ごめんなさい。こういうときどんな顔すればいいかわからないの。(街コン 後編)

前回のToshi婚活


「街コンは、女性にとって魔境、一定のコミュニケーション能力を持つ男性においてはハーレム」
Pairsで知り合った美女に導かれたToshi
そんな夢のようなフィールドに、7,500円というJOPTサテレベルの金額で参加できるという。
そんな夢と希望を胸に、Toshiは恵比寿に降りたったのである。

魔境の入り口


恵比寿から徒歩5分。
定刻に降り立つ。

テーブルが6つ。
暗めなので見えにくいが、女性4:男性6といったところか。
入口の案内人に「奥へどうぞ」と通され、男性4人組とチームを組むことになった。
どうやら、この4人組で2時間、各テーブルを行脚することになるらしい。

いわば、新大陸に臨むハンターとしてのチーム

チームメンバーは
・180センチ越えの好青年な30代公務員
・コミュニケーション力高めな20代若者
・大手Sierに勤める、おしゃれな30代
男から見ても高スペック群である。

この時点で、前回聞いていた魔境感はゼロ。
レクリェーショナルなプレーヤー多いと聞き喜び勇んで卓に座ったら、リリアンやSouzirouとか有名鉄強プロしかいなかったというようなもの

ただ嘆いても始まらない。
覇気で気を失わないように、精一杯戦うだけ…
何より鉄強がいるということは、女性陣も鉄強なはず!
Poker bunnyみたいな女性に出会える可能性も高いと胸は躍った。

ただ、この時は気がつかなったのである。
漫画では主人公は必ず救われる…ただ、現実はそんな都合のいいものではないこと。

なんならば、ここは地獄の一丁目。
いや、暗黒大陸の入り口だった。
そう、僕は恐ろしい3大厄災に出会うことになるのである。

【婚活のスフィンクス 終わらない謎かけ/ミユキ・ミキ・サオリ】


街コンは手元に自己紹介カードというものがある。
名前や学歴、仕事内容や趣味。そういったものを記入する紙で、いわば話の導入をするためのツールである。
限られた15分間、このツールを活用して会話をし、気が合えばラインを交換するというものである。

人生初めての街コン。
しっかりとそれなりに埋めた自己紹介カードを相手に渡し、返ってきたカードを見て、我々は絶句した。

名前:ミユキ
趣味:秘密
出身地:秘密
仕事:秘密
趣味:秘密
・・・・以下、ry

心底驚いた。
クロスワードゲームが始まったのか、と心の底から思った。

だが我々は高スペック集団。
こんな試験は乗りこえないといけない。

隣の180センチ越え好青年な32歳公務員が、
早速に攻略を試みた。

公務員:
「秘密って面白いね。土日と休みの時は、何しているの?ヒントでも教えてよー」

女:
「うーん。結構大人数で集まってやると面白いものをやってる。クリアできると達成感凄いんだよね。当ててみて。」

クロスワード以上の難問である。
ヒント大人数で集まったら面白いもの。

考えてほしい…
世の中の大抵すべてが大人数でやったら楽しい。
もはやヒントですらない。

しかし、我々はへこたれない。
諦めたら、そこで試合終了という名の沈黙が流れるだけだからだ。

公務員:
「幅広いなー笑 どこかで集まったりするの?室内??室外??」

女:
「うーん、これ言ったらわかるかもなー。新宿とか有名。室内でやることもあるけど、室外で町全体でやったりもする」

…わかるはずがない。

少なくともポーカーと麻雀ではない。
最早、僕は考えることすら放棄しかかっていた、その瞬間

20代好青年:
「脱出ゲーム??」

スフィンクス(女):
正解!最近はまってるんだよねー」

さすが高スペック集団。
身内に金田一ばりの名探偵がいて、助かった。
そう思った矢先

スフィンクス(女):
「みんなはやらないの?最近はまってるんだよね。ちなみに男性陣の出身地はみんな関東?私は904なんだよね。」

え、まだ続くの?
会話って言葉の意味知ってる??

