「コーヒーが好きなんじゃなくて、喫茶店が好きなんだ。」と息子は言った。 コーヒーにまつわる話 その2
我が家では、毎朝コーヒーを飲む。その習慣は、もう30年近く続いている。だから、コーヒー豆を欠かすことはできない。コーヒー豆にもさまざま変遷があった。デパートで買ったり、気に入った喫茶店で買ったり。その中の一つの喫茶店の話。
子どもたちがまだ、学校に通っていた頃。土曜日の午前中、長男が学校へ出かけ、次男だけが家に残っているという時期があった。次男と夫と私の3人で、よくお気に入りの喫茶店に出かけた。自分たちより少し年配のふんわりと優しい雰囲気のご夫婦がやっている小さな、でも、とても有名なお店。LP版のレコードでシャンソンをかけていた。
ご主人がペーパードリップで入れるコーヒーは、少しあっさりしたコーヒー。いつまでも口の中にコーヒーの余韻が残るような、そんなコーヒーだった。
その店で次男はよくモーニングを食べていた。コーヒーはまだ飲める年齢ではなかったかもしれない。
コーヒーを飲めるような年齢になってからも、次男は毎朝コーヒーを飲むわけではなかった。よく、「自分はコーヒー好きなんじゃなくて、喫茶店が好きなんだ。」と言っていた。その原点はこの店にあるかな、とちょっと思う。静かで、とてもシックな内装だけど、姿勢を正してコーヒーを飲まなくちゃならないような、そんな堅苦しさは全然なくて。小学生連れの家族でも、まったり過ごすことができた。
その店には、長男を連れて4人でもよく行っていて、長男は「パキスタンティ」を好んで飲んでいた。ちょっと甘いこくのあるミルクティ。
長年通ったその店も、ご夫婦の年齢的なことから、2年ほど前に閉まってしまった。今は、違うコーヒー屋さんになってしまったその店の前を通るたびに、子どもたちと来ていた頃の温かさを少し切ない気持ちで思い出す。
次男の喫茶店好きについては、またいつかの機会に書いてみたい。