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​ 「さぁ、お家に帰ろう」

電話越しに

「革命を起こすから、着いてきて!」

と少女は、ぽつりと言った・・・


(全五話からなるストーリーの一作目)

【某会話劇企画 応募作品】(2012/12/08 執筆)

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サチ(18歳・B型)

テル(18歳・A型)

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昼下がり、空港行きのモノレール車内。

ビジネスマンや家族連れの旅行者達に混じって、

ツインテール女子が、並んで座ったオタク系男子と話している。

「今、死んだらとしたら、後悔しか残らないじゃない?」

「はー?  急に言われても・・・」

「この国は、平和過ぎるのよ! 自分の命は、自分で守らなきゃ!」

「さっきからそれは、分かるんだけど、なんで空港? なんでオレ?」

「携帯見てたら、あんたのメアドが残ってたからメールしてみたら、

超っパヤでレスがあって、こっちこそビックリしたのよー!」

「そりゃー、ビックリするよ! あれから何年だ?」

「相当、暇だったんだろうなーって」

「て、おい!」

「制服のまま寄った原宿の占い館で、将来は蔵9つ持つとか言われてたから、期待してたんだけど? 出世してなくて安心したー」

「そんな事、良く覚えてるよなー。でもわからないぜ?」

「その貧乏臭い格好で、蔵なんて一つも持てるわけないでしょ!」

「これでも頑張ってるんだよ? 色々ありすぎて、上手く行ってないだけ!」

「?」

「どうせ、全ては運次第なんだなーて、思い始めてる」

「変わってないなー」

「なんだよー?」

「でも、君のそういう所は、好きだったんだよ!」

「な、なんだよ! 急に昔の事言うなよ!」

「どうせ、運を切り開こうとか人脈広げようとかしてないんでしょ?」

「だーかーらー! 最近色々あるじゃん? 

経済沈んだままだし、地震あるしー」

「まっいーやー。呼んで正解! 多分・・・」

「いったい、なんなんだよ!」

「私、革命起こすから!」

「あのさー? 革命って言っても、色々あるでしょ?」

「色々本は読んだわよ、リンカーンからヒトラーとかまで」

「なんか良くわからないけど? 

本読んで革命なんて起こせたら、誰でもやってるんじゃない?」

「そうなのよ! 分かったのよ!」

「え?」

「読むだけじゃダメなのよ! 一番大事なのは、信念や情熱!」

「あー? 案外そうなのかもよ?」

「そして祭り事を最後まで成し遂げる事。これが重要!」

「そもそも、お前だけで出来るのかよ?」

「やってみなきゃ、わからないじゃない! 

想像で物を言うのは相変わらず変わってないよね? 

だから何も前に進んでないんだよ!」

「そ、そんな事言うなよ! お前の方こそどうなんだよ? 

絵本作家になるとかって夢、どうしたんだよ?」

「あと一歩の所まで行ったんだけどねー、

専門学校の先生と上手くいかなかった」

「え? マジ?」

「君が言ってた様に、運とか巡り会わせってあるのかもしれないよ?」

「すげーな。リア充っぽいわけだー」

「そうなのよ!」

「でも、そんな事するんだったら、別に空港まで行かなくても、

駅前の小池屋でも良くねー?」

「私も最初はそう思ったんだけど、

2階で毎日必死になって働いてるぶーちゃん見てると悲しくなってきて、

ここの世界は違うんだって・・・」

「ぶーちゃん?」

「時給780円で!」

「知り合いの人?」

「多分、あれはそんな感じ! 鈍くさそうだったし」

「勝手に決めつけない方が・・・」

「(遮って)煎り胡麻の場所聞いたら、あれこれ余計な事話してくるのよ!」

「え?」

「セサミンがどうだとか、健康がどうだとか、あんた、みのさんかって!」

「・・・まー、なんだ? 人には、それぞれあるんじゃないのか?」

「そう! あの人にはあの人の生き方があって、

必要とされている場所と道はあるのよ!」

「でもなー」

「大丈夫! 例え捕まったとしても、銃では撃たれないから! 

