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小池百合子東京都知事1期目(2016年~2020年)全インタビュー

 小池百合子氏が東京都知事に就任して4年が過ぎ、1期目が終わろうとしています。6月18日には任期満了に伴う都知事選が告示され、7月5日には投開票が行われます。都知事選では小池都政の4年間の評価が問われます。これまで都政新報では7回、小池知事に単独インタビューを行ってきました。その全てを一部無料で公開いたします。都知事選での小池都政の検証材料としてご活用ください。

小池新知事インタビュー/東京の付加価値高める/「都政改革は意識改革から」/市場移転「関係者にヒアリング」/議会対応「真摯に意見聞く」(2016年8月)

【都政新報2016年8月12日号】

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 ─「国を変える」ことを標榜して国政に進んだが、都知事を目指した理由は。

 以前から国政で日本を変えたいという思いで取り組んできた。東京都選出議員になって11年が経ち、都政に非常に関心を持ってきた。突然、舛添前知事が降りることになり、首都である東京都政に挑戦することはやりがいがあると思った。東京はもっと輝けるはずだけど、十分輝いていないという思いがある。私がこれまで取り組んできた様々な施策を加味することで、東京がもっと価値を高められ、東京に住んで良かったと思える人が増えると考えた。

 ─東京に足りないものとは具体的に何か。

 例えば待機児童問題は現象の一つであり、根本には女性の働き方、ひいては男性の働き方の問題がある。そこに手を付け、女性がもっと生き生きしていくことで男性も更に輝くという相乗効果を目指したい。日本のホワイトカラーの生産性はイタリア以下だ。長時間働くことが善という発想があるが、長時間労働は人間が干からびるだけ。もっとスキルアップやレジャーなど自分自身の部分を伸ばす必要がある。長時間労働は開発途上国のもので、その段階はもう過ぎている。意識改革が必要で、クールビスがまさしくそれだ。ほとんど予算かけていない。発想だ。これからいろんな条例を出したり、都政改革本部を作るが、私の発想の基本的なところは意識改革から入る。東京で行えば全国にも波及する。

 ─行革や予算の在り方を検討する都政改革本部を立ち上げるが、予算で言えば監査など既存の枠組みがある。狙いは。

 監査は(税金などが)正しく使われるかということをチェックするのが役割だが、都政改革本部は予算がどういうプロセスで決まるか、構造的な部分を改革するもので役割が違う。これまで大阪市や名古屋市では様々な改革の取り組みがあった。東京では石原都政で聞いたことがあるが、その後は改革という言葉が使われていなかったと思う。291万人を超える方々から票を頂戴したことは改革という言葉に反応された結果と思う。どういう形で進めるか、今ちょうど研究している。

 ─選挙期間中に市場移転を立ち止まって考えると発言しました。

 移転に至るまで苦労した方々、移転に備えている方々がいることは重々承知している。一方で納得されていない人、11月はやめてほしいという声、安全性への疑問、使い勝手が悪いとの意見を聞いている。推進している方と、そうでない方々双方にヒアリングし、その上で判断したい。

 ─今はそういう時期ではないとの声も多い。

 11月7日に豊洲が開場し、既に100日前のカウントダウン(イベント)が行われたことも全部承知した上での判断だ。新政権だと思ってほしい。

 ─都の長期ビジョンを基本的に継承するとした上で、実行プランを策定する狙いは。

 東京五輪の2020年で区切っているわけだが、長期ビジョンの中で芽出しした中で、生活に関連した部分や五輪関連の施策など喫緊の課題を(実行プランの)4年間で改革を成し遂げ、改革のベースをつくりながら進めていく。東京の課題は誰がリーダーであれ明確だ。その中で緊急性や予算の多寡をもう一度整理し、プライオリティーを決めるのがまさしくリーダーの役目。そうした進め方をしていく。

