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ショートショート

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ショートショート小説
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#短編小説

君の沼|短編小説

生まれてこの方、あんなに美しいものをみたのはあれが初めてだった。 月の明かりが反射して、…

波のように、泡のように|短編小説

一 海 ジャブ、ジャブ、と波打ち際を歩く。 波が引く度に一歩二歩と歩いて、波が来たら止ま…

UMA同好会|ショートショート

『UMA』って、ご存知だろうか。 Unidentified(正体不明の)Mysterious(謎に満ちた) Animal…

坂の上のさかいめ|ショートショート

ざくざくっとふみしめた下柱の感触は、クッキーに似ている。 それなら冷たくて、土のような、…

今日のご飯は、夢の外│ショートショート

その日、彼が『定食屋ササミ』に行くと、カウンターには背筋の綺麗な青年が座っていた。 「こ…

ここは、とある学校|ショートショート

ピンク色の髪の毛を、サラリとなびかせて、水色のランドセルを背負って、今日も遥斗は学校へ行…

彼女の秘密|ショートショート

明け方、梟が窓をこんこんと叩く。 瞬間、私は悟る。 遂に彼女は逝ってしまったんだ。 橙色のスカートで式に向かう。 葬式を家でやるのはいいとして、ドレスコードを鮮やかな服にするあたり、死んでまで相変わらずだ。 本人は薄緑のドレスを纏って棺に納まっている。 参列者はまばらだった。 こんなに静かだと、あの日のことを思い出す。 死ぬかと思った。 森で熊に遭遇し腰を抜かしていたら、彼女が現れたのだ。 彼女がふわっと駆け寄り何かを囁くと、熊は去っていった。 次に彼女は私をみつめ、人

愛を誓う|ショートショート

彼女を初めてみたのは、学校の屋上だった。 裸足で足をぶらぶらさせて、彼女は青い空を見上げ…

森と真実|ショートショート

ある人は言う。 「あの家には魔女がいる」 ある人は言う。 「普通の家族だよ」 真実は時に、見…

紅子と蒼一|ショートショート

「蒼一と言います。」 随分と洒落た男の子でした。 黒い髪は耳の形に沿って綺麗に切り揃えられ…

分福、茶釜|ショートショート

「私が死んだら、骨を、まるごと盗んでくれないかしら?」 ある日、義祖母から突拍子もない頼…

七夕ランデブー|ショートショート

本日の天気は快晴、絶好の七夕日和。 七夕は、織姫と彦星が年に一度会える日だと、幼い頃に教…

夢の中で今日もまた、ごはん │ ショートショート

「実は今度、この店、たたむんです。」 食後の焙じ茶を出しながら、ササミさんが言った。 「だ…

夢の中で今日も、ごはん │ ショートショート

目が覚めると、野原の真ん中にいた。 屋外の筈なのに、何の音もしない。 ぐるりと辺りを見回すと、店が一軒。彼は迷わず歩き出した。 ここは、彼の夢の中なのだ。 彼は、いつも同じ夢を見る。 夢の中で、彼はまず野原にやってくる。 そして、この店に入るのだ。 暖簾の出た戸口の横の表札には、大きくこう書かれている。 『定食屋ササミ』。 この定食屋は、現実も夢も含めて、彼の唯一の行きつけの店であった。 「いらっしゃいませ。」 ササミさんは彼を見ると、にっこりした。 カウンターには既に一