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憂国考察記事#3 The Dancers on the Bridge

【関連作品】

「シャーロック・ホームズシリーズ」:『緋色の研究』(A Study in Scarlet)、『唇のねじれた男』(The Man with the Twisted Lip)、『空き家の冒険』(The Adventure of the Empty House)、『ソア橋』(The Problem of Thor Bridge)、『恐怖の谷』(The Valley of Fear)

「憂国のモリアーティ」1巻:#3 The Dancers on the Bridge


「憂国のモリアーティ」の第3話はタイトルに元ネタがあるのかどうか判断が付かない。日本語訳は『橋の上の踊り子』。原作で「踊る~」と言えば『踊る人形』(The Dancing Men)であり、「橋」と言えば『ソア橋』(The Problem of Thor Bridge)だが、英訳タイトルとの類似性はそこまで見いだせない。

トリックで考えると、殺人に見せかけた自殺という結論の『ソア橋』と入水自殺に見せかけた殺人の『橋の上の踊り子』は対をなしている。そういう意味では、ソア橋を意識したタイトル名なのかもしれない。

第3話は原作でおなじみのモリアーティ教授の仲間がお目見えする。

モラン大佐は、原作では『空き家の冒険』に登場する。音の出ない銃を使うのも原作と同じ。「憂国のモリアーティ」の中でポーカーのイカサマを疑われているが、原作では実際にイカサマをしている。さらにポーカーをしていた「クライテリオン・バー」(CRITERION BAR)は、原作の『緋色の研究』でワトソンがホームズに知り合うきっかけとなった場所。この辺りにも原作ファンの心をくすぐる小ネタが挟まれているわけだ。

さらに、フレッド・ポーロックも登場する。登場時はファミリー・ネームを明かさず、ただフレッドとしていたのも心憎い。原作でポーロックと言えば、『恐怖の谷』でモリアーティ教授を裏切ってホームズに内通していた人物。原作ファンは「憂国のモリアーティ」で、フレッドが裏切るのだろうかというひやひやした気持ちを抱えながら読み進めることになるのだ。

加えて、外せないのはルシアンが放り込まれていたアヘン窟。原作でアヘン窟と言えば、『唇のねじれた男』だ。ワトソンが知人をアヘン窟から助け出す場面から始まり、アヘン窟でホームズと遭遇する。ホームズは変装の名人とされているが、原作のこの物語ではもう一人変装の名人が登場する。フレッドの変装術という、原作にはないキャラクター付けはこういった原作の影響があるのかもしれない。

※Christine SchmidtによるPixabayからの画像

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