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映画『夜明けのすべて』感想

 『夜明けのすべて』を観てきた。良かった。ポスターが恋愛映画っぽかったのだけど、ネット上の評判が良く、また恋愛映画ではないとも聞いたので見に行った。
 主人公の藤沢さんと山添くんは、それぞれPMSとパニック障害のため、他の人と会話をしたり、乗り物で出かけたり、飲み会に参加したりするなど、普通に過ごすのが難しい時がある。そのためキャリアも途絶してしまった。その二人が関わるうちに助け合えることに気がつき、希望のある方へと進んでいく話だった。暗闇の中にいてもいつか夜明けが来る。
 二人の勤める会社の仕事に関わることとして、宇宙と天体の話がストーリーに絡んでくる。最後近くの藤沢さんのナレーションは、大きな宇宙の中で大なり小なり苦しみや悩み、困難を抱えて生きている私たちへのエールではないだろうか。人の思いに関わらず世界は動き、暗闇の中でうずくまり、困難が早く去るように祈ることしかできない時もある。世界はとても大きいので、個人のちっぽけな予想や思惑を越えて、夜明けがやってくる。諦念と隣り合わせのしみじみとした希望があるように感じた。
 二人の心境が天気や光と連動していて、苦しい時は雨が降っているし、明るい時や希望が生まれたシーンはスクリーン一杯にまぶしい光が満ちていて、私たち観客へも光が差すようで、幸せを感じた。
 藤沢さん達の職場の社長と、山添くんの元上司も良かった。二人も大切な人を亡くして大きな傷を抱えた人間である。その事は外からはわからないが、だからこそ困難を抱えた人の理解者となっている。元上司は山添くんのことを気にかけていて、だからあのシーンで泣いたのだ。社長が藤沢さんを送り出す言葉も暖かい。
 「人は見かけではわからないです」という山添くんの言葉は、作品全体のテーマだろうと思った。

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