 ─予算の依命通達でも全事務事業に終期を設定するなど、時間軸を意識しています。

 これはむしろ事務方から出てきた案。役所は普通、終期を設けたくないと思う。いつまでもやり続けたいと。こういう案が出てくるのは良い傾向だと思っている。普通の企業なら役目を終えた組織を重視しないのは当然だ。民間でやっている当たり前のことを都庁で出来ればと思っているし、逆に言えば、民間で出来ていないことを都庁で先行して行いたい。

 ─これまで環境相や防衛相など行政のトップを務めてきたが、都庁の印象は。

 組織の規模が大なり小なり、マネジメントは同じ。一人ひとりのやる気を起こして、方向性を一致させて目標に向かうということ。そして現場に任せること、リーダーシップを握ってしっかりと率いていく。基本はマネジメント、経営ということを考えてやっていきたい。

 ─選挙では都議会批判をしてきたが、知事として、今後どのように取り組むか。

 選挙後、まだ間もないということもあって、(関係改善は)少々時間がかかるかもしれない。だが、お互い、都民の1票で選ばれており、(議会側と)都民の利益は全く違うところにあるとは思わない。一つずつ真摯に都議会の意見を伺いながら、都民ファーストに資するよう取り組みたい。

 ─10年後、どういう東京になってほしいか、知事のビジョンを。

 女性も男性も子供も大人もおじいちゃん、おばあちゃんも、障害を持った人たちも生き生きと希望を抱いて、生活する首都・東京にしていきたい。世界の中の東京だと思っている。東京に対しての付加価値、外から見た東京の付加価値、住んでいる人たちの東京の付加価値を実感してもらえるように一つずつ取り組んでいきたい。私はホームランを打つよりは(メジャー通算)3千本(安打の)イチローにならって、コツコツとやっていきたい。小さなヒットを積み重ねて、東京がより元気になったというふうにしたいと思っている。

 ─未来の東京をともに作り上げていく職員にメッセージを。

 どんどん挑戦してほしい。責任は私が取る、ということです。

小池知事インタビュー/「コスト感覚研ぎ澄まして」/来年度予算「格差と段差の解消」/都議選「市場移転問う機会」(2017年1月)

【都政新報2017年1月10日号】

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 ─国政の場から地方自治体のトップに就任して半年が経ちます。改めて感想を。

 とてもやりがいがあります。いくつも大臣を経験しましたが、設置法によって壁がきちっと決められていて、乗り越えるのは本当に大変なんです。だから私、総裁選に出まして、自分で全体をやろうと思っていたので。その意味で都知事は全体をカバーし、全体に責任を持つということでとてもやりがいがある。

 ─都庁職員の働きをどう評価しますか。

 非常にしっかりと私の方針をのみ込んで、的確に対応してくれています。これまでと勝手が違うということもあろうかと思いますが、そこは皆さん、真剣にサボタージュもせず、されているかもしれないけど、でも非常によくやってくれて、とても信頼を置いています。これまで2回の定例議会を経て、その間に都政を確実に前に進めるという共通の目的を知事と職員が共有できたからに他ならないと思っています。

 ─一方で課題や職員への注文は。

 国政との最大の違いは財源の話。東京の場合は財源もさることながら、それに対してどのような予算付けをしていくか、絶対的に違うところです。それだけに、逆に言えばコスト感覚、それから投資感覚をより研ぎ澄ませる必要になってくると思います。そのベースは、都民から見てどうなのかということ。そのためにオリンピックの予算を削っていく。一方で投資をすべきところはしっかり投資をする。

 ─具体的に投資すべき部分とは。

 エネルギー小国の首都ということを考えれば、最大のエネルギーは人材です。例えば教育の機会や格差、女性が働く場合の格差、若者の機会の格差、こういった格差とパラリンピック・オリンピックを控えて、まちの段差を解消し、バリアフリーにしていきたい。予算編成の真っ最中ですが、「格差と段差」をなくしていくことを大きなテーマにしていこうと思います。

