「地球においでよ。友達になろう」
空を見上げたらふと口をついて出た


僕は悲しい


今日の空は、たとえば子供が絵の具でひとしきり遊んだ後の水差しの中の水の色、
つまり、
昔は一つの堂々とした色だったのがよどんで重く滞ってしまって、
戸惑い、しかしどうしようもないとくたりと下を向いた、そんな色をしている


水は重たい

どうしてもどうしてもどうしても重たい


笑っている時でも
いや
笑っている時はなおさら
悲しいみたいだ

あとから感情の波がおしよせ
いつの間にかのまれてしまう


溺れる


小さい頃、
どうして涙は目からでてしまうのだろうと思っていた
どうして目は顔についてしまったのだろうと思っていた
どうして気持ちが水になって流れ出てしまうのだろうと思っていた

どれか一つでも違っていたら
涙なんかに困らされることはなかった

涙はわかりやすい
涙がそこにあらわれると
人はすぐに気付き、
騒ぎ、
軽蔑し、
どうしようもないやつと思う

だから隠すしかない

あふれそうならうつむく
止められないなら隠れる

僕は今日それをいま
歩きながら思い出してる

青い星の青い海の青い青い青い世界が

まるごと涙のようにうるおうようだ

景色がそれぞれに
まるで泳いでいるかのように
姿を歪めている
光は小さな力で
こちらに信号を送っている
きいてよ、という小さくかぼそい声が
聞こえる、
聞いていたい

小さな頃、
はじめてあんなにも
光に包まれた夜というものを知ったとき
空を見上げ口をついて出た村の名前
僕はそこに生まれるべきだったのだ

僕はそこで人生を
まっとうするはずだったのだ

ひかりはこびという職業をもらい
歩く後ろには光がさらさらと

僕は流れ星のようだった

どうして
ここにいるのだろう

地球においでよ

僕と場所を代わって

地球においでよ

僕と生まれ代わって

地球においでよ

僕と話そう

地球においでよ

僕はずっとここ

地球においでよ

地球に来たら

僕と友達になる

地球においでよ

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