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短編

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短編小説まとめです
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#少年

いつも寝てるてる子

俺のクラスにはてる子と呼ばれてる女子がいる。 本名は花山陽菜。てる子ではない。 こいつは授業中も休み時間もずっと寝ている。 体育の授業とか、お昼ご飯とか、掃除の時間なら寝ないだろうと思うが、いつだって船をこぐ様に頭をゆらゆらさせて参加している。 「いつも寝てる子」だから「てる子」。 ここまで話をすると、「その子、虐められてないの?大丈夫なの?」と普通心配するらしい。 近所のおばちゃんにてる子の話をした時にそう言われた。 言われてみれば。と俺は思った。 ところがどっこい

通学路に人魚の死体落ちてた

みーんみんみん、みーんみんみん。 人魚が路上で死んでいた。 いつもの朝、通学路の途中の歩道にうつ伏せで死んでいた。 縮れたラーメンのような長い長い髪が両腕に巻きついている。 下半身は乾きかけでぱりぱりしていた。 きたないなあと俺は思った。 そのまま通り過ぎようとしたけど、そういえば今日の一限目は算数だ。宿題の答えは書いてない。行きたくないなあ。 そうだ、人魚の死体を埋めに行こう。先生にはこう言うんだ、「人魚の死体を埋めに行ってました。そのまま放っておくなんて、僕できなくて。