グルメな夫のオヨメサン、実家で厨房に入る
グルメな夫のオヨメサンと姉のととくんは双子である。2023年の年末にふたり仲良く富山県の実家に帰省した。両親はもう亡くなっていて空き家になっているが、時々実家の様子を見に行く。
グルメな夫のオヨメサンは、チンするご飯、梅干し、各種ふりかけ、野菜、豆腐、ポン酢などの調味料、お茶、コーヒー、牛乳、豆乳、林檎、ミカン、米菓、おやついろいろ・・・およそ生き延びるのに十分な食材を車にのせて実家に向かった。
実家ではオソロシイことに、料理担当はオヨメサンの方である。毎日息子たちを食べさせるために料理に追われている姉のととくんは、しばし休息をとるからである。
グルメな夫は心配にならずにはいられない。はたしてまともな食事ができているのか、と。しかし、オヨメサンからは楽しそうな声。
「うちの目と鼻の先にベトナム食材店ができてるのよ~。」
富山県の片田舎にもベトナム人の技能実習生がたくさんいるらしく、ベトナム人の男の子たちが曳山祭りの引き手になるご時世である。ついに食材店ができたのだ。日持ちのする食材や調味料だけではなく、冷凍の肉、新鮮なハーブ、はてはパック詰めにした生のドリアン(熱帯の果物の王様と呼ばれるが、独特な臭みがある果物)のむき実まで売っている。
オヨメサンは早速インスタントのフォー(米麺)やミー(麺)、香菜(パクチー)を買い込み、エスニック三昧を決め込んだ。料理は『切るだけ、混ぜるだけ』が信条のオヨメサンに新しいジャンルが付け加わった。お湯をかけて蓋をして3分待つだけで美味しいエスニックヌードルが出来上がるのだから、笑いが止まらない。
『よかった。野菜ものせたりしているみたいだし。一応、マトモだ。』
グルメな夫は人知れず胸をなでおろした。
*追記:2024年1月1日、オヨメサンたちが実家を出発した後、能登半島地震がおきた。実家の辺りは震度5強。12月31日も営業していたベトナム食材店が無事であってほしい。
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