力強い産声
10月23日、3時55分、妻から電話が入り、急いで病院へ駆けつけた。5分間隔で陣痛が来ると言う状況だった。腰が痛いと辛そうにしている妻に自分は何が出来るだろう。妻の要望に従い、腰をさすってあげたが、他に出来ることは?と考えても分からず、初めての状況に困惑していた。
自分の惨めさを感じた。
数時間が経ち、汗を拭いたり、妻の手を握ったり、色々なことが出来るくらいの冷静さをようやく取り戻すことが出来ていた。
陣痛が1分間隔になった頃、外が明るくなっていた。
助産師さんの的確なアドバイスや安心感を与えるような言葉かけには、とてつもない程のパワーを感じた。
妻が命がけで赤ちゃんを産もうとしている。
自分の感情や考え、全てが小さく感じた。
助産師さんが一人、また一人と増え始め、先生が来られてからはあっという間だった。
9時55分、外の世界へ飛び出して間もなく、力強い産声が響き渡った。まるで誰かに教わったかのように呼吸を始める赤ちゃん。
感動で涙が止まらなかった。
命が誕生した瞬間は一生忘れられない思い出となった。
独り立ちをさせていくという責任と覚悟のもと、へその緒を切った。これも貴重な経験となった。
こんなに小さい手足で妻のお腹をノックしていたのか。 エコーをあててもずっと顔を隠し、なかなか見せてくれなかった赤ちゃん。この日のために楽しみにとっておいてくれたんだね。
これからの人生が楽しみだと思えた瞬間に感謝をした。
外は雨が降っていたが、晴れやかな表情で病院を後にし、妻のご実家へ報告に伺った。
ご両親の嬉しそうな表情も忘れられない思い出となった。
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