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#82 建築・建設分野の産業、「石油製品」・「石炭製品」における県内生産額の推計方法を紐解く

#79から、三好(2020)を紐解きながら、経済センサスを用いた従業者数のデータの整備に着手しています。

三好ゆう(2020)『ノン・サーベイ法による市町村産業連関表の作成と課題―京都府内全26市町村の「市内生産額」の推計から―』福知山公立大学研究紀要2020,4巻 1号 ,pp.185 - 208

#80からは、4つの留意点に触れながら、「経済センサス」の産業分類を「産業連関表」の対応する部門に振り分ける作業を実行しています。

今回の投稿は、上記作業における留意点の「その3」と「その4」になります。

作業上の留意点(その3)

留意点の 3 つめとして、民営以外の事業所についての従業者数を推計する際に、小分類データが公表されていない調査年がある。たとえば、「平成 21 年 経済センサス-基礎調査」では都道府県についての小分類データはあるものの、市町村レベルでは中分類データのみとなっている。このため市町村の従業者数については、「平成 26 年 経済センサス-基礎調査」の小分類データを参考に、平成 21年の中分類での数値を小分類に割り振ったうえで、直線補間法により平成 23 年の従業者数を算出するといった作業を行うほかない。

三好ゆう(2020)『ノン・サーベイ法による市町村産業連関表の作成と課題
―京都府内全26市町村の「市内生産額」の推計から―』

本研究では、市町村レベルではなく、都道府県レベルでの産業連関表を作成するので、留意点の3つめについては、特に何か作業をする必要はないと思われます。

作業上の留意点(その4)

最後に、「建築」、「建設補修」、「公共事業」、「その他の土木建設」部門ならびに「その他の石油製品・石炭製品製造業」部門についてである。前者 4 部門については、先行研究間でバラつきが見られる。入谷( 2012 )では、他の産業の対応関係と同様、「経済センサス」での一産業を「産業連関表」の一部門へと振り分けている。たとえば、「経済センサス」における「舗装工事業」は「産業連関表」の「建築」部門に、「とび・土工・コンクリート工事業」は「その他の土木建設」部門に対応させている。しかし、これらの産業は「公共事業」部門にも該当する。建築・建設産業の分野では、こうした一産業・一部門といった明白な対応関係にあるとはいい難く、提示された方法は不適当といわざるをえない。

三好ゆう(2020)『ノン・サーベイ法による市町村産業連関表の作成と課題
―京都府内全26市町村の「市内生産額」の推計から―』

先行研究における推計方法を確認

入谷(2012)を確認すると、確かに建築・建設産業の分野において、一産業・一部門に対応させています。

一方、土居・浅利・中野( 2019 )では、「建築」部門については国土交通省「建築着工統計」を使用する方法が示されているが、市町村データは用途別床面積のみの掲載であるため、都道府県データから得られる床面積あたりの価格を乗じて推計するものとしている。生産額の推計であることを重視し、「生産額」を表す方法を用いることで精度を上げようと試みている点には、学ぶところが多い。しかし地域間における価格差を考慮しない点に、若干の疑問が残る。また、「公共事業」部門については、総務省「決算カード」における「土木費」と「災害復旧費」の合計額にて按分比を求めるとしているが、「土木費」には普通建設事業費のほか、人件費や特別会計への繰出金も多く含まれる。目的別分類に基づいた費目よりも、性質別分類に基づいた費目である「普通建設事業費」と「災害復旧費」の合計額を用いた方が望ましいであろう。

三好ゆう(2020)『ノン・サーベイ法による市町村産業連関表の作成と課題
―京都府内全26市町村の「市内生産額」の推計から―』

土居・浅利・中野( 2019 )を確認すると、下記のような表に推計方法が掲載されていました。

表82−1 建築・建設産業の分野における推計方法
(土居・浅利・中野( 2019 )、p.157の表11−3から一部抜粋)

「建築」

もし、国土交通省「建築着工統計」に、都道府県レベルでの用途別床面積のデータがあれば、「生産額」を表す方法を用いることになり、県内生産額の推計の精度が上がることが期待されます。

なので、一度、国土交通省「建築着工統計」を自分の目で確認したいなと感じました。「建築着工統計」の入手はこれからの課題とします。

「公共事業」

「公共事業」は、三好(2020)に従うことにします。

つまり、総務省|地方財政状況調査関係資料「平成24年度市町村決算カード」の全国と岩手県の「普通建設事業費」と「災害復旧費」の合計で按分する方法を採用します。

「建設補修」

こうした先行研究の方法論に対し、本稿では、センサス上の数値を分割して産業連関表の部門へと割り振る方法を用いることとする。「建築」、「建設補修」、「公共事業」部門については、経済センサスの産業分類上でこれら 3 部門に該当するであろう産業を選って、その産業の従業者数を機械的に 3 等分し、その数値を 3 部門に割り振る。具体的には「とび・土木・コンクリート工事業」、「鉄骨・鉄筋工事業」、「板金・金物工事業」、「その他の職別工事事業」である。

三好ゆう(2020)『ノン・サーベイ法による市町村産業連関表の作成と課題
―京都府内全26市町村の「市内生産額」の推計から―』

「建築」と「公共事業」部門については、経済センサス以外の統計資料から推計することにしました。残る「建設補修」については、上記に引用した三好(2020)の方法を採用することにします。

つまり、「とび・土木・コンクリート工事業」、「鉄骨・鉄筋工事業」、「板金・金物工事業」、「その他の職別工事事業」の従業者数の1/3を、建設補修の従業者数として計上します。

「石油製品」、「石炭製品」

「石油製品」、「石炭製品」部門については、経済センサス上の「その他の石油製品・石炭製品製造業」の従業者数を等分して、それぞれの部門に割り振ることとする。

三好ゆう(2020)『ノン・サーベイ法による市町村産業連関表の作成と課題
―京都府内全26市町村の「市内生産額」の推計から―

本研究でも、三好(2020)の方法に則り、経済センサスの「その他の石油製品・石炭製品製造業」の従業者数を等分して、「石油製品」・「石炭製品」の部門に割り振ることにします。



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