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グルメな夫、ブラックタイガーを救う

IMG_1704 copy#2 グルメな夫ブラックタイガーを救う

グルメな夫は、仕事帰りによくスーパーに立ち寄る。例によってバスの待ち時間を寒いバス停ではなく暖かいスーパーの中で過ごすことにしたグルメの夫が向かったのは鮮魚売り場。そこにはインドネシア産の大きなブラックタイガーのパックが1つ。値下げ札が3回も貼られて200円になっていた。元の値段が800円だから、75%引きの投げ売りだ。それでも誰も買おうとしない。グルメな夫は愛国心に燃えて、「このブラックタイガーを救うのは僕のミッションだ!」と考えたらしい。

「日本に来て初めてブラックタイガーを買ったよ!」
グルメな夫は嬉しそうに言った。我家では小エビをよく料理に使うので、小エビはいつも冷凍庫に常備されている。私はその小エビをさらに背割りに切って倍の数に増やす。私が「数がたくさんあるほうがいい」と考えているのに対して、「大きいのがいい」と考えているグルメな夫は小エビをそのまま使う。きっと、かねてから、もっと大きなエビ、ブラックタイガーを買うチャンスをうかがっていたに違いない。
世間には出来合いのエビチリもあるが、いかんせん、グルメな夫にとっては辛すぎる。そこで、調味料を混ぜて自分でエビチリソースを作った。グルメな夫のチリソースは謎においしく、良い香りがする。
「やっと満足がいくエビチリがつくれたよ。」
グルメの本領をいかんなく発揮した夫はつぶやいた。

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日本に輸入されるブラックタイガーの多くがインドネシア産である。ひと昔前はエビの養殖がインドネシアの自然破壊につながっていることが問題になっていた。エビの養殖池は通常マングローブを伐採してつくられるが、水質が悪化したり病気が出たりして、ずっと使い続けることができず、しばらくすると放棄して新たに養殖池をつくる必要があったからだ。しかし、今ではその問題がほぼ克服されて、生産量も増えた。大きく立派なエビは輸出され、インドネシアの庶民の食卓に並ぶことはない。グルメな夫はやっと故郷の大エビを食べることができたわけである。

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