そう…僕らは彼女たちのテーブルにいる間、ひたすらに謎かけを出されたのである。

何が恐ろしいかというと、
テーブルにいた女性と思われる生物3人すべてが謎かけスタイルだった
ということだ。

古代エジプトでは謎かけに答えられなかった旅人は、食べられて殺されたらしい。
西暦2022年、僕らは恵比寿で時を超えて、スフィンクスたちに遭遇することができたのである。

なお、僕らのやる気はものの見事に食べられ、消化されたのは言うまでもない

【生ハムを貪る底なしの食欲 暴食のグラトニー】


1時間とも思えるナゾナゾコーナーが終わった後、我々は隣の席に移動した。

その机では異様な光景が広がっていたのである。
「生ハムが大量に乗った大皿が5つほど置かれており、すでに2皿はまっさら」
となっていたのである。

いきなり生ハムといっても、読者はピンとこないであろう。
この街コンは「生ハム食べ放題婚活」というサブタイトルが付いているのである。
参加者は要望すれば、「生ハムを数枚おいた紙皿を無制限で得られる」のだ。

お気づきだろうか…

そう通常は「紙皿」である。

ただ目の間に広がるテーブルには、4-5人用と思われる大皿が5つ並んでいるのだ。

生ハムの試食コーナーのようなテーブルに困惑していた時、
目の前のグラトニー3体が一言つぶやいた。

もう僕らに止めることはできない…
そう15分間、ひたすらに生ハムを食べるグラトニー達を観察するという時間を過ごすしか、選択肢はなかったのだ。


【驚異の手のひら返し 査定の天竜人/サユリ】


開始して約1時間。
心持ちは、まさに落人村に沈んだ緋村剣心である。


心なしか、ほかの三人も憔悴しているように見える。


謎を解くコミュニケーションや、目の前の肉を貪る動物をあやす
いわば、想像できない厄災を経験した僕らは得も言われぬ一体感を持っていた

そして、最後のテーブルに希望を捨てずに持っていた
そう古代ギリシアにおけるパンドラの箱も最後に残っていたのは、希望。
希望がない世界線など、物語には認められない。

そんな希望を胸に我々は、最後のテーブルに着座した。

「時間もないので、まず皆さんの卒業大学仰っていただけます?」

第一声、面談が始まった。
何を言ってるか、わからないと思う。

僕も正直わからなかった、一種の思考停止状態だったと思う。
正に鏡花水月の催眠状態だったかもしれない

急かされるままに、各人、淡々と卒業大学を述べていく…

「早慶以上の人以外は、話しかけないでもらえますか?時間も少ないので、もったいないですし。」

場が凍り付く。
4人中3人が早慶未満とされる大学だったからだ。
天竜人は30代のSIerしか人として認めず、言葉通り残り3人は空気のように扱い始めたのだ。

愛情の反対は無関心
マザーテレサは、本当に真実を言っていたと思う。

足切りを食らった男性陣は、その天竜人以外の女性と会話を始める。
そこそこ会話していた時、ある女性の一言が事態を急変させることになる。

女性;
「Toshiさんって、金融なんですね。どんなお仕事されてるんですか??」

Toshi:
「まぁ…企業や国とかの資金を預かって殖やす資産運用の業務しています。

女性:
「へー、ファンドとかですかー?」

ファンド。。。。この言葉は、タブー(禁句)だったようである。

天竜人:
「え!!ファンドなんですか??すごーい!!やっぱり外資系とかだと、すごい忙しいんですよね??私の元カレも外資系証券で…」

お前…早慶未満はゴミって言ってただろうが。
ゴミに話しかけるな。
マリージョアから一歩も出ずに引きこもってろ。

結論


このNoteは、なぜか結構な方が楽しみにしていると聞いており、正直驚いている。
ただ、ここまで読んだ読者は「この程度か…」と思ったかもしれない…
実際に、僕もこのNoteを記述し、如何に地獄の言語化が難しいかを痛感している。

ただ得てして、言語化できる地獄は地獄ではないのかもしれない。

「こんなもんか」と少しでも思った読者の皆様に、送りたい言葉がある。
本当の地獄は、地獄を経験したものしかわからない。

是非、この生ハム食べ放題地獄ツアー、関心がある人は声をかけてほしい。
URLを送付し、案内人として導きたいと思う…

Fin


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