度も使ったことない。
オロナイン
これも高確率で入っているけれど、使ったことないわ。以上。
白色ワセリン
大体、このタイプが入っていますかね。
衛生面や使い勝手から、できればチューブがいいけれど、ボトル型の方が安いですもんね。入っているだけでありがたいレベルなので贅沢は言えません。
点眼薬
まずは、涙と同じ成分の、ノーマルアイリスから。
みよ、この支障なさすぎな成分。
軽い違和感で、緊急性のある症状伴わず、本人希望があったケースですね。多いよね。これでも投薬になるの?ダメなのか?いいよね?と思って対応している現状。
さて問題の、抗菌薬。
ユメちゃんの言うように、一時離断して受診するまでもないけれど、なんとか対応しておきたい程度の症状。ありますねー。
全てに言えることですが
抗菌に関しても、こんな事態に備えて入れておく分にはアリなんじゃないかなと思っています。ダメかな(こればっかり)。
参考
定番、アイリスCL-1
抗菌Ver.
消炎鎮痛剤(貼る・塗る)
参考 よく入ってるやつ
ラクパスは、まともなリンク見つけられずカット。でもほんと、大体ラクパス。
パテックス
サロメチール
ラブ
あ、そうだ
絶対これ先生の私物でしょ?と言わんばかりに、モーラス入っている事、稀にある。先生の私物疑惑シリーズだと、ゲンタシンとかも。ゲンタ君、懐かしいな。臨床離れたら、会わなくなるのよ。あんなに仲良しだったのに。
アズノールとか、ラキソベロンとかプルゼニドとかも元気かな。
意外とリスパは、ツアーでも会うわ。小学生とか飲んでる。
内服薬
たまにトローチも入っています。あと、ストナも。トローチわかるが、ストナはなんで。
解熱鎮痛剤
小学校は、小児用バファリンなどのアセトアミノフェン
中学生以降は、バファリンAやEVEなどが多い気が。学校ごとにかなり差が。
女子の生理痛や偏頭痛対策として、持参し忘れた・飲みきっちゃったは多々ありすぎるので、その際は同成分の薬限定で渡して助けたい気持ち。
持参がなくなって同じの渡す分には、保護者許可いらないかなと思います。だよね?(不安)。
生理痛は
イブプロフェン率高いと思う。特に、EVE持ってる子ばかり。
修学旅行で街中にいる等でしたら、ドラックストアで自分で購入してもらうのが第一選択かと思います。
しかし、林間学校で山奥にいるなど、状況が許さない場合が多いのがツアー。
この場合、同じ成分だから素直に渡しても良さそうですが、看護師が勝手に投薬と誤解を生まないよう、担任へも共有してオープンにした上でがベターかなと思います。もちろん、経緯も記録に残す。
そんで、この事例。
最初「普段、バファリン飲んでいて。」と本人申告あり、あの青い箱のアスピリンかーじゃあ、救急バッグにないなと思ったですが、よく聞いたらバファリンでもLuna Jでアセトアミノフェンじゃん!と言う流れ。
EVEもそうだけれど、バファリンって色々あるので正式名称聞くの忘れずにと言うプチ情報。ツアナスやっていると必然的に市販薬、特に解熱鎮痛剤に詳しくなりますね。
結論としては
アセトアミノフェン・イブプロフェンを、予備として1箱ずつあればいいかなと思っています。
あと、特に中高生以上で
鎮痛剤を勝手に、友達同士でシェアしているのは多いです。一応、学校サイドからも事前に喚起はしてくれていますが、まぁやっちゃうよね。どこまでツアナスが関与するかですが、私は軽く注意する程度かな。
「友達から痛み止めもらって飲んだんですが、良くならないです。」と、その前に来てよ...と内心思っちゃう状況で、看護師対応に至る場合もちょいちょい。
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以下、主な解熱鎮痛剤シリーズを
ご参考までに。覚える必要は全くなし。ナロンやセデスもあるけれど、キリないし都度ググりゃいい話なので。
バファリンシリーズ
EVEシリーズ
ノーシンシリーズ
総合感冒薬
ルルやパブロンが入っている場合もあるけれど、
その状態で、コロナ禍は隔離対象となるので不要だと思います。
市販の総合感冒薬は、ほんと種類豊富。
ルルとか、パブロンSゴールドWが入っている場合が多いです。
参考:パブロンシリーズ
ルルシリーズ
トローチ
9割方、コルゲンですね。
めっちゃ余談ですが
東京都のコロナ療養ホテルの置き薬。
鎮咳目的として、このルルシリーズのホニャララと、コンタックと2種あり。医師指示でお渡しすることが多かったです。医師がいますがホテルなので、外部受診しない限り市販薬しかお出しできない。
ちなみに、解熱の置き薬はアセトアミノフェンのみ。
ロキソニン、イブプロフェンも、持参していればそのまま使用してもらってて。でも、Drによっては入所中はアセトに切り替えることも多かったですね。
5波はデルタ株で高熱多かったためか、外来でロキソニン+アセトアミノフェン/回で処方するところが続出。
そのまま入所で、こちらホテル部隊から見たら「何じゃこの処方?!」と。
ホテルのリモート医師指示で、速攻でアセト単剤に切り替えられるという流れ懐かしい。いやー5波はほんと地獄でしたね。
胃腸薬各種
これらも、よほどの事情がない限り渡しませんねぇ。
先生は、こっそりもらいにくるかな。
参考
よく入っているやつ。
第一三共胃腸薬
大正漢方胃腸薬
ビオフェルミン(整腸剤)
たまに、救急バッグにでかい瓶ごと入ってることがあって、重いし幅とるし使わねえしでイラっとする。
正露丸(下痢止め)
酔い止め
酔い止め無法地帯問題など、詳しいことはこちらに書いています。
こちらの使用頻度は高いのではないでしょうか。
もちろん、他の薬同様に投薬禁止なので、本人の強い希望で担任確認の元という流れ。酔い止めに関しては、担任確認はしても保護者連絡しないかな。どうでしょ。
正直、わざわざ旅行中に電話きた!え?酔い止め飲んでいいか?勝手にどうぞって流れになりそうじゃないすか。
乗り物酔い対策で書いている通り、薬としておすすめはアネロンですが、救急バッグに入れておくとなると話は別。
成分が一般的なものとかけ離れているので、安易に渡せない。メジャーな成分な、トラベルミンが安全パイかなと思います。
小学生以下に新規(はじめての内服)で渡すのはうーーん、なので15歳以上OKの水無しタイプに絞っちゃっていいのかなと思いますが。小学生で、帰りの分なくしちゃった飲みきっちゃったって子も多いから、どこまでフォローするかですよね。友達同士で勝手にシェアされても困る。
それ込みでも、子ども用は入れておかなくて良いかなと思います。救急バッグの薬は、あくまでどうしてもの時の予備ですし。
まとめ
現在(2021年11月)ツアー大繁忙にてユメコちゃん多忙につき
結論としての薬は私の意見を書きました。ユメちゃん聞いてみて修正あったらまたその際に更新しますね。
これはかなり賛否あると思うので
あくまでこういう考え方もあるよ程度でお願いします。
何度も何度も書きますが、投薬NGであくまで本人の意志で内服でなければダメ。ただ、旅行はイレギュラーが多く受診も簡単ではないことが多いし、帰宅後受診するまでに市販で温存という選択肢も考慮したい。
となると、やはり最低限は欲しいなという考えです。
今後この記事も、随時修正していきます。