 ─これまでの取り組みでは市場の移転延期や議会との対立などに注目が集まり、待機児童対策の補正予算はありましたが、地方自治体としての政策の打ち出しが弱い印象もあります。

 それはメディアの問題だと思います。むしろ日本は怒涛のようなメディアの流れがかえって、日本全体の内向き志向を加速させていると思っていますね。

 ─逆にメディアを利用してきたのは小池知事のような気がしますが。

 利用はしていません。むしろコンテンツを提供している。テレビなどは随分、制作費を削減していますよね。

 ─都庁改革を進めていますが、進展具合をどう見ていますか。

 スピーディーに取り組む部分と時間をかけるところと両方あります。スピーディーに取り組むところは例えば、かつて知事資料はA3(判)だった。それを一晩でA4(判)に変えました。今はノンペーパーです。知事査定の時は1枚も紙はありませんでした。これこそ働き方改革のベースになるテレワークを定着させるということの第一歩が進められているということですね。こういったことを報じないのはメディアの責任だと思わない?

 ─では、時間をかけて改革する部分は。

 中長期は女性の活躍ですね。すでに女性の職員の女性の比率が4割に近くなっている。(女性職員)全体の2割に近い数字が管理職というのは、組織として非常に高いと思います。これは数年後に更に高くなっていくので、絵に描いただけの女性活躍ではなく、都庁における女性の活躍というのは日本のモデルケースになるという自信はありますね。

 ─都庁改革では、議会の議案に対する事前調整の見直しも進めていますが、職員には戸惑いも見られます。

 それは、これまでがおかしかっただけの話。当たり前にするだけの話です。

 ─知事選で「市場移転を立ち止まって考える」と主張しましたが、公約には掲げていませんでした。民意を問うお考えは。

 どう判断するかはそちらの自由ですが、私の主張は10年前から変わっていません。

 ─ベンゼン等が基準値を超える地下水のモニタリング調査結果が出ました。改めて移転についての考えは。

 (最終調査結果の)数字が出てしっかりと厳しく受け止めていきたいと思っています。判断については専門の方々に議論していただいて、再調査もするということですけども、再調査は数カ月がかかるというんですね。私はやはり、業界の方々、業者の方々からすればこれでさらに判断が延びるということで、今後に対しての不安感が増していると感じています。調査結果をしっかりかみ締めたい。

 ─市場移転は長い時間をかけて関係者と調整し決定した事項です。「新政権だから見直し」では、行政の継続性からも都民に不安、不信感を抱かせませんか。

 サンクコスト(埋没費用)に当たるかどうかを客観的に判断したいと思います。

 ─あくまでコストの問題ということですか。

 もちろんですね。

 ─市場移転は今夏の都議選の争点になるとの発言もありましたが、どう考えていますか。

 これまで関わってきた人にしっかりとこれまでの経過を聞いてみたいということもあります。今後どうするかについて、(都議選で)都民に伺うのは一番良い機会ではないでしょうか。

 ─ありがとうございました。

小池知事 就任1年インタビュー/1年目は「創造的破壊の年」/「今後は職員とも相談」/都民の満足度「70%に」/市場移転は「政策判断」(2017年8月)

【都政新報2017年8月25日号】

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 ─この1年間で手応えを感じた都政改革を三つ挙げてください。

 改革本部を設けて自律改革を目標にして、各局から自律改革案を職員から出してもらったことが1点。例えば改革本部の流れの中から目安箱を作って、職員から本音の話が聞こえてきた。働き方とかね。中には『誰それがセクハラ』とか(笑)、とてもリアルな叫びが聞こえてきている。システマティックに組織的に改善していく流れを作ってきた。そして都政への関心が高まったことは一番手応えを感じたことです。

 ─もう一つ挙げるとしたら。

 かつて大臣をやっていた時も1年目はいろんなことを壊した。だいぶ壊した。創造的破壊(の1年)だと思います。

 ─フットワークの軽い知事から見て、職員の動き、働きぶりはどう映っていますか。

 (都は)財源に恵まれていて危機感が薄いと感じる。さらに改善していく必要があると思っている。職員からすれば、ありがたくない知事だと思います。だけど私の使命は職員に喜ばれる知事よりも都民に喜ばれる知事。だから都民ファーストと言っているんで。(都職員)アンケートの結果が低ければ低いほど良い仕事しているなと自分で思う(笑)。

 ─ただ、職員は知事の部下で、トップと一体でないと(機能しない)。

 これからよ。

 ─本紙が行った都職員アンケートでは、(小池都政1年の平均点が)46・6点と低かった。

 いや、アンケートは設問によって誘導されますから。

 ─石原都政や舛添都政と比べても低い。

 御しやすかったんじゃないですか、みんな。

 ─職員アンケートでは(知事が)職員を信用していないという意見も多いです。

 それは意識改革を進める上で仕方がない。

 ─職員との信頼関係あっての都政では。

 これからですね。

 ─具体的にどう取り組んでいきますか。

 基本的には職員に相談すると、あちらの(議会)棟に筒抜けになる。重要なことはあえて相談しませんでした。

 ─今後は。

 相談しますね。(都議会の)環境が変わりました。

 ─信頼関係では、特別顧問に関する意見を言う職員が多かった。

 そりゃ、耳の痛いことばかり言うんだから、歓迎されないよね。

 ─責任を持たない立場の顧問が指示するのはどうなのかという意見も多いです。

 私が顧問にお願いしているわけですから。

 ─知事と顧問の間でも意見が合っていないのではという場面も(見受けられる)。

 顧問はいろんなアドバイス、意見を出すから顧問なのであって、同じ意見の顧問に頼んでいたら意味がない。

 ─顧問からのアドバイスを(知事が)受け止めて指示を出す流れがいいと思いますが。

 (指示を出すのは知事と顧問の)両方ですね。(職員は)嫌なことは聞きたくないのよ。

 ─2年目に当たり、職員に求めることは。

 よりコスト感覚を持って、都政をサステナブル(持続可能)な首都にしていくため、原点に戻ってシビルサーバントとして頑張ってもらいたい。力のある人はたくさんいる。そういった職員が伸び伸びとクリエイティブにこれまでの延長線ではなく、クリエイティブに、2度言いますけど、そういう仕事をしてほしいと思っています。

 ─そのための仕掛けは何かありますか。

 ビジョンを明確にするということ。女性の活用をしきりと言っているが、女性の管理職や若い世代にもポテンシャルを持った女性陣が控えている。他のどの組織よりも女性比率が高いのが東京都庁。日本のモデルになれるようにしたい。女性を引き上げれば、男性も頑張るんですね。世界を見れば当たり前なんですが、日本はまだいびつで、『女性が、女性が』といっているうちは駄目。そういうところも出した東京都政にしていきたい。

 ─2年目以降の最大の課題は何か。

 五輪や市場移転を着実に進めるのは当たり前の話。これからの人口構成を考えると、(少子高齢化となり)今から仕込んでおくのが責任だと思っている。

 ─そうした地に足のついた政治課題よりもパフォーマンスが目立つという声も多かった。

 でも目立たなければ都政のことは知られないでしょ。

 ─(パフォーマンスに)政策がミックスしたら最強だと思います。

 合わさっていませんか?

 ─職員からは、そんな(パフォーマンス先行の)意見が多かった。

 職員の声だけを聞いていると、本当に都民が求めている都政になるかは別だと思います。

 ─知事と職員が一体となって信頼関係があってこそ都政が前に進む。

 それは当然じゃないですか。

 ─その部分についてアンケートでは厳しい意見が多かった。

 聞き方よ(笑)。

 ─顧問の活用の仕方を変える考えは。

 着実に一歩、一歩進めることですね。スピード感を更に高めていく。これまでは後ろ向きな話が多かった。これからはどんどん前向きにいきます。

 ─具体的に挙げるとすれば。

 数字的な目標を出している。三つのシティもそうだが、都民の幸福度、満足度は50%なんです。東京のように人、モノ、金、情報がそろっていて蛇口からそのまま水が飲めて、複雑な地下鉄が数秒の狂いもなく走っていて、夜道を女性が一人で歩いても安全。子供が自分で学校に行く。当たり前のことだと思っていることは世界では珍しいことなのに満足度は50%。本当に心から満足してもらえる東京にしていきたい。その数値目標を50%から70%にしていく。アイテムはたくさんありますよ。待機児童とか、高齢化対策とか。でも総合的にどのくらい幸福かというのは皆さんに都政に共感を抱いてもらって、納得してもらって、本当にそうだよねということを一つひとつ具体的に進めていきたい。

 ─知事が明るい未来のビジョンを発信するのも重要では。

 それをまたパフォーマンスと言うんでしょ。

 ─パフォーマンス自体は否定しませんけど。

 否定しているじゃないですか(笑)。

 ─議会構成も変わりました。政策を進めやすくなるのでは。

 都民が変化を求めたというのは知事選、都議選に表れているように思う。過去の延長線ではなく、新しいことを求めている証左。都民ファーストの会の方では、400近い公約を出しているけど、議会側の発信、都民の声をしっかりと受け止めながら、都の職員17万人と仕事ができる環境づくりというのが2年目につながってくる。

 ─情報公開は一丁目一番地と言っていましたが、豊洲移転などの基本方針は情報開示請求しても出てこないという話もあった。

 では、石原知事の尖閣(諸島購入)については、いつどこで誰が(意思決定)したのか、情報公開されていますか?

 ─されていない。それを改善するのが小池知事かなと思っていた。

 それは政策判断だからですよ。

 ─政策判断に関しては開示する起案文書がなくても大丈夫なのか。

 知事ですから。尖閣にはありましたか? 総理が消費増税を先延ばしにすることについての起案文書はありますか?

 ─そこを改革するのが小池知事かなと。

 それはものによりますよ。受け止め方のプアーさじゃないですか。

 ─市場はそういった事案ではなかったと。

 これまで、それぞれの意見を出して、最終的な基本方針を固めたということです。

 ─市場移転はどう進めていきますか。

 しっかりと安全性の確保のために専門家会議が進めてきた案を議会にかけて、安全性の確保に努める。市場の関係者の方々の意見をまとめていただき、いったん移転を決めていただいたときの気概を持って、中央市場としての豊洲開設を一歩ずつ進めていきたい。

 ─築地再開発は。

 これは民間の力を最大限活用して、あれほどいい地の利のところはないわけですから、東京の資産として生かしていくことに尽きる。いっぱい案はあります。

 ─ありがとうございました。

小池知事インタビュー/東京大会をスプリングボードに/来年度予算「高齢社会が大きなテーマ」(2018年1月)

【都政新報2018年1月9日号】

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 ─就任して1年5カ月が経った。成果とこれからの課題は。

 この間、(これまでの)都政の整理整頓と、将来の種まきを同時並行でやってきた。成果は、例えば都政改革本部。これまでの都政をもう一度、自分たちで見直し、どこが改革できるのかを今、進めている。将来的にも都民にお預かりしているお金だったり、都民の行政をよりスムーズにするためには、まだ感じていないかもしれないが、効果がこれから出てくると思っている。
 就任して最初に取り組んだのが待機児童対策。補正予算だったり、市区町村長の皆さんから現場の声を聞いたりして定員を2万人増やした。実際は保育士の数や場所の確保が追い付かないということで、1万6千人の確保ということであるが、いい土台ができた。「東京都イコール待機児童」ということなので、引き続き待機児童対策は進めていく。(保育サービス定員増の)1万6千人は、活躍できるようになる女性の数でもある。前から「ダイバーシティ」と申し上げているが、人口の半分が女性であることを考えれば、その中で埋もれていた未利用エネルギーが、都の待機児童対策によって動き出したということは喜ばしい。

 ─来年度予算で「小池カラー」を出したい独自路線は。

 東京のテーマも日本のテーマも実は明確に前から決まっている。それをどれくらいのエネルギー、お金、人をかけてやるかという比重の置き方の問題だ。人という観点で言うと、明らかに東京が直面することになる高齢社会が大きなテーマになってくる。

 ─高齢社会対策の新機軸はあるか。

 例えば60歳、65歳でリタイアした方々は皆若い。パワフルだ。この力を生かさないのはもったいない。だから、シニアの皆さんが地域でこれまでの経験でベンチャーを目指すとか、もう一度学び直しをするとか、元気なシニアをどう社会の中で生かしていくかという部分を強調したい。これは人間の尊厳の話。かつてクールビズを始めた時、「ネクタイは取ってもいいが、名刺は取らないでね」と言われた。特に日本男子たるものは、名刺はとても重要な存在証明。(リタイアした)皆さんがずっと名刺を持って、自分が社会の中で必要な、生かされている存在だということを確認できる環境作りをお手伝いしたい。だから予算というよりは考え方の話。

 ─知事の発信力が生きる部分ではないか。

 例えば、企業で経理を担当していた方などが町会の会計で頑張っていただくとか、そういう話は既に東京の隅々で行われている。それを更に「プロボノ」(仕事などの専門性を生かしたボランティア活動)というシステムで、より実質的に生かせるような方法を町会の皆さんに知っていただくことも既にやっているが、こういったところを強調していきたい。

 ─市場移転では、築地市場跡地整備など五輪への影響を懸念する声もあるが、移転(延期)の判断は正しかったか。

 私はそう思っているし、築地の跡地利用などについてもこれで目鼻がついて、関係者も安堵していただいていると思う。

 ─一方で豊洲地域の風評被害や千客万来施設の話も残っている。具体的なアクションが必要と思うが。

 それぞれ丁寧に都として対応させていただいて、風評被害については既に行っているが、豊洲市場の見学会だとか、市場の存在そのものをいろいろな形で発信していく。これに努めていきたい。

 ─知事自身の具体的なアクションは。

 市場は基本的にとても開放的なところなので、皆さんが市場に遊びに来るというような場所になればいい。いろんなイベントもこれから展開していくことになる。

 ─残りの任期が2年半となった。将来像を含め、どのような都政を目指すか。

 やはり20年の東京大会は目指すべき大きなテーマ。これを成功させるのが私の役割。そのためにもハードもそうだが、ソフト面での機運醸成。それからロンドン大会が成功だったと言われる二つの理由は、パラリンピックに重きを置いたことと、大会が終わった後、観光客がむしろ増えたということだ。ロンドン大会から学ぶこととして、そういう右肩上がり。よく大会が終わった後の景気のことを心配する方も多い。右肩下がりではなく、64年の東京大会が一つのスプリングボード(契機)になったように、「2回目のパラリンピックを無事、成功させ、それが超高齢社会の入り口にある東京の新たなスプリングボードになった」となるよう準備を進めたい。

 ─課題が山積する中で職員に求めることは。

 都政改革本部で、各局で自律改革を行っている。それによって、これまで当たり前だった都政の手続きだとか、運営を改めて、そこでより活性化して進めていこうということを各局で進めている。都庁で働く皆さんが自信やプライドを持って、そして都民のために尽くす奉仕者としての認識を持って、共に歩んでいただきたい。

 ─反対に職員の動きで足りない点は。

 いえいえ。いろんな場面で職員の働く姿、職員が緻密に準備した様々なイベントだったり、政策、行政だったり、目に触れるというか実際に私自身が(働きぶりを)実感することがよくある。これからも17万職員が前を向いて、一歩一歩、歩んでいただけるような環境作りをしていきたい。

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