せいぜい2,3年刑務所に入るだけ!」

「え? 別に心配してないし、て大丈夫なの?」

「それくらいは、大丈ヴィ!」

「いやいやいやー! お前の頭の方だよ!」

「え? 頭は撃たれないでしょ!」

「・・・」

「(自分の髪の毛を触りながら)あー? これ?」

「私考えたのよ! この国で、美少女すぎる革命家っていないじゃない?」

「ん? 自分からは、言わないんじゃないかなー?」

「あ、間違えた。健気で美少女すぎる革命かね!」

「健気?」

「そう!」

「で、何で赤髪? わざわざ染め無くても!」

「勇者のイメージは、いつもヴァンパイアレッドなのよ!」

「どこぞのアニメのヒロインですか?」

「そんじゃそこらのヘボ作品に興味は無いわよ! 断言しても良いわ!」

「え? 影響受けてるんでしょ? 受けてるんだよね?」

「んー?・・・ま、長くなるから言いたくない!」

「いーよ。なんとなく分かるから」

「下手人なんぞに分かってたまるかーい!」

「まさかの時代劇!?」

「そんな事は、どーでもいいやー」

「うん。じゃあ、なんでオレまで着いていかなくちゃいけないの?」

「そう! それが実は大事な役目なんだからっ!」

「はー?」

「革命には、歴史の証人が必要でしょ?」

「?」

「知らないの? 文字で残さないと、後世に伝わらないでしょ?」

「文字? ボク、字汚いですけど?」

「読めればいいのよ!」

「携帯のメールとか、カメラで動画撮ってるだけじゃダメなんですか?」

「なんか神秘性にかけるのよ! 

ネットで偽物のムービーが上位で流れてるでしょ?」

「あ? ああ・・・」

「あんなのを取り締まるべきなのよ! 

TVとかアニメの著作権うんぬんとか言ってる前に!」

「え? 著作権は大事なんじゃないかなー?」

「毒されるの!」

「え?」

「偽物を信じてしまったが為に、脳が毒されるのよ!」

「毒?」

「そう! 知らない間にクモにやられてるんだから!」

「クモ?」

「そう! 南米のクモに気づかない間に刺されるの! 怖いでしょ?」

「怖いねー。でも、今時どこでも防犯カメラがまわってるでしょう?」

「だから、偽物っぽい映像はダメなんだってばー! 

私の事をよーく分かってくれてる人が、記録してくれなくちゃー!」

「で、何年かぶりに会ったオレですか?」

「そう!」

「国際線で?」

「そうよ!」

「そもそも、そんな事は動物園に言えば言いじゃないのかなー?」

「全国回ってきたけど、どこでもマイクがある場所は建物の中なのよ!」

「そう?」

「プレハブとかだけど、だから無理なの!」

「じゃあ、駅のホームとか? 国会議事堂の前とか?」

「今時聞いている人いないでしょ? 

二番煎じで、いまいちインパクトかけるし」

「で空港?」

「そう! 水際で阻止するの!」

「水関係無いけどね?」

「島国だから、そう言ってるだけね」

「あのさー・・・」

「何?」

「えーと。ビルの中にプラネタリム出来たらしいから、

気になってるんだけど?」

「行かない!」

「えー」

「私、行ったもん!」

「行った!?」

「そう、先週、下見に来たの!」

「なんで?」

「え? 下見は大切でしょ?」

「じゃなくて、星に興味無かったじゃん?」

「興味持つ様になったの! 別れてから」

「そうなんだ・・・」

「あそこ、コーヒー飲みながら星空見られるからいいよねー」

「オレ、行ってないし、コーヒー飲めないし・・・」

「人間って成長するから、考え方や興味も変わるのよ」

「そりゃそうだけど。そんな事言って、

本当は先週やる予定で行ったんじゃないの?」

「そんな事あるわけないでしょ!」


乗っていたモノレールが、空港駅に到着する。


空港のインフォーメーションコーナー。

女性係員が場内に向かってしゃべっているマイク

を取り上げるツインテール女子。

肩から下げた白のスポーツバックから取り出した

『パンダNO!』の手作り看板を掲げながら、

「パッ、パンダさんを開放しろ! 

できれば、全ての動物園の動物を野生に戻せ!」

とマイクに向かってしゃべり出す。


(おしまい)

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