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落ちた会社に送った作文

 就活が名実ともに解禁になって、いろんな合否というか否を突き付けられてるところです。志望業界的にESのカロリーが高いのでESで落とされると結構しんどいっすね。なんで、再利用じゃないですけど落ちた会社に送った作文こっちに流しときます。いいのかな。別にいいか。落ちたし。

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「辞めようかなって思ってるんですよね」
 出勤早々、ちょっと泣きながら S さんが言った。バイト先の年上の後輩、滅法明るい S さん。推しのために 18 連勤。根性もある。そんな彼女が泣いていた。
 やらかしましたか、と聞くと遠慮がちに頷く。それで大体察しがついた。私たちのバイト先、できたての会社が運営する、更にできたてのバレエ教室は、基本人手不足だ。故に勤務中はワンオペで、分からないことがあってもすぐに誰かに相談できない。
 なので当然間違えることもある。すると社員の M さんから電話口でお叱りを受けるのだがこれがとてもつらい。今日の S さんはそれだった。
 ところで、私は可愛く言えばうっかりさんで、そんな時は大体間違えてきた。そこで私は犯してきたミスの全てを、時折口が過ぎる M さんへの愚痴を一つのノートに纏めている。ミスを繰り返さないためのいわば前向きデスノート。
「二回目が無ければいいですよ」
 Sさんはノートを開くと納得したように頷いて、私に業務を引き継いで帰っていった。これで辞めたら、デスノート見せ損だなと思ったが、Sさんは辞めなかった。ミスも減った。あとなぜか私に敬語を使うのもやめた。

 私は今、就活を理由にシフトに入っていない。聞くところではデスノートはSさんの次なる新人に引き継がれたらしい。役立っているな
ら、在りし日の私も報われるというものだ。

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