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法務部が取るべきスタンスの話

画像はSlackアプリ「ほうむくん」です。

法務部のスタンスは会社によって様々だと思いますが、ZOZO法務部(事業法務領域)では以下の姿勢で法務相談に臨むべき、と思って仕事を進めています。

法務部のスタンス

まずは、法務部のコアタスクとして:

①取引を法的に正しく分析し、やってはいけない最低ラインを明確に示す

を行います。ただ、誠実に分析しても法的リスクが残ってしまう場合、これに加えて:

②事業目線で本当にやりたいことは何か・他の手法でも実現できないか
③法務だけで実現できない手法について社内外のどの部署・誰を引き込んだら解決しそうか

も法務部が一緒に考えるようにしています。

②事業目線で考える、とは

事業目線で考えるのは、目の前の相談者が立てた質問は真の課題ではない、ということがよくあるからです。課題を適切に捉え直せば別のスキームに変更可能で法的論点がなくなったり、そうでなくても法務リスクを許容範囲内に低減できることは良くあります。

目の前の相談者(事業部担当者)と上位レイヤー(又は経営層)の考えが異なることも良くあります。相談者個人に寄り添うこともとても大切ですが、法務部が一番に考えるべきことは、会社が何をしたいか・何をすべきかです。目の前の案件はそれに合致するか(を経営層がどう考えているか)を冷静に観察した上で判断する必要があります。

③どの部署・誰を引き込むか、とは

どの部署・誰を引き込むのは、仕事の押し付けではなく、課題のより良い解決が目的です。社内の悩みを法務だけで解決できることは少ないので、法務リスクが残った状態で次の解決策に向け、相談者に伴走する人が必要になります。

法務目線では、単に「リスクを回避する」(=「違法の可能性があるのでダメです」)という動きはNGです。逆に「リスクをただ保有する」(=事業部に押し切られる)という動きも、もしも自分がやってしまったら、法務として会社に貢献できていないと感じそうです。スキームの工夫で法務リスクを低減したり、それが難しい場合は自社でリスクテイクする正しいジャッジを事業責任者が行えるよう正確で分かりやすい情報を入れる必要があります。

法務リスク、とは

上記でいう法務リスクについてもう少し説明します。

巷間耳にする、法務が押し切られた(「事業部がどうしてもやりたい、時間がないというから仕方なくそのまま」。無理くりポジティブに言えば「リスクを取った」)話を聞くと、もう少しリスクコントロールできたのではと思うことがあります。

法務リスクは、回避、低減、移転、保有(、受容)のどれかで整理する必要があります。リスクの高低を見極めることができ、低減策を考えられるのであれば(またそれを実施する社内人脈やノウハウを培っていれば)、法務リスクコントロールは柔軟に行えるはずです。

「今回は時間がないから変えられない」は悲観的状況ではなく、むしろ将来に向けたリスクコントロールの良いチャンスと考えています。法務リスクは地震と同じく、中期的にはいつか事故が発生するもの(が今検討している件で発生するかは不明)です。今回は時間がないと事業部がいうのであれば、次回の進め方の約束をさせ、次回とはいつか(エンジニアによる改修や設備の準備が必要なら何週間かかるか、それまで待てるか)を確認し、それを事業部の上長(や経営層)と共有する(=第三者を巻き込む)良い機会だと思います。

事業部は目の前のプロジェクトをこなすことで一杯になりがちなので(これはこれで会社のために大切だと思っています)、法務が中期視点を提供することは有益です。なお、真っ当な経営層であればリスクには敏感なので、丁度良い具合に落ち着けようと動いてくれるはずです(その点については、私はビジネスサイドへの素朴な信頼感を持っています)。

まとめ

以上、①~③のスタンスについて話をしました。

①取引を法的に正しく分析し、やってはいけない最低ラインを明確に示す
②事業目線で本当にやりたいことは何か・他の手法でも実現できないか、
③法務だけで実現できない手法について社内外のどの部署・誰を引き込んだら解決しそうか

実際には、誰がいうか(=法務の人格)も重要なのですが、そこは改めてまとめたいなと思います。

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