第三の人格 テコンドーの達人パクとはなんだったのか?

宮沢尊鷹がニコライによる優希ちゃん拉致事件を最後に猿空間送りになって1116日、もう3年と1ヵ月近くが経ちました。

祝うべきなのか悲しむべきなのかよく分かりませんが、今回は猿空間送り3周年の特別企画として、鷹兄が今のところ最後に闘った相手であるヘンリー・ジーキル……ではなく、彼の第三の人格であるテコンドーの達人パクについて考察していこうと思う。

「よりにもよってコイツかよ…」と思った方も多いだろうが安心して欲しい。実はかなり奥深いキャラなのだ。いや、正確にはコイツ自身は薄いけど(台詞4つくらいしかないし)展開自体は中々面白い。

今回はパクの扱いと元ネタの考察、その強さについて紐解いていく。


◆第三の人格 テコンドーの達人パク とは

第三の人格 テコンドーの達人パクとはシリーズ累計発行部数1000万部突破の大人気格闘漫画 タフシリーズの3作目 「TOUGH 龍を継ぐ男」に登場したキャラクターである。

作中では灘神影流とバスターズ(米国)による5対5マッチの副将戦で宮沢三兄弟の長兄、宮沢尊鷹と対戦した。

とは言ってもパクが姿を現したのは終盤。先に尊鷹と対峙したのはヘンリー・ジーキルという男だった。
彼は尊鷹と同じく米軍製の義足を装着したサイボーグ・ファイターなのだが、その真の力は彼の中に眠る、怪物ハイドと呼ばれる凶暴な第二の人格にあった。
名前から分かり通り、このキャラクターの元ネタは『ジキル博士とハイド氏』、解離性同一性障害の代名詞としてよく使われる小説である。
まさに2つの人格で闘うキャラクターとしては納得のいくモチーフなのだが……問題はハイドとの決着後。野獣のような凶暴性とスピード、義足に仕込まれたブレードを駆使する怪物ハイドであったが、さすがに作中屈指の戦闘力を誇る尊鷹に一歩及ばず敗北。読者もあの尊鷹が相手ということで「まっ なるわな…」という反応であった……

だが、ここから猿展開発動!!

なんとジーキル、ハイドとは異なる第三の人格 テコンドーの達人パクという人物に豹変(ついでに顔まで東洋人のように)。急に今までのハイドの行動はすべて自分の命令だという謎の自分語りとテコンドーを強さを自慢しながら尊鷹を強襲。散々二重人格キャラと思っていたところに謎の韓国人キャラが生えてきて尊鷹と読者も唖然。

しかし、義足を使いこなすジーキルや獣のような予測不能の攻めを繰り出すハイドと違い、テコンドーという既存の型にはまった格闘技を使うパクの動きの予測は尊鷹にとって容易く、回避→回し蹴りのカウンターで瞬殺。

登場から6ページでこの結末……

◆このキャラを出した目的は…!?

・二重人格キャラを捻じ曲げて突如登場。
・欧米人であるジーキルの第三の人格がテコンドー使いの韓国人。
・引き延ばしキャラにしては瞬殺すぎて引き延ばしになっていない。

と、あまりに出オチで過ぎて登場した意味が皆無のキャラクター、それが第三の人格 テコンドーの達人パクです。

関連する作品にヘンリー・ジーキルが載っているんスけど、いいんスかこれ?
(このキャラを関連扱いにする傲慢さは好感が持てる)


◆語録スターター・キット

(ナレーション)第三の人格 テコンドーの達人パク
パク「ククク…違うな」
パク「ハイドに左足を切断するよう命じたのは俺だ クククク」
パク「世界最速の足技格闘技に最強の義足を搭載しているんだ」
パク「お前の顔をぶつ切りにしてやる」

引用:猿渡哲也/集英社 『TOUGH 龍を継ぐ男』21巻

語録弱き者……(出番5、6ページの出オチキャラだからね)。


◆ツッコミどころ

怒らないで下さいね、ツッコミどころしかないじゃないですか

◆どうしてアジア人っぽい人格があるの?

恐らく白人であろうジーキルの第三人格がアジア人っぽいパクなのはかなり謎に感じるだろう。だが、これについてはある程度納得できる理由がある。

みなさんは「ビリー・ミリガン」という男性をご存じだろうか?
(実在していた人物で私は子供の頃に観た「世界まる見え!」という番組で初めて知りました)

解離性同一症であった彼はその身に24人もの人格を宿しており、分かりやすく言うと多重人格者であった。しかも、基本人格であるビリーはアメリカ人男性だが、その他の人格にはイギリス人やユーゴスラビア人、女性も存在しているのだ。

彼の事例を参考にするとジーキルの第三人格にアジア人っぽいパクがいても何ら不思議はない。

人種はともかくパクはどうやってテコンドーの達人になったかだって?
知らねーよそんなの。


◆どうして"スリー・フェイス"なのにジーキルはパクを知らないの?

