見出し画像

ジリ貧日本をどう止める?

2023年に日本のGDPはドイツに抜かれ、2025年にはインドにも抜かれると予想されている。なぜ日本はジリ貧国家に落ちぶれたのか?

国民の稼ぎを測るものがGDPである。GDPは国内で生み出された付加価値の総額であり、製品やサービスの販売額から原材料費や流通経費などの費用を差し引いたものとなる。ただし、費用には減価償却費は含まれていないので、GDPは減価償却費を含んだ付加価値となる。

GDPには、生産面(付加価値)、支出面(需要)、分配面(所得)、という三つの側面があり、「GDP=生産=支出=分配」の関係となる。(三面等価の原則)

GDPを支出面で計算すると、「GDP=消費(C)+投資(I)+(政府支出G-税金T)+(輸出Ex-輸入Im)」となる。
ここ2~3年の名目GDPは550~570兆円である。GDPの支出内訳の概要は、消費は50%強、投資は15~20%程度、ネットの政府支出は25~30%弱、(輸出-輸入)はほほ0 %となっている。

GDPを増加させるためには、消費、投資、政府支出、貿易黒字を、それぞれ増加させることが必要である。

この30年間、日本はデフレに苦しんでおり、消費が沈滞しているため民間企業の投資を増加させることはできなかった。
よって、GDPを成長させるためには、政府支出そのものを増やすか、または、減税の結果としてネットの政府支出を増加させるしかなかったはずである。

しかしながら、財務省の強い抵抗にあって、積極的な財政出動による政府支出の増加も、また、減税によるネットの政府支出の増加もできなかった。
それどころか、令和元年10月より消費税率を8%から10%へ増加させたばかりか、さらに、令和5年10月よりインボイス制度の導入によって零細企業にも消費税の課税が行われることになった。
コロナによる支援金の助成という一時的な財政出動はあったものの、消費税の増税によって政府支出の効果は相殺されてしまった。

この2~3年の政府の歳入・歳出は110~115兆円規模である。
歳入に占める新規国債の発行による収入額は35~37兆円で、歳入の31~32%となる。
また、歳出では利払いと償還を含めた国債費が24~28兆円で、歳出の23~25%を占める。
毎年10兆円程度の国債残高が増加している。財務省としては国際残高の増加を抑えたいと考えている。そのため、税収を上げ、かつ、政府支出を抑制しようとすることになる。

結果的には、財務省による消費税の増税と政府支出の抑制が、日本のGDPの成長を阻んできた。

政府の歳出で、国債費として国債の償還費が計上されるのは、60年償還ルールという日本独自のルールに縛られているからである。
具体的には、60年間で国債を現金償還するというルールであり、このルールは世界中で日本だけが採用しているものである。
他の国では、国債の償還期限が来ると、新たに国債を発行して借り換えている。国債は一度発行されると民間の資産となり、償還により完全に返済されることはない。
政府の金融財政政策によって、償還が実行されることになる。

財務省による国家の経営は、現金の出入りだけを見る、単式簿記の大福帳に基づくものである。
歳入歳出だけの大福帳では、貸借対照表にある、資産・負債・資本というストックの概念、また、損益計算書にある、収益、費用、利益というフローの概念を、認識できない。
国家を永続する共同体と認識するのであれば、大福帳という資金繰表(キャッシュフロー計算書)ではなく、年度ごとの損益計算書と貸借対照表によって国家経営を行わなければならない。
資金繰表は倒産寸前の会社が重要視するものである。

日本の国債は政府の国民からの借金ではなく、政府による信用創造である。国債は通貨に形が変えられることによって、通貨を創造する働きをしている。

単純化したモデルで見てみよう。政府か国債を発行すると、政府では、本来の複式簿記では、「(借方)当座預金 ××(貸方)国債 ××」と仕訳する。
一方、国債を買い入れた銀行では、「(借方)国債 ××(貸方)当座預金 ××」と仕訳する。政府は受け取った当座預金で政府支出を行う。

1年間の経済活動の結果、政府は民間の利益から、一定の割合を税金として徴収する。
「(借方)当座預金 ××(貸方)税金 ××」

そして、徴収した税金で国債を償還する。
「(借方)国債 ××(貸方)当座預金 ××」

徴収しきれなかった国債は、通貨に変換されて民間に在留し、経済を動かしているのである。

国債は国庫債権であり、国債の本質とは、財務省の説くような国の借金ではなく、政府による信用創造、すなわち、通貨の創出手段である。
「発行した国債を必ず60年で償還しなければならない」というイデオロギーの囚われは、経済を破滅させることになる。
現実には、毎年24~28兆円の借り換えが行われ、さらに、10兆円の国債残高の増加となっている。
日本は、財政出動と減税によって必要とされる政府支出を確保し、経済を成長させることによって税収を増すという、正常な経済サイクルに一刻も早く戻すべきである。

日本の停滞を打破し、日本の経済成長を取り戻すためには、家計簿的には一見正しく見える「プライマリー・バランスの確保」というイデオロギーを、一刻も早く捨てるべきである。
国民と政治家が、正しく国債の働きを理解し、日本から誤ったイデオロギーを放逐することが国家再生の道である。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1906K0Z10C24A4000000/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?