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ショートショート

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ショートショート小説
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#あなたに捧ぐ物語

骸の花

ある日、足の親指が喋った。 「すみません、 貴方に死なれると困るんですけども」 今から話す…

大晦日の珍客

寒さが肌を刺す大晦日。 彼女は駅までの小路を歩いていた。 早く着いちゃうかな。 腕時計を見…

僕とラジオと君と星

毎週木曜、22時05分。 『おはようございますの人もお休みなさいの人も、ようこそ"おおいぬラ…

小さな円形劇場

生きていれば、どうしようもなく悲しくなる時はあって、 それは理由がある場合もあれば無い場…

線路のとなり、電車がうるさい三角公園

学校は嫌い。だって友達がいないから。 でもこの頃の放課後はちょっと好き。ほんの、ちょっと…

捨て猫かしら

ある冬の日。 その日は雪がはらはら降っていて、家路を急ぐ彼女の吐く息は白くなっていた。 に…

高嶺の花

高嶺の花。 それは、遠くに見えてはいるのに決して手が届かないものー。 『拝啓  山茶花の花びらが往く道を彩るこの頃、如何お過ごしでしょうか。  貴方と偶然お会いしたのはまだ蝉が鳴く暑い季節でしたのに、あの日のことは今も昨日のことのように思い出します。』 …そこまでを書いたところで、彼女は手を止めた。 そろそろ本当のことを言うべきなのかもしれない。 彼と出会ったのは偶然だった。 母の使いで荷物を抱えて山道を登っていた夏の日。 通りかかった彼が、運ぶのを手伝ってくれたのだ。

鳴かない鳥

「インコ?」 「そう、インコ」 彼の問いに、私は鸚鵡返しに繰り返す。 知人からインコを譲り…

小さな街と林檎の森

ここは、とある小さな小さな街。 若者たちは大きな街に移り住み、店はどんどん少なくなり、す…

ミルフィーユ

今から100年以上も経った遠い未来。 ロボット工学は目覚しい発展を遂げました。 それにより多…

レースゲーム

あと54秒。 僕は手元の時計を確認する。 食うか食われるか、一分一秒を争う疾走感。 口元が思…

小さな炎

魔法学校は、いつも放たれた魔法でピカピカと光っている。 けれど本当に美しいのは魔法ではな…

コールセンターの恋人

受話器を置いた彼女は、ゆっくりと微笑んでパソコンに話した内容をメモに取った。 彼女のデス…

透明な子ども

少女は生まれつき透明であった。 取り上げた産婆は驚いて、思わず赤子より大声をあげたそうだ。 何故そうなのかは分からない。 色のあるこの世界に産まれ落ちた、透明な子ども。 彼女は透明ではあるが存在はそこにある。 水が人の姿をしていることを想像するのが、1番近い。 透明だが、光は反射し色を映す。 従って、晴れていれば少女の身体には青空が映り、雨が降れば水滴が無数に流れ落ちた。 ある日、少女は公園で遊んでいた。 少女は友達が作れないのか作らないのか、いつも1人で遊んでいる。 そ