太陽の飼い主

真ん中に太陽がある

その周りにもやがかかって
光を半分だけ通している

その人は太陽を部屋に飼っていた

太陽が熱すぎるから
魔法をかけて
少しその熱が和らぐようにしていたのだ

この人が太陽を飼い始めたのは
今から300年前
この人が太陽を飼い始めてから
時間が進まなくなり
誰も死ぬことができなくなった

ずっと
水の流れるように
時代が変わっていくのに
時間だけは止まったまま

この星ではだれもが幸せだったが
だれもが一生との距離感をとりかねていた


鳥が迷い込んだのはある森だった
森の真ん中には一番高い木があり
木の周りには磁気が取り巻いていた

磁気のせいで
ちょっとした旅に出ることすらできなくなった
葉が

一枚、一枚、一枚

何もかも止まってしまったように
不安定な表情をしていた

羽が引っ張られるのを感じて
鳥は逃げたが
その鳥の脳裏にはその奇妙な木が
根を張っていた


こんなにどうして

時間を生きるって難しいのだろう

人は何かを考え続け
人は世界を作り続け

だれかが世界のどこかを変えると
そこに住む人はその1秒新しい世界のために
ほんの少しでも変わる必要がある

ただぎゅっと
どこか大切にしているものを絞りながら
それを悲しげに無視しながら
当然のように変えていく

悲しみが滴る

懐かしいという気持ちが
少し何かを緩める時に
悲しみの川の速さが一瞬ゆるんで
こちらを見ている感じがした

どうしても変わってしまう

小さい子が川の絵を描いている
曲線が重ねられていく
クレヨンは小さく欠けていく

世界に線が増えていく

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