ヘンリー・ジーキルの二つ名は"スリー・フェイス"であり、明らかに三重人格を意識した名称となっている。外様である鬼龍ですら知っているのだから裏の世界ではかなり有名なことが伺える。
なのに基本人格と思われるジーキルはパクという人格を認知しているようには見えなかった。二つ名になっているあたりハイドとパクはそれなりに人格交代を行い活動していたはずだがバスターズのメンバーは誰か教えてくれなかったのか?これはかなり不自然に感じる。
仮説としては二つあり「実はパクも認知していた説」「パクが隠ぺいしていた説」が挙げられる。

実はパクも認知していた説
ジーキルはパクを認知していたが自身の脚を切断したハイドの方を恐れており、パクを無害な人格と思っていた可能性がある。こう考えればパクがハイドに指示して脚を切らせた理由にも納得がいく(単に自分がやると痛いから嫌だった可能性があるが)。
無害な人格と思っているから尊鷹との会話でも特に言及しなかったのだ。

なんでハイドはパクの言うこと聞くんや……?

パクが隠ぺいしていた説
これは単純に"スリー・フェイス"や第三の人格に関する話題や情報が出た時にパクが瞬時に人格を乗っ取り隠ぺいした説だ。かなり強引な説だがジーキルに意識させず瞬時に人格を乗っ取った作中の描写を見る限り不可能ではないと考えられる。

なんでそんな面倒くさいことするんや……?


◆元ネタの考察

元ネタも何も猿何考と断言してしまっても問題ない……だと身も蓋もないので、一応考察していく。

よく定説として挙げられるのは2015年に放送された「ジキルとハイドに恋した私 ~Hyde, Jekyll, Me~」という韓国ドラマが元ネタではないかという説。

ジキルとハイド韓国、そして尊鷹とジーキルが闘った場所が遊園地でこのドラマの舞台にも遊園地が出てくるので、一通りの要素はそろっている。しかし、これはこじつけがすぎるというか……かなり苦しい。

あまりにもパクの登場が突拍子もなさすぎて、こんな展開が無から生まれたら恐怖だが、何か元ネタがあっても恐怖なのだ。

だがここで、あるPCゲームのキャラクターがスリーフェイスの元ネタではないかという説が浮上してきた。それは「オトギフロンティア」というゲームに登場するジキルというキャラクターだ。

彼女もヘンリー・ジーキルと同じく『ジキル博士とハイド氏』と元ネタとしており、表の人格のジキルと裏の人格のハイドが存在している。これだけだとモチーフが同じなだけだが……なんと、あるシーンで「第三の誰かが…」という三人目の人格を示唆するセリフが存在するのだ。

しかもボボパン・シーンで。
※オトギフロンティアには一般版とR18禁版の「オトギフロンティアR」があります。

※問題のシーン

ジキル「あっ、あなたとすると、いつもの冷静な私じゃないみたいでっ、はあっ、ハイドでもない第三の誰かがいるみたい…」

引用:オトギフロンディアR ©KMS inc. All Rights Reserved.

私「な…なんですかあこのセリフはァ の…脳裏に変なオッサンが浮かんできたですゥ う あ あ あ あ あ あ あ(PC書き文字)」

オトギフロンティアでのジキル実装はテコンドーの達人パクよりも前なので時系列的にも問題が無い。猿渡先生がこのキャラクターからインスピレーションを得てテコンドーの達人パクが生まれた可能性が大いにあるのだ(あるわけないだろ…)。

どうでもいいけどパクの存在知ってる状態でこのシーンみたら笑ってしまうと思う、てか笑った。


◆パクの戦闘能力について

今やキー坊を抜いて最強キャラ扱いのメカ・尊鷹とそれなりに戦えていたジーキル、負傷させたハイド、この二人と比べ出オチキャラとして瞬殺されたパクは基本的にクソ雑魚認定されている。しかし、肉体の支配力に関しては凄まじいものがあり、凶暴なハイドも従っている人格のパクが最弱とは流石に納得しづらい。描写だけを見ると……
ハイド>ジーキル>>パク
なのだが実際は
ハイド>パク>ジーキル
だと私は思う。
ハイド最強はまぁ当然として(だからなんでコイツはパクに従うんや?)、ジーキル戦の尊鷹は様子見&いつもの舐めプで戦っていた可能性がある。
実際ジーキルは「人間としての基本性能が違う」とイキっておきながら空中ボボパンの後に尊鷹の回し蹴り一発で敗北している。パク戦は尊鷹がそれまでの戦いで温まっていたのと、いい感じで決着がついたのに余韻を台無しにされてイラついて本気だったと考えればあの瞬殺も納得がいく。
また、既存の格闘技相手の方がやり易いと言っていたので、尊鷹にとっての"スリー・フェイス"は作中の描写どおりの強さだっただけな気がする。

経験の浅い龍星あたりがパクと戦っていたらかなり苦戦したのでは?それまでの怪物ハイドでもかなり怪しいけど。
というかメカ・フット持ちは尊鷹以外無理


◆終わり

第三の人格 テコンドーの達人パク。パク自身は別に面白くもなんともないが、このキャラの存在自体は面白いという何とも言えないキャラクターとなっている
というかパクがいないとジーキル&ハイドもあまり印象に残らないキャラになってしまう気がする。

いっそのことジーキルとハイドの人格が融合してパクが誕生する闇の猿展開のほうが良かったのではないか?……いや、完全にギャグっスねこれは

とにかく『ジキル博士とハイド氏』を元ネタとした二重人格キャラに急に第三の人格が生えてきて、それがテコンドーの達人の韓国人という突拍子の無さがすごいのだ。

何食ってたらこんな展開思い付くのでしょうか?


出典:猿渡哲也/集英社 『TOUGH 龍を継ぐ男』20巻
猿渡哲也/集英社 『TOUGH 龍を継ぐ